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“ルンバブル”なオフィスを作ったガジェット大好き社長の経済学(2/2 ページ)

» 2016年12月07日 14時27分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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ルンバの「カコンカコン問題」とは?

 ルンバを使い始めて気づいたのは、意外にもオフィスの環境に合っていたことだ。「オフィスに敷き詰められているタイルカーペットがきれいなんです。カーペットは土が固まって目詰まりすることも多いのですが、ルンバはゆっくりていねいに掃除をするので土埃がとれる。普通の掃除機よりルンバのほうがきれいになると思いました。カーペット敷きで土足というオフィスは米国の家庭に近いので、ルンバには合っているのかもしれません」

 一方でトラブルもあった。あるとき、ルンバが“カコン、カコン、カコン……”という異音を立て、「エラー2」と言って止まってしまった。「よく観察するとブラシの軸が長くなっていて、ワイヤガードのボディー部分を膨らませていました。実は、ブラシの軸先にある黄色いキャップの中に髪の毛などが巻き込まれ、軸が長くなることでこの異常が起きたのです」

カコンカコン問題の謎を解いたブログ記事

 とはいえ、髪の毛は黄色いキャップの中にあり、ブラシを外しただけでは異常に気づきにくい。ブラシの軸の長さが変わっていることを見抜き、分解したからこそ原因が判明した。このトラブルをブログに写真入りで紹介したところ、読者から大きな反響があったという。

 「勝手に“カコンカコン問題”などと言っていますが、当時は公式サイトのFAQなどにも情報がなく、同様のトラブルに遭った人たちがたくさん見に来たのだと思います」。なお、現在のルンバは当該部分が改良されており、カコンカコン問題は起きない構造になっている。

 ブログにはルンバのバッテリー寿命に関する記述も多い。一般家庭よりも遥かにヘビーな使い方をするオフィスは、先行して耐久試験を行っているようなもの。年に1回はバッテリーを交換するため(当時のルンバはニッケル水素バッテリー)、機種によってバッテリーの型番が異なることやメンテナンスによってバッテリー駆動時間が延びることなど実践的な記事を掲載してきた。これもユーザーにとっては貴重な情報源だろう。そのためか、読者から会社宛に新品のルンバが送られてきたこともあった。「ありがたく使わせていただきました」(坂本氏)

安定して進化を続けたルンバシリーズ

 社員が増え、オフィスが広くなるとロボット掃除機も増えていく。ガジェット好きの坂本氏は、東芝やシャープなどの国内メーカーが相次いで投入した新製品も導入してみたが、家庭とは異なるオフィスの環境に合わないものが多かった。

 広いオフィスでは、バッテリー駆動時間が長く、ゴミを集めるダストボックスが大きいことが重要になる。また、ロボット掃除機の形状も重要。例えば背が高いとパーティションの下をくぐれない。こうした要件を満たせないロボット掃除機は自然と使われなくなったが、中には「しゃべりすぎてジャマ」という理由でリストラされてしまったロボット掃除機もあった。

 現在は2台の「ルンバ870」と最新型の「ルンバ980」など6台が週2回のペースで掃除を行っている。「今でも1年に1台くらいのペースで新規種を購入しています。最近の製品ではマキタの業務用ロボット掃除機がブログの読者受けも良かったのですが、意外にも社内のちょっとした段差が越えられず、停止することが多いようです」。それだけならまだしも、工事現場で使う製品のため、停止するとアラームが鳴り出す。「オフィスではちょっと困りますね」と坂本氏。

マキタの業務用ロボット掃除機「RC200DZ」。ごつい外観で、まるで戦車のように走破性が高そうに見えるが、実際は段差に弱いという。社員には「ガンダム」と呼ばれているそうだ
「もう一度、日本のメーカーにもチャンスを」と考えて導入したパナソニック「ルーロ」シリーズ。評価は上々で今までに合計3台目を購入したが、ダストボックスが小さめなのは不満

 さまざまなメーカーのロボット掃除機を累計14台ほど使用してきたが、安定した性能を発揮しているのは、やはりルンバシリーズだという。「ルンバはほかの製品に比べると圧倒的にメンテナンスにかかる手間や時間が少ないんです。最近の製品は脚まわりも改善され、段差やコードにひっかかることも減りました。以前の製品に比べ、かなり進化しました」と実感している。

ルンバへの要望を語る坂本氏

 一方で、ルンバに対しては要望もたくさんある。「最新のルンバ980はハンドルがなくなって(凹みになった)持ちにくくなってしまったことが残念。またゴミを捨てるときに手が汚れることが不満なので、紙パック式になるとうれしいですね。またほかにもコードを巻き込んだら逆走して自分で脱出してほしいとか、リモコンはいらないとか……考え出すとキリがないです」と笑う坂本氏。最後に企業ならではの切実な要望を追加した。「価格は10万円を超えないでほしいです。会社の資産として計上しなければならないので」

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