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「関西は笑いに貪欲でした」 「キンプリ」菱田監督が応援上映の“予想外”を語るまさかの「4DX」解禁(2/3 ページ)

» 2016年05月20日 12時00分 公開
[村上万純ITmedia]
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観客が「60分しゃべりっぱなし」は予想外

 キンプリは、アニメ「プリティーリズム・レインボーライブ」に登場する男性ユニットにスポットを当てたスピンオフ作品で、見どころは「プリズムショー」と呼ばれるアイススケートをモチーフにしたパフォーマンスショーだ。

キンプリ 劇場アニメ「KING OF PRISM by PrettyRhythm」©T-ARTS / syn Sophia / キングオブプリズム製作委員会

 元ネタのレインボーライブは女児向けアニメだが、男性アイドルたちが活躍するキンプリのターゲットは菱田監督いわく「女児以外みんな」で、女性ファンが多い。

 そんな世の女性たちが夢中になっているのが、先述した応援上映だ。これまでいくつかの映画で同種の参加型上映を仕掛けた前例もあり、キンプリも応援上映ありきの作りになっている。

 具体的には、観客がアフレコするためのテロップが流れる、合いの手を入れやすいセリフをキャラクターに言わせる、盛り上がるためのライブシーンを入れる、など。映画館にいながら、とにかく最初から最後までゆっくりと鑑賞している暇がないのだ。

 特に「プリズム☆アフレコ」(公称)については、「はい、ソフトクリーム。あ〜ん」など、乙女ゲームに出てきそうなセリフを会場全体で叫ぶという未知の体験ができる(もちろん男性も)。

アフレコ 「ア〜ン」というアフレコ。通称「プリズム☆アフレコ」。菱田監督いわく「プリズム☆相づち」もあるらしい

 この現象について、依田さんは「ライブパートでの声援がメインの作品だと思ってたので、日常パートでも絶え間なくツッコミを入れ続ける光景はさすがに制作段階では予想できませんでした。ライブシーンが少なくて心配してたんですが、杞憂(きゆう)でしたね(笑)」と振り返る。

 キンプリは冒頭、中盤、終盤にそれぞれライブを挿入しており、日常パートはあくまで観客に休んでもらうつもりで作ったのだという。菱田監督は「まさかエンディングまで休まないとは(笑)」とファンの熱心さに驚きを見せ、西さんは「こんなにがっつりキャラと会話していいんだ! という気付きを与えてくれるのがプリズム☆アフレコのすごいところです」と力説した。

 「ツッコミや合いの手を入れながら、スクリーンに向かってひたすら60分間しゃべり続ける」という応援上映の特性について、依田さんは「ニコニコ動画のような動画共有サイトの実況をリアルで体験する感覚に近い。脳内ではスクリーンにコメントが流れているイメージです」と説明する。

「関西は笑いに貪欲」「札幌はキレイな応援」

 面白いのは、「地域によって応援の特色があるんです」(菱田監督)という指摘だ。応援上映のあり方は観客のノリに依存するため、劇場や時間帯によって毎回異なる体験を味わえるのが特徴だが、舞台あいさつで全国行脚した菱田監督は「地域性」を感じたという。

 「大阪は、とにかくツッコミが多いです。合いの手も関西弁で、せやな! せやな! って(笑)。笑いをとるのに貪欲なお客さんが多いという印象でした。札幌は統率が取れたきれいな応援というイメージ。福岡は有名なファンの方がいて、その人が『聖さーん!』とキャラ名を叫ぶと、会場全体が、おぉ〜っと盛り上がるというローカルルールがありました(笑)」(菱田監督)。

ツッコミ 通常はキャラのセリフに対して「そうだ! そうだ!」とツッコむ場面。関西ではこのシーンが「せやな!」になるのだろうか

 菱田監督は、キンプリを「スタッフに加え観客も総出演して作り上げる作品」と表現する。その他、「物語終盤で作品内の観客が悲しんで泣くシーンは、リアルの観客も泣く演技をすることで5.1chサラウンド以上になる」「カヅキとアレクサンダーのダンスバトルシーンで、たまにアレクサンダーが勝つ回があるらしい(物語内では引き分け)」など、観客のノリ次第で作品の解釈すら変わってしまう、応援上映ならではのジョークネタも飛び出した。

 恥ずかしさを捨てて、いかに応援にのめり込めるかがキンプリを楽しむ上では重要な要素となりそうだ。

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