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なぜドルビービジョン対応製品が増えたのか?――CESリポート(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(5/6 ページ)

» 2017年02月13日 16時07分 公開
[天野透ITmedia]

MQAの飛躍

――ここまでビジュアル系の話が続きましたが、オーディオ系の話題はどうでしたか?

麻倉氏:オーディオに関してはやはりMQAです。これまでは2LやUNAMASといったマイナーレーベルがメインでしたが、2016年にワーナーミュージックグループが契約をしたのを皮切りに、年末までにソニーミュージックとユニバーサルミュージックが採用に関わる契約を交わし、音楽業界の3大メジャーがそろい踏みとなりました。初出から2年、ついにメジャーレーベル制覇です。配信では「TIDAL」のMQA配信が1月5日からスタートしており、ハードメーカーとしてはテクニクスがサポートを表明したのが大きいです。おそらくソニーも時間の問題でしょう。

 これでMQAを軸にしたソフトとハードが整いました。いよいよ今年、本格的にMQAがくるかと期待されます。ストリーミングだけではなく「HD Tracks」もダウンロード配信を開始するようで、音源の入手も容易になります。

 環境としてハイレゾの中にMQAが大きな役割を占めていて、フォーマットでいうとこれまではリニアPCMかDSDかでしたが、MQAはフォーマットというよりも環境です。エンコード・デリバリー・デコードというエコシステムでの展開が、今年からいよいよ積極的になるというのが大きいです。

Mytek digitalの新フラッグシップモデル「Manhattan II」。MQAのリファレンスに耐えうるモデル。日本の代理店では旧モデルからのアップグレードもアナウンスされているが、国内導入時期はまだ発表されていない
同じくMytek digitalのホープ、ポータブルDAC「Clef」も持ち込まれた。こちらも今のところ日本では未発表だが、本国のホームページでは、バッテリー駆動、MQAやDSD 5.6MHzといったフォーマットのサポート、aptXやLDACなどのコーデックに対応することなどが明らかにされている。2017年第2四半期の出荷予定、そして299ドルの予価が公表されている
MQAの発明者であり、個人的な交友も深いボブ・スチュアート氏との歓談で上機嫌の麻倉氏

麻倉氏:もう1つ、Auro3Dも見逃せません。これまで日本メーカーの動きはなかったのですが、今年はいよいよAVレシーバーを手がけるデノン、ヤマハ、パイオニアといったメジャーどころが、対応アンプをリリースする方向で動き出しました。Auro3Dそれ自体も大発展しており、映画でいうと全世界で650スクリーンが、製作では40スタジオが、作品数では202タイトルが対応しています。音楽で言うと400タイトルが収録を終えており、Blu-ray Discでは既に50タイトル以上がリリース済みです。

Auro3Dのレイヤーイメージ。底面・高面・天頂の3層構造が基本となる。また、従来のルームフォーマットだけでなく、ヘッドフォンフォーマットや車載フォーマットなどの開発も進められている

――Auro3Dの機材に関しては、たしかTRINNOV AUDIO(トリノフオーディオ)のプロ機材くらいしか対応製品がなかったので、これは歓迎すべきニュースです。

麻倉氏:特筆すべきはイマーシブサラウンド(オブジェクトオーディオのサラウンドフォーマット)で唯一、192kHzに対応するということです。同じイマーシブサラウンドでも、ドルビーアトモスとDTS:Xは実質48kHzまでです。

――映画が出自のアトモスやDTS:Xに対して、Auro3Dは音楽との親和性が高いフォーマットですね。ソフトに関しても音楽系のものが多いです。

麻倉氏:加えてAVレシーバー以外に、車載、ゲーム、スマホでもAuro3Dを展開するという新しい動きも見えてきています。MQAは今のところ従来的なチャンネルベースに徹していますが、こちらはオブジェクト音声のイマーシブサラウンド。どちらも今年に入って新しいオーディオが新しい展開をしていくという期待を膨らませてくれます。

デモルームのシステムはOPPO DigitalのプレーヤーとTRINNOV AUDIO(トリノフオーディオ)のハイエンド級サウンドプロセッサの組み合わせ。デノンやパイオニアといったブランドのAVアンプにデコーダーが搭載されれば、Auro3Dもぐんと身近になるだろう

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