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ソニー初のロボットプログラミング教材「KOOV」で学んでみた山本敦の「体当たりッ!スマート家電事始め」(2/4 ページ)

» 2017年02月19日 06時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 当初は磯津氏が所属していたソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の社内インキュベーションプログラムの一環としてスタートしたオーディオションに、磯津氏が応募してアイデアが採用されたことがきっかけとなり、KOOVの原型となるコンセプトが作られた。

「2012年の4月に、私が1人でプロジェクトを立ち上げて、企画を立てて社内などへの営業も1人でやってというハードな環境からスタートしました(笑)。やがて商品やサービスのかたちが定まってきたところで事業化のめどが立ち、2015年にソニー・グローバルエデュケーションが設立されました。KOOVとしての商品コンセプトを披露した最初のタイミングは2016年でした。それからおよそ1年をかけて商品の発売に辿り着いたというわけです」(磯津氏)

KOOVで製作した機関車。黒い線を書けばセンサーが感知し、その線をなぞって走り出す

 実はKOOVを商品化するまでの間に、磯津氏は学校向けの“算数コンテスト”のオンラインプラットフォームを立ち上げている。コンテストは今も開催されており、中国やアメリカ、シンガポールにマレーシア、インドなど世界各国から挑戦者が集うイベントとして活況を呈している。ここから得られたノウハウが、KOOVのプログラミング学習のプログラム設計の土台につながっているのだと磯津氏は説明した。これが具体的にどのようなものなのか、後ほどハンドリングの段で紹介しよう。

 その後、KOOVをコンシューマー製品として形にするまでの苦労についても、磯津氏にうかがってみた。「ブロックの商品化については学習教材のリーディングカンパニーであるアーテックの協力も仰ぎました。生産面のフォローはグループの企業であるソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズの力を借りています。プロダクトデザインはソニー本社のデザイナーが手がけた自信作です。特に難しかったことは、とても厳しいグローバル基準に基づいているソニーの品質管理基準をクリアすることでした。子どものユーザーに使っていただく教材なので、安全性については最優先事項の1つとして取り組んできました」(磯津氏)

 KOOVのバックエンドには、先述したように磯津氏が立ち上げてきたインターネットとクラウドサービスを活用したオンライン学習プラットフォームの仕組みが走っていて、世界中の各地域に合わせたサービスをスケーラブルに展開できることが強みだ。そして最大の特長は「1人で学べるプログラミング教材」であることだ。その価値を磯津氏がこのように説いている。

 「KOOVは1人で勉強できることを重視しながら、体験をデザインした教材です。プログラミング教育と一口にいっても、どんなものを提供するのがベストなのか悩みました。プログラミング教育の現場を見渡してみると、先生がプログラミングの仕方を教えるという学習スタイルを採用している教育機関は主流ではなく、一流の大学ほどプログラミングの方法を授業で教えるということはほとんどないということが見えてきます。プログラミングに関連する知識を学び、手元で実践する機会は子供や生徒の自宅や個人で過ごす時間の中であり、多くの生徒が集まる学校や塾などの場所ではディスカッションなど、課題を一緒に解決していくコミュニケーション力、チームワークを養うことがこれからの理想的なプログラミング学習のあり方とも唱えられています。KOOVはプログラミングのスキルを、使う方が個人で身に付けられる最適なツールにしたいと考えています。プログラミング的な思考にすぐ馴染めない方でも、自分のペースでじっくりと学べる教材であるところも特徴の1つです。もちろん、生徒にプログラミングを教える先生の方々にも使ってもらいたいですね」(磯津氏)

 フルボリュームの「KOOVアドバンスキット」が4万9880円(税別)、「KOOVスターターキット」もでも3万6880円(税別)という価格設定については、磯津氏も「色々と悩み抜いた」と振り返っている。だがもし、KOOVがこれから将来性有望といわれるロボットプログラミングの知識を、子どもが1人でも学べる体験型の教材であることと、その効果を正しくイメージできれば、子どもを塾や学校に通わせるよりもはるかにコスパの高い商品であることが理解できないだろうか。

 KOOVの発売後、ソニー・グローバルエデュケーションとしてはKOOVを自由に体験できるワークショップなどの機会を設けたり、学校や塾など教育機関にも導入を働きかけながらKOOVの魅力を広く伝えていく考えだ。海外展開も中国を皮切りにスタートする。「これから市場を立ち上げる日本国内と違って、既にある程度の大きなロボットプログラミング市場が確立している中国では他社の教材との競争にさらされることになり、売り方も変わってきます。ただ、いずれの場合も共通して言い切れるのは、KOOVの優位性は家庭用途をターゲットにしているので、アプリケーションが圧倒的に“使いやすい”ことだと自負しています。今後数年以内に、数千億のグローバル市場規模に成長すると見込まれているロボットプログラミング教材のリーディングブランドとして成長していきたい」と磯津氏は意気込みを語ってくれた。

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