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元ソニーのSACD開発者が再び集結――SONOMAが作り出す「ハイレゾにぴったりのヘッドフォン」とは?(2/2 ページ)

» 2017年05月02日 06時00分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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目指す音は変わらない

 HPELに可能性を感じたKawakami氏は、それを搭載したヘッドフォンを世に送り出すため、SACD時代の仲間たちに声をかける。2016年にSONOMA Acousticsを設立。約1年をかけて製品第1号の「Model 1」(M1)を完成させた。

「HPEL」の振動板を持つDan Anagnos氏

 静電式ヘッドフォンは非常に高い電圧が必要になるため専用のヘッドフォンアンプと組み合わせるのが一般的で、M1も同様のパッケージングを採用している。一方でHPELを収めたヘッドフォン部は、構造がシンプルという特徴を生かし、マグネシウム製のハウジングを採用して軽量化。シープ・レザーのイヤーパッドを組み合わせ、ケーブルを除けば約300gという“普通のヘッドフォン並み”の重量を実現した。

 逆にヘッドフォンアンプは重量級だ。航空機などにも使われる頑強なアルミ素材を用いたシャーシに、DACやディスクリート設計のA級アンプユニットを含め「すべてを最短距離で結ぶ、緻密(ちみつ)なレイアウトの基板」を収めた。

整然とチップが並ぶ基板。デジタル入力はUSBと同軸デジタル(S-PDIF)

 DACチップはESS Technologyの“SABRE”。型番は明らかにしていないが、「32bitのリファレンスグレードDACを左右独立で2基搭載した」という。USB入力は最大384kHz/32bitのリニアPCMおよびDSD 5.6MHz(DoP)をサポート。同軸デジタル入力も192kHz/24bitまでのPCMを受け入れる。

一見、ACアダプターに見える電源部も実はカスタム設計。オーディオ帯域を低ノイズにするため、固定周波数発信タイプを採用した。DC電源コネクターはロック式

 M1の価格は5000USドルと高価だが、静電駆動型ヘッドフォンとしては特別高価というわけではない。日本ではエミライが取り扱い、5月中旬に発売予定だ。国内ではオープン価格となるが、60万円台前半になる見込み。


 光ディスクに2.8MHzのDSD音源を収録したSACDは、現在のハイレゾ音源の“源流”といえる。SACDはビジネス的に成功したとは言えず、SONOMAのメンバーやDan Anagnos氏はその流れに翻弄されたのかもしれない。しかし10年以上の月日が経過し、新しい挑戦を始めた今でも彼らは“同じゴール”を目指していた。

 「必要なのは、音源をそのまま再現する力だ。分解能が高く、色づけしない透明な音は、音楽に感情移入するために必要な要素。それはDSDでも、SACDでも、ヘッドフォンでも変わらない」とKawakami氏。「SACDの時はストレスが多くて大変だったけれど、今は半分遊びのように楽しんでいるよ」と笑った。

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