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初の有機ELテレビとは思えない超高画質、東芝「X910」を試す山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/3 ページ)

» 2017年01月27日 14時18分 公開
[山本浩司ITmedia]

まずなんといっても漆黒の表現が凄い。しかも従来の大画面有機ELテレビで気になった暗部のノイズは丁寧に取り除かれているし、ローライトの階調性も格段によくなっているのである。


いかに巧みなローカルディミング(部分減光)を駆使したといっても、ハロ(暗い場面で明るい対象物の周囲がぼんやりと明るくなる現象)が全く出ない液晶テレビは、LEDバックライトの個別制御という本質的な技術課題に挑んだソニー「Z9D」シリーズ以外に存在しないわけだし、Z9Dでも自発光有機ELのX901が見せる濡れたようなグロッシーな黒を再現することはできていない。

 一方、漆黒と暗部の再現とともに、ハリウッド産映画Ultra HD Blu-ray Discでもっとも強く実感させられたのは、ハイライトの精妙な階調表現だ。

 X910には、HDRコンテンツにメタデータとして記録された最大輝度とフレーム内の平均最大輝度の表示機能があるが、それを見ると最大輝度1万nitsに規定されたHDR10で運用されるハリウッド産映画UHD BDの最大輝度が、実際には1000nits前後で記録されているケースが多いことが分かる。

本連載ではお馴染みのリファレンスディスク「レヴェナント:蘇えりし者」

 だからこそ、なのだろう。最大輝度800〜1000nitsという本機X910で、映像モードを「映画プロ」に設定し、暗室環境で「レヴェナント:蘇えりし者」とか「クリード チャンプを継ぐ男」「エクソダス:神と王」などのお気に入りのUHD BDを観ると、どの作品でも白ピークは気持ちよく伸びつつ、ハイライトの階調がきわめて明瞭(めいりょう)に表現されていることが実感できる。

 例えば「レヴェナント:蘇えりし者」で繰り返し登場する焚き火のシーンをX910で見ると、赤からオレンジ、白へと続く光のグレデーションが見事に表現されていることが分かる。同じシーンを通常のBlu-ray Discで見ると、焚き火が一様に白く光るだけ。HDRの明部表現のすばらしさ、表現力の豊かさをこれほど明瞭に教えてくれたのは、ソニーZ9D以来といっていいだろう。

 もう1つ感心したのは、本機の4Kアップコンバート&超解像処理の見事さ。通常のBlu-ray Discがじつに美しく表現されるとともに、画質の劣る地デジでも、他社製品を上回るキレのよい映像を楽しむことができるのである。ここが有機EL大画面4Kテレビで先行するLGエレクトロニクスの「E6P」を大きく上回る点といっていい。

 とくに「美肌リアライザー」の効能が大きい。スタジオ収録のバラエティー番組などでも女性の肌を豊かなグラデーションで描き、立体的な造型感を感じさせるのだ。比較して観た一般的な液晶テレビの映像がとても平板に見え、その違いにガクゼンとした次第。

 加えてぜひ指摘しておきたいのが、本機の「おまかせ」映像モードの完成度の高さ。部屋の照明は電球色か蛍光灯色か、テレビ背面の壁の色は何色か、外光が入る部屋かどうかという情報をインプットしておけば、あとは自動で時々刻々と変わる映像と視聴環境に合せて最適画質を提供してくれるわけである。

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