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4KプロジェクターでもHDRは楽しめる! JVC「DLA-X750R」が見せた映像設定の妙技山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/3 ページ)

» 2016年08月25日 06時00分 公開
[山本浩司ITmedia]

 「HDR コンテンツ視聴設定」のもう1つのポイントが、BT.2020色域に対応させたカラープロファイルの追加だ。BT.2020色域に対応させるといっても、水銀ランプを光源とする本機で物体色のほぼすべて(99.9%)が表示可能なBT.2020をフルカバーすることなどとても無理だ。しかし、JVC開発陣がUltra HD Blu-rayの映画ソフトを精査して得た知見は、規格上の色域はBT.2020であっても、実際にはデジタルシネマで定められたDCI-P3色域の領域しか使われていないということだった。

 JVC 開発陣はこの事実に注目し、カラープロファイル「BT.2020」の設定においては入力信号を絶対値でリマッピングし、DCI-P3を超えた、つまり使われていない領域は表現しないことにしたという。これでオリジナルに忠実な色再現が可能になるというわけだ。

 ちなみに光学式のシネマフィルターを搭載したDLA-X750RはDCI-P3をフルカバーしているが、同フィルターのない弟モデル「DLA-X550R」の最大色域はsRGB相当となるようだ。

「DLA-X550R」にはブラックのほかにホワイトも用意されている。価格は70万円(税別)
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 実際にこの「HDRコンテンツ視聴設定」で、Ultra HD Blu-rayの超高画質映画ソフトである「レヴェナント:蘇えりし者」や「エクソダス:神と王」などを観てみたが、これが実に素晴らしかった。もともと黒の再現性に定評のあるDLA-X750Rだが、HDR最適画質に再チューニングされたことで、コントラスト表現がいっそう向上し、自発光の有機ELテレビやよくできたローカルディミング採用の液晶テレビのような白ピークの伸びや明部の色乗りのよさ、精妙な階調表現が実感でき、おおいに感心させられた。JVC開発陣の“映画を観る力”にまずは脱帽だ。

Ultra HD Blu-ray「レヴェナント:蘇えりし者」。20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンから8月24日に発売予定。価格は7479円(税込)

 とくに強い感銘を受けたのが、「レヴェナント:蘇えりし者」の”だった(収録は6.5K/6K 、マスターになるDIファイルは20世紀フォックス作品初の4K)。酷寒の地で繰り広げられる壮絶なサバイバル・ストーリーを雄渾な筆致で描いたこの作品は、特別なライティングをせず、自然光と有りものの光だけを用いたアベイラブルライト撮影が大きな特徴。すべてのシーンが一幅の泰西名画を思わせる美しい構図で捉えられ、DLA-X750Rはその光と影のダイナミックかつ繊細な対比を精妙に描き、4K&HDRの魅力を観る者に力強く伝えるのである。

 また、DLA-X750Rで観る本作のSN比のよさも驚愕の一言。オープニング・シーンの川面の輝きや朝靄の向こうに見える野牛のシルエットがうっとりするほど美しい。まさにタルコフスキー作品を彷彿させる静謐(せいひつ)な映像詩の趣だ。こんなに美しい映像は、コントラストの浅いデジタルシネマプロジェクターを用いたフルHD上映の映画館では絶対に楽しむことはできないだろう。

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