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KEFが仕掛けた価格破壊、新「Qシリーズ」の実力は?潮晴男の「旬感オーディオ」(2/3 ページ)

» 2017年05月10日 16時09分 公開
[潮晴男ITmedia]

 フロアスタンディングのモデルについても、旧シリーズではUni-Qドライバーとウーファーそれぞれにパッシブラジエーターがあてがわれていたが、新シリーズではUni-Qドライバーは密閉型のエンクロージャーで隔離され、ウーファーの上下にパッシブラジエーターを配置する新しいレイアウトを取っている。さらにユニット配列が変わったことで、エンクロージャー内部の構造も刷新され、より強固な作りになった。

「Q750」の内部構造。Uni-Qドライバー収容部分を密閉構造としてミッドレンジコーンを負荷を軽減した

 センタースピーカー用としてリリースされたQ650は実にユニークな形状のエンクロージャーを採用している。中央部に同軸型のUni-Qドライバーを配し、左がパッシブラジエーター、右がウーファーという特殊な構成になっているが、エンクロージャー内部はUni-Qユニットを収納した密閉型ボックスの後ろをつなげることで、ウーファーの最適な動作が行えるよう工夫を凝らしたのである。

 ブックシェルフ型のQ-150は、130mm口径のUni-Qドライバーを採用するコンパクトなスピーカーだが、このサイズのモデルとしては別格の表現力を備えているといってもいいだろう。低域にかけてはいくぶん甘くなるものの詰まった感じはないし、スムーズなボーカルを聴かせる。Q-350はUni-Qドライバーの口径が165mmまで大きくなることで音に余裕が生まれる。感心したのはトゥブ・ローのアルバム「レディ・ウッド」のような電子楽器を多用したオルタナティブ音楽にもびくともせずパワフルなサウンドを聴かせてくれることだ。コンパクトだからといって高を括っているとこの低音域が濁るので、スタンド選びとセッティングには心して臨みたい。

ブックシェルフ型の「Q-150」

 フロアスタンディングのQ-550は130mm口径のUni-Qドライバーに同じく130mm口径のウーファーと2基のパッシブラジエーターで構成されるので、ブックシェルフ型のモデルに比べるとボーカルのニュアンスも細やかになるし溌剌(はつらつ)とした感じが生まれる。気張った感じがなくさりとて気負った感じもない。いい意味で耳によく馴染むし安心して聴ける点がうれしい。

 Q-750はブックシェルフ型のQ-350に同サイズのウーファーと2基のパッシブラジエーターを加えた構成だが、私は今回の新製品を試聴して、このモデルが一番バランスのとれたサウンドを再現すると思った。スケール感も十分描き出すし、結構細やかな部分にまで目配せした表現力を備えている。ボーカルソフトはいずれも声がリアルでトゥブ・ローはスピーカーの外にまで作り込まれた空間が広がる。マイケル・スターン指揮カンザスシティ・オーケストラの演奏するサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン」のSACDでも、バランスの良い音が聴けるし、弦楽器のニュアンスも実に豊か。収録されたカンザスシティのヘルツベルク・ホールの響きも良く捉える。

ニューQシリーズの中で一番大きな「Q-950」

 Q-950は、ニューQシリーズの中で一番の大型モデルだ。搭載されている同軸型のUni-Qドライバーもウーファーも2基のパッシブラジエーターもシリーズの中で一番大きい200mm口径なので、中低域にかけての量感が増す感じである。サン=サーンスのパイプオルガンは低域がゆったりとしてたくましい。いくぶん太い感じがしなくもないが、ボーカルソフトではこの堂々とした振る舞いが温かみのあるサウンドを耳元へ届ける。パッシブラジエーターの動作もきびきびしているので大味な感じはなかった。

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