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ダイキンの“薄型”エアコン「UXシリーズ」に宿るデザインの力滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2016年03月25日 16時04分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

存在自体を快適にするデザインの力

 単なる曲面の美しいデザインではなく、電源を入れたときの動きまでを含めた“静と動”の両方で“風のながれ”を体現したUXシリーズ。どのようにして生まれたのだろう。

風のながれをイメージした(画像は発表会のスライド)

 「薄く見せるというコンセプトは最初から決まっていました。その上で、“壁に機械を取り付けた”のではなく、“壁の一部がせり出してきた”ような――つまり建築の一部になるという考え方で空間との調和を意識しました」

 “空間との調和”は、エアコンを語るとき頻繁に用いられる言葉だ。例えば日本では最近、三菱電機のスクエアフォルム(FL/FZシリーズ)が空間と調和したエアコンとして注目を集めている。縦横水平のラインが室内のラインと融合し、やはり建築の一部であるかのように見える。しかし、「UXシリーズ」のほうがより薄く存在感は希薄だ。

三菱電機の「FL/FZシリーズ」

 シュラッグ氏によると、ウェーブデザインの目的は単純にインテリアと調和するだけではなく、エアコンが送り出す「きれいな空気」を表現しているという。「インテリアに馴染むか、馴染まないかだけが問題なのであれば、最後はエアコンに壁紙をはって存在を消してしまえばいいですよね。われわれが考えているのは、このプロダクトを通じて空気を感じてもらうこと。それが最高のデザインであり、他社製品との大きな違いになります」

 エアコンは部屋の中に存在し続けるものであり、だからこそ動いていないときでも、存在そのものが人に“快適さ”をもたらす必要があるという。きれいな空気を表現したデザインには、そうした狙いがあった。

 そしてUXシリーズは、明かりと見る角度によっても表情が変わる。日本の家庭では、大きなシーリングライトを使った明るい照明が主流のため、エアコンも明るい環境で見られることが多い。しかし欧州は間接照明文化であり、間接光が生み出す陰影がウェーブデザインのフォルムを引き立てるとシュラッグ氏は指摘する。

間接光が生み出す陰影がウェーブデザインのフォルムを引き立てる

 「さらに美しく見えますよ。日本は、いまでこそ明るい蛍光灯文化ですが、かつて“ろうそく”などを使っていたように、陰翳礼讃という光と影を楽しむ文化があります。ヨーロピアンベースのデザインも日本で受け入れられると確信しています」

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