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世界一固いアイスを削れ! あの「あずきバー」に挑んだ無謀な玩具メーカー(2/2 ページ)

» 2017年05月22日 13時43分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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ゴールが見えた!

 あずきバーの固さに加え、アイスには付きもののスティックの処理も大きな課題だった。このため開発陣は、思い切ってスティックを抜くことを検討する。「削るのも難しいのに、スティックを引き抜くなんてもっとハードルが高いのでは?」。社内でも疑問の声が上がる。

 7種類の試作機を経て、“てこの原理”を利用して力をかけずにスティックを引き抜く試作機が完成した。「ぬけるんバー」と名付けた。

「ぬけるんバー」

 一方、本体の試作5号機はスティックを抜いた状態のあずきバーを前提に試作した。ハンドルのギア比を変えた5種類のサンプルを作成してバランスを検証。ギア比「1:1.76」という数字を導き出す。

 ゴールが見えた。

試作5号機

 最終的な仕様がまとまり、次のステップとして製品自体をコンパクトにするため余分な部品を削減する作業に入る。試作6号機は、あずきバーの固さに負けないようハンドル部分にクラッチを内蔵。さらにあずきバーを最後まで削るための“押さえ”のパーツも改良した。

 再び井村屋をたずねた。

 初めて、あずきバーを1本、すべて削ることに成功した。

 井村屋の担当者の目の前で。

 9カ月間の戦いが決着した瞬間だった。

初めてあずきバー1本をすべて削ることに成功した試作6号機

 井村屋の担当者は振り返る。「まさか本当に完成させるとは思っていなかった。あずきバーの場合、その固さに加え、粒部分とあん部分の物性の違いもあり、ただ単に削ろうとしても大変難しい。試作機を何度も何度も作って挑戦する姿にハラハラドキドキしていた」

 しかも、完成したかき氷はおいしかった。

 「ふわっと柔らかい食感にまず驚き、その後ふんわりとあずきの味わいが広がって、新しいおいしさ。いつものあずきバーも美味しいけれど、あずきバーかき氷も格別の美味しさ」と井村屋も太鼓判を押す。

「おかしなかき氷 井村屋あずきバー」
調理例

 何度も振り出しに戻ったプロジェクトが完了し、6月29日に「おかしなかき氷 井村屋あずきバー」が全国の雑貨店や量販店で発売される。価格は2800円(税別)。あの「ぬけるんバー」も付属する。

 「始めは挑戦状を突きつけた形だったが、井村屋さんの協力のもと、あずきバーの新しい楽しみ方を生み出すことに成功した」とタカラトミーアーツ。「今後は両社でタッグを組み、この新しい美味しさを広めていきたい」

「おかしなかき氷 井村屋あずきバー」。価格は2800円(税別)
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