まず、オリジナルETHER(ETHER 1.1と呼ばれるグレードアップタイプ)と比較しつつ、開放型のETHER Flowでさまざまなジャンルの音楽を聴いてみた。
確かに、一聴してすぐに分かるレベルでのクオリティーアップを果たしている。一言で表すならば、歪み感のない一段とフラット志向のサウンドに変化した、といっていいだろう。特に顕著なのが高域で、ヌケの良いクリアな響きに一変。ヴァイオリンの演奏を聴くと、ボーイングに力強差が加わった、凜とした演奏に生まれ変わっている。また、ほんのわずかにダイレクト感が増しているのだが、そのわずかな差が音に影響を与え、演奏がとてもリアルに感じられるようになった。
続いて、デュランデュランのライブ音源を聴いてみたのだが、これがもう鳥肌もの。前からはパワフルな演奏の歌声が聴こえ、後ろからは数万人の観客が明けるかけ声が乱れ飛び、まるでライブ会場の最前列にしがみつきで見ているかのよう。ドラムの演奏を聴くかぎり、基本的にはドライな音色傾向なのだろうが、ヴォーカルやメインギターはやたらと“つやっぽく”感じられるのが面白い。しっかりとした量感(と表現力)の中域に、素性の良い高域が合わさって生まれた絶妙のサウンドだ。とにかく男性ヴォーカルとの相性が良く、ニルヴァーナも最高だった。
続いて、密閉型のETHER C Flowを試聴しよう。先に、比較用として従来機のETHER Cを聴き、「いやもうホントこれで充分じゃないの!? これ以上何ができる!?」と思うくらい良質なサウンドで、開放型モデルに対して多少のクセが残るもののこのエネルギッシュさは何物にも代えがたい、とかなりの惚れ込みようが復活してきたのだが、確かにETHER C Flowはそれの上をいく音質。「あれ? 今、聴いているの開放型のほうだったっけ?」と一瞬錯覚するくらい、密閉型とは思えない肩の力の抜けたナチュラルな音色を楽しませてくれるのだ。
例えばヴァイオリンの音はかすかなかすれのようなニュアンスが加わり、結果としてボーイングの強弱が豊かな表現されるようになった。一方、ヴォーカルものはというと、デュランデュランのライブでは、密閉型ならではの熱気を感じつつも、左右に対して大きく広がる音場が感じられるようになった。張り上げた声のインパクトや伸びやかさなど、パワフルさとリアルさの絶妙なバランスという点では、ETHER C Flowが一歩も二歩も進化したイメージだ。
傾向ががらっと変わって感じられるのが女性ヴォーカル。高域の素性が良くなり、全体的にヌケの良くなったサウンドのおかげもあってか、声の特徴や歌い方のニュアンスが良く伝わってくる。しっかりとした厚みを保ちつつ、それでいてさわやかな、どこか優しさを感じる心地よい歌声を存分に堪能することができる。久しぶりに、μ's「START:DASH!!」96kHz/32bit版も聴いてみた。こちらは、9人それぞれキャラクター性がとても良く伝わってくるし、いまから思うと、これだけ特徴の違う9人の声を(個性を際立たせつつ)良くまあ1つの曲にまとめられたなと、改めて感心させられたほど。そんな、新発見をももたらしてくれる、素晴らしい進化だ。
よくある結論なので大変恐縮ではあるが、MrSpeakers製のヘッドフォンに関しては、“最新かつ最上級のものが最良”、という方程式がピタリとハマってしまうことが確認できた。もちろん、それはオリジナルの良さがあってこそ。とくにETHER Cに関しては、楽曲によってはこちらのエネルギッシュな鳴り方のほうが好み、という人もいるだろう。とはいえ、素性の良さ、クオリティーの高さに関してETHER Flowシリーズは確実な進化を果たしている。とても優秀なモデルだ。
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