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20年間回り続ける“肉屋の水車” 鹿児島「肉のハッピー」(2/3 ページ)

» 2016年08月15日 11時00分 公開
[金原みわITmedia]

人は歳を重ねると水車を作りたくなるのか

 そういえば、この連載では1人目の春本さんも水車を作り、2人目のモイアさんも水車を作っている。人は晩年になると、水車を作りたくなるものなのかもしれない。

 「テレビとか新聞とかも来たことあるよ。でもちゃんとしてないから、来ても恥ずかしいね」

 「最近ちょっと調子悪いもんなあ。直しながらやってるけどね」

 そう言って鬼塚さんは、ビニールひもをぐいぐいと雑に引っ張ったり結んだりした。そうすると、先ほどまで止まっていたオブジェも動き出す。

――本当にすごい、どうなっているんだろう。物理の勉強とかしたんですか?

 「いんや。畜産と農業しか勉強してないよ。作るのはそんなに時間はかからないから、手が空いたときに作業している。もちろん夜やったり頑張りすぎたりはしない。ほどほどが大事だからね」

 「人形を彫ったのも自分。顔だけなら一体20分かからないね。この木の色はね、バーナーで焼いたの。焼きを入れたら、コーティングしてなくても古く見えるからね。ニスも塗るとだいぶ味が出るね」

味が出すぎている気もする

 「頭の中で想像しながら、マジックでダンボールに設計図を書いて作っていくわけ。最初から誰かの設計図があるわけじゃないから、世界に1つしかない、自分でゼロから作り出してこそ設計ってことだね」

――苦労したこととかありますか?

 「作る時点では動いてるけど、水車に設置したらまあうまくいかない、なんてことは良くあるね」

 「20年前から作っているけど、今の作品は作り直して2年半。木ってのは水を吸うから、腐ってくるんだよね。まあ、壊れたら継ぎ足し継ぎ足ししてね。昔は全く違うものだったよ。ほらこれ」

 そう言って鬼塚さんは昔の写真を見せてくれた。

昔は昔で味が出すぎている
まるでエレクトリカルパレード

――今の作品の中ではどれが好きですか?

 「うーん。このゴルフしてるのは、大きいし思い入れあるよね。流木を拾ってきて作ったんだけど。タバコを吸っていて、なかなか粋でしょ」

ゴルフをする人

――クールな感じが、ちょっと鬼塚さんに似てる気がする(笑)。

 「そうかな。まあ僕もゴルフするし、自然と似てしまったのかもしれないね」

 「これを作ってから、子供が更に興味を示しているように思えるね。立ち止まって、ずーーーーと見てるからね」

 確かにこの不思議な動きにはなんだか中毒性がある。これでは子供だけではなく大人も見入ってしまうだろう。

肉のハッピーと鬼塚さんの夢

――鬼塚さん、なにか夢ってありますか?

 「夢? もう年取ったから夢も何もなくなっちゃった」

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