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スティック掃除機の“当たり年”に飛び出した注目製品――パナソニック「イット」の秘密滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2016年08月17日 06時00分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

すき間を掃除したくなる掃除機

 実際にしばらく試用してみたが、これまでのコードレススティック掃除機と“iT”のもっとも大きな違いは、家具と家具の細かなすき間や通常の視線では見えない家具の下なども、とにかく「掃除したくなる」ことだった。

片手で“T字型”から“I字型”へと変える様子
すき間掃除も楽

「前向きな気持ちになる掃除機と言われるのはうれしいですね。コードレススティック掃除機は、汚れが目立つところをサッと掃除する使い方がメインになる分、見えないところをわざわざ見つけ、ノズルを付け替えてまで掃除しない人も多いです。でも、“iT”を使ってもらえれば、これまで確実に見て見ぬ振りをしていたようなところも掃除したくなります」(北口氏)

 掃除機において吸引力が高いのは当然のこととして、もっとも重要な点は操作性とともに密着感であると思う。コードレススティック掃除機“iT”は、小型軽量なノズルながらもその点は一切妥協がないようだ。

「パナソニックはパワーノズルを開発して28年以上続けているので、そのあたりはしっかりと実現できています。そのポイントの1つが『ガバとり』構造を採用したことです」(北口氏)

「デザイン的には、実はその『ガバとり』構造のバンパーに搭載されているローラーがポイントでした。もともとこのローラーは、より目立たせたい機能であったことから、三洋電機時代は、“鬼の角”のようにローラー自体の存在が際立つものでした。でもそれでは、シンプルでスマートな“iT”にはマッチしません。『今回はローラーを外に出さない』と設計に話をして、結果、バンパーに内蔵することができました」(山本氏)

 実際、ローラーがバンパーに内蔵されても壁を平行移動させるスムーズ感を損なうことはなく、かつ壁際にたまったゴミも効率的に取ることができた。とくに階段などの掃除ではその効果を大いに感じることができる。

バンパーに内蔵したローラー

 さらに注目はそのブラシ部分にある。こちらはパナソニックのキャニスター掃除機などの技術をブラッシュアップし、効率良く集じんできるように3種類のブラシを配置しているという。

「コードレススティック掃除機の場合、まだまだゴミの取れ方に不安を持っている人が多いのも事実なので、しっかりとれることをアピールするためにも、キャニスター式の技術であるV字パターンをブラシに転用しました。さらに3種類のブラシを組み合わせ、グリーンはフローリングなどのふき掃除用として、1本1本のブラシの設置面をより広げるためY字形状にしました。先端が丸では床面には1点しか接しませんが、Yなら確実に2点が接するので、効率良く床面からゴミがとれます。本数自体も増やすことで、キャニスター掃除機に負けない掃除力を実現しています。次に白いブラシはじゅうたん用のブラシで、素材はやや固めなので、絡み付いたペットの毛などもしっかり取ることができます。また、壁際などのゴミを重点的に取るグレーのブラシは、大きなゴミを吸い上げるために、あえてブラシを間引きすることで、歯抜け状態にして風の通り道をキープしています」(北口氏)

3種類のブラシを組み合わせた

 また、カーペットの上などを走行しやすいように起毛布ローラーを採用しているのもパナソニックならでは。「これは、ふとん用掃除機からの技術転用になります。ふとんという環境は特殊で、掃除機のノズル自体を滑らせると、ふとんまでズレてしまうため、掃除機をスムーズに動かすのが難しい。そこで、起毛布ローラーを採用しているのですが、それをコードレススティックでのじゅうたん掃除用に活用したということです。パナソニックはあらゆるタイプの掃除機をこれまで作ってきているので、その良い部分を応用できるのも強みです」

カーペットの上などを走行しやすいように起毛布ローラーを採用

 コードレススティック掃除機“iT”の最大の魅力といってもいいのが、シンプルでスマートな形状だろう。コードレススティック掃除機自体が、部屋に出しっぱなしにして使うというスタイルなので、各社ともデザインには非常に力を入れているが、パナソニックの場合、その一歩先を実現した。余計な存在感は主張せず、エレガントで細身の本体を生み出すことに成功したからだ。「出しっ放しにするとはいえ、あくまでも掃除機ですから、必要以上にデザインを前面に押し出す必要はありません。デザイン家電ではないため、カッコいいことよりも、掃除機として使いやすく、置いてあって快適であることの方が重要です。だから、1本の線のような細さを実現することに最後までこだわりました」(山本氏)

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