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高知の山奥で見つけた「異世界」 極楽を作り続けるモイアさん(4/4 ページ)

» 2016年07月08日 06時00分 公開
[金原みわITmedia]
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――モイアさん、さっきはありがとうございました。

 「ええよええよ。まあ、長旅の道中、車の運転気をつけぇな」

――それなんですが、実は今、ちょっと……。

――車がぬかるみにハマって、実はかなり、大変なことになってまして……。

 「ええ、なぁにしちょるの? まっちょれ、今、助けに行くけぇ!!」

 さっき別れたばかりのモイアさんは、大型トラックに乗ってすぐにその場に駆けつけてくれた。近くで商店をしているモイアさんのイトコも一緒になって、大型トラックに私の軽自動車をくくりつけて引っ張ってくれる。

 「なぁんで、こんなことになっちょるんや〜!」

――ごめんなさい……。

 結局2時間にも渡って救出作業をしてくれたのだった。

――本当にありがとう、モイアさん……。

 「ええ、ええ。ボクは解体やってて機械や車持ってたから、いろんな事故の時に呼ばれてなあ。中には車がひっくりけえってたのもある、ぐちゃぐちゃになってた死体も沢山見てきたけえ。君はひとりで旅してんのやろ。気ぃつけなぁ」

――……。

 モイアさんは優しくたしなめてくれた。

 私は、思わず涙を流さずにいられなかった。申し訳無さもあったが、初めて会った私にこんなにも優しくしてくれた、モイアさんの人柄に感動していた。

 「泣ぁーくなや! まだ次へ行くんじゃろ。まあ懲りずに、高知に寄ったら顔見せぇ。ほんじゃな」

 モイアさんはそのままトラックに乗り、颯爽と走り抜けていった。

 高知で出会ったDIYアーティスト。高角の雄大な棚田のように、広い広い心を持っていた。

 今日も山奥で、新たな作品を作り続けているのだろう。馬鹿なライターとの出会いも、ひとつのインスピレーションとして極楽の一部になるのだろうか。少なくとも、私はモイアさんとの出会いが一生忘れられそうにない。

 ちなみに、この時一緒に助けてくれたモイアさんのイトコの作品も凄かった、というのはまた別の話で。


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