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練り上げた4K画質――JVC「DLA-X770R」で実践する“美味しく足す”工夫(2/2 ページ)

» 2017年02月28日 16時24分 公開
[山本浩司ITmedia]
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「美味しく足す」工夫

 暗室環境にて、ゲイン1.0の100インチマットスクリーン(完全拡散タイプ)との組合せで、UHD BDの映画ソフトを何枚かチェックした。

 UHD BDを再生する場合、内部で一度フルHD解像度にダウンコンバートして、同社独自のe-shiftテクノロジーを用いて4K相当の画質で映像を表示するという仕組みになるが、本機はX750R以上に見た目の解像感は高くキリッとしていて、過度な輪郭強調のイヤらしさもあまり感じられない。なるほど、たいへんうまい絵づくりだ。

 黒の黒らしさ、漆黒の表現も深い。同時に見比べたわけではないが、こと黒の沈み込みに関しては、 350万円のDLA-Z1以上の魅力があるのではないかと思う。ここは手慣れた従来パネルを用いたアドバンテージなのではないだろうか。

画質チェックではお馴染みの「レヴェナント:蘇えりし者」。販売元は20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン。価格は7479円(税込)

 一方、「レヴェナント:蘇えりし者」の深夜の焚き火シーンなどを見ると、黒が沈み過ぎ、暗部階調の表現が犠牲になっているのでは? との印象もある。その点を同社エンジニアに指摘すると、いま米国で話題のコントラスト比100万:1を実現した超高画質映画館「DOLBY CINEMA」で「レヴェナント:蘇えりし者」を観たときの暗部再現に近づけるとこうなるんです、とのこと。ローライトの傾きをゆるやかに取り、暗部により多くのビットを割り当てられるHDR10のPQカーブの特性を考えると、この画調はちょっともったいないと思うが、もちろんそう考えるなら自分でピクチャートーンやブライトネスの微調整を行って、思い描く階調表現に近づけていけばいい話なのだが……。

 そのほか本機で画質調整を行っていて、これはいいと思ったのが低遅延モードの活用。先述したように本機には映像遅延が問題となるゲーム/PC用にこのモードを用意しているが、この設定で観るUHD BD映画ソフトの画質がたいへん素晴らしかった。すっきりとした透明感が味わえるというか、一層ヌケのよい画質になるのである。倍速回路をジャンプすることで、4K/24p(4:4:4/36bit)伝送が実現するメリットがその画質に反映されていることは間違いないだろう。

 今回は、先述したようにゲイン1.0のマットスクリーンを用いて画質をチェックしたが、HDRらしい白ピークの伸びと明快なコントラスト感を実現したいのなら、幕面にビーズやパールなどをコーティングしたハイゲイン・スクリーンを選ぶのがコツ。HDRコンテンツに対してはスクリーン側で「何も足さない、何も引かない」のではなく、「美味しく足す」工夫が求められる。

 また、スクリーン・サイズを大きくすれば大きくするほど、幕面の明るさは落ちていくことになるので、サイズを欲張り過ぎないのも重要なポイント。本機との組合せを前提にすれば、100インチくらいがもっとも相応しいサイズだろう。

 ちょっとした工夫を加えることで、プロジェクターの反射映像でもHDRらしい明快でクリアな画質が楽しめる。そんなことが確信できた今回のDLA-X770Rとのひとときだった。

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