――え、じゃあこの輪っかは後から付けたものじゃないってことですか?
「そうよ。もともと同じ一本の木で、うまいことくりぬいて輪にしたの」
「これもっと小さいやつをね、キーホルダーにして作ってたんだけどね。いっとき販売しとったんだけどね。観光土産にするって頼まれて、それで作ってたの。手間がかかってさあ、やめたんだけどね」
――すごいですね。これって平戸の伝統工芸なんですか?
「いいや。ぜんぶ自分で考えたよ」
――ええ!こんな技術、とても普通の人は考えつかないですよ!
「そうかねえ」
金山さんはうれしそうに笑った。その細かい技術は、誰かに教えてもらった訳ではない。持ってうまれた発想力とセンスによって形成されていた。間違いなく金山さんはDIYの天才であった。
「新しいの作ろうとなると、こういう材料でできるんじゃないかなあって、頭に浮かんでくる。毎日楽しいよ。毎日寝とっても、あそこはどうするかな〜何を使うかな〜って楽しみでしょうがないのよ。趣味をもってるってことはいいことだと思うけどね」
「でき上がって、これ違うなあってなったら、また壊してな」
――納得いかないと、壊してしまうんですか。
「そうだよ。そんな風に作り続けていくたびに、品物がきれいになったり、形が変わっていく。それが楽しみでしょうがない」
金山さんの作品は、ストイックに作り続けることによって少しずつ進化していっているのだった。きっと誰も考えもしないようなアイデアを使い、これからもここを通る人たちを驚かせることだろう。
「これね、最近出したばっかりの作品。これは普通のカブっちゅうバイクだけどね。そこにタイヤをうしろ2つつけて。ヘルメットなしで乗れる3輪のやつがあるでしょう。あれに変えてね。頭にマネキンを乗せてね……」
「この前を通って、ああーいいねえきれいだねって、思ってくれたらうれしいね。それで交通安全につながれば、こんなにうれしいことはないね。まだまだたくさん作っていこうかと思ってるよ」
これからも金山作品は、平戸の交通安全を守りながら進化していくのだ。その様子は楽しみでしょうがない。
皆さんもどうぞご安全に。脇見運転には、くれぐれも気を付けて。
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