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努力せずに女子力を上げる家電、収入を1.5倍にした冷蔵庫など――三菱電機のスゴい技術を見てきた滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(5/5 ページ)

» 2016年02月25日 08時00分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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コンパクトな人工知能が家電を変える?

 IoT全盛である。世界中がインターネットでつながれ、その波は“IoT家電”や“スマート家電”といった呼び名で生活家電にも押し寄せている。それらの使い勝手の肝となるのが、家電に搭載された人工知能。高度な人工知能になるとインターネットの向こう側にあるサーバで考え、データが分析処理され、ユーザーはより快適な使い勝手だけを享受できる。

 とはいえ、家電の種類にもよるのだが、すべてがそこまで高度な処理は必要ない。また、いくら処理が早くなったとはいえ、1秒単位で判断しなければならないような状況では、インターネット経由で分析処理する人工知能は、使い物にならない場合がある。もちろん、発展途上国などで電気や通信インフラが不安定な場所だと、そもそも使えない。

 いつでもどこでも高度な処理で状況判断してくれるために開発中なのが、コンパクトな人工知能だ。推論処理の演算量を減らして、省メモリー化することで、車載機器、産業用ロボットなどへ組み込み搭載するのが目的とする。従来であれば大規模サーバーが必要であった高度な推論が、高いセキュリティ環境化で高速処理を行う人工知能システムで行えるのが特徴だ。

「ディープラーニングアルゴリズム」の考え方を利用。すべてのデータを分析するのではなく、似たような特徴を持つ分析データを省略し、重要な枝のみを残して、演算量を減らすことで効率的に判断する
例えば、自動車などがインターネット経由で分析処理をしていると、状況の変化についていけない。自動運転支援にコンパクトな人工知能を使えば、もっとも複雑な一般道の走行でも1秒ぐらいで状況判断してくれる。より状況がシンプルな幹線道路や高速道路ならその判断はもっと早い

 推論処理はそもそも「深層学習」と呼ばれる機械学習アルゴリズムにより実行する。高度な推論が可能だが、多層なネットワーク構造により推論するため、推論処理に多くの演算量やメモリー量を必要とするのが欠点だ。ここではその多層なネットワーク構造と計算方法の効率化したアルゴリズムの開発に成功。従来の推論レベルは保ちながら、人工知能をコンパクト化、さらにはスダンドアローン化できるようになった。

コンパクト化された人工知能のチップ自体は非常に小さい。人差し指の先ぐらいのサイズ
右から左へ積み木をパターン通りに動かすところをカメラで映し、手の動きや積み木をそれぞれ検知している様子を表した画面。上はインターネット経由で膨大なパターンをすべて処理しようとするため、処理速度が手の動きに追いつかず、画面が止まってしまい、下のリアルなシーンよりも以前の状態を映している。下はコンパクト化した人工知能でネットワークに頼らず、その場の端末で、重要な枝のみを分析処理しているので、スムーズに処理していることが分かる

 人工知能市場は2015年現在3.7兆円だが、2020年には23兆円規模にまで成長すると予測されている(EY総合研究所調べ)。現在の開発目的は先にも挙げたように、瞬時な判断を必要とする自動運転などの車載機器や、機密漏洩などに直結する可能性がある産業用ロボットなどだが、その開発の先には、より高度な処理を必要とする未来のIoT家電なども視野に入っていることを期待したい。

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