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ソニーが“照明”を作る理由滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2016年05月16日 19時47分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 さらに空間に影響を与えないアイテムが「LED電球スピーカー」だろう。形状が電球そのもので、今までの電球と交換するだけで使える。室内に機器を増やすことなく、Bluetoothスピーカーの利便性を享受できるわけだ。しかも新製品では調光やステレオ再生(2台必要)にも対応。音楽に合わせて光の変化が楽しめるなど新しい価値も提供している。

 「このLED電球スピーカーはまさに“less is more”(余計なものがないことがもっとも良い)”の考え方に即したアイテムです。面倒な配線や設定も不要。電球を取り換えればいいだけなので、E26口金の照明ソケットがあれば、どこでもお気に入りの音楽を楽しめます」(戸村氏)

「LED電球スピーカー」の新製品「LSPX-103E26」は調色に対応したほか、スピーカー部の音質も向上した。5月21日発売(オープンプライス)
2台あればステレオ再生も可能

 

あえて“ソニーっぽくないデザイン”にした

 同じLED照明でも「マルチファンクションライト」は開発の経緯から大きく異なる。横沢氏によると、発想の起点は2013年頃に「天井の照明器具にソニーが得意とするオーディオのスピーカーを搭載した商品」を企画したことだったという。「ただ、ちょうどその頃、他社が同じような製品(※NECライティングがパイオニアと提携して販売した『CrossFeel』シリーズ)を出したのと、その売れ行き自体があまり好調ではなかったこともあり、一旦プロジェクトを止め、ソニーならではの商品性をじっくりと見つめ直すことにしたという経緯があります」

マルチファンクションライトを開発した横沢信幸氏

 2014年には原点に立ち返り、「この先、本当にユーザーが求めるもの」「ソニーとして家全体に与えられる付加価値」を模索し始める。「ちょうどその頃からモノがインターネットにつながるIoTが少しずつ話題に上るようになったものの、まだまだほとんどの方に周知されていない技術でした」(横沢氏)

 当初はシーリングライトの部分も独自開発しようと考えていたが、本当に作りたいのは照明器具ではなく、これまでにないライフスタイル的な付加価値を提案することだった。このため一旦はコンセプトをゼロリセット。3年後の2017年を想定し、本当に必要なものを検討することにした。

 「まだ想像はできなくても、生活に必要なもの。派手さはなくても、目指すゴールが最終的に認めてもらえるものである提案なら、それも“ソニーらしさ”にはるはず」。そんな想いから、それまでのスピーカーという単機能を照明に結びつけるのではなく、家の中にある家電製品のハブとなるLEDシーリングライトという発想が生まれた。

 しかも潔く、LEDシーリングライト部分は他社に任せることにする。この製品はドーナツ型の「LEDシーリングライト」と中央の「マルチファンクションユニット」に分かれているが、シーリングライト部分は東芝ライテックが製造している。

ドーナツ型の「LEDシーリングライト」と中央の「マルチファンクションユニット」に分かれている

 「1+1が2以上の価値を持つ製品をソニーのブランドで出すためには、シーリングライト部分をソニーの持っているルールや規格で押し通すより、“餅は餅屋”じゃないですが、すでによりよい専門技術を持っている東芝ライテックに任せ、われわれはIoTのアプローチに集中したほうが、良いものができると判断しました」(同氏)

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