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4K/HDRプロジェクターのリファレンスにJVC「DLA-Z1」を選んだ理由――麻倉シアター大改革(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2017年06月05日 18時13分 公開
[天野透ITmedia]

麻倉氏:そして時代は4Kへと移ります。ここでの比較対象はソニーとJVCですが、JVCは画素ずらしの「e-shiftテクノロジー」で4Kに挑んでいました。後で語るように、技術は面白いのですが、物理的にはどうしても絵がいまひとつです。画素ずらしはいわば脳の機能を使った“実質4K”で、どうしてもS/Nが落ちてフォーカス感が粗くなるという壁を突き崩すことはできませんでした。そのためこれまではリファレンスとしてJVCを選ぶのは厳しかったのです。ということで定番はソニーの「VPL-VW1000ES」、後に「VPL-VW1100ES」になって4K入力が付きました。

民生用初のネイティブ4Kプロジェクター「VPL-VW1000ES」。当時はまだ手軽に再生できる4Kコンテンツがなかったため、2Kのアップコンバートが主な映像だった。画質はQUALIA004の血統を受け継ぐもの

麻倉氏:最初は4Kコンテンツがなかったため、アップコンバートの力が重要で、2011年あたりから2013年あたりまでの“4K前夜”は、テレビもプロジェクターも2Kからのアップコンバートがメインでした。2Kのプロジェクターで見る2Kコンテンツよりも、同じ2Kであっても超解像アプコンを入れた方が、視えないところまで見えてきて、Blu-ray Discを見た時に、今まで感じなかった情報性や階調性、鮮やかさがありましたね。過渡期ですが価値あるものだったと思います。

 このような流れを経て現代のHDRへと至ります。私としても対応しないという選択肢は当然ありません。

 これまではSDからHD、4Kといった解像度主義、つまり“面としての情報量”を増やしてきた。一方で現代は4Kや8KにHDRが付くことで深部の解像度が出てきて、光の情報量が増えるという方向へシフトしています。面の解像度と色深度の解像度が要求される、そういう時代になったわけです。

――映像だけでなく、情報量的にも3次元にパラダイムシフトしたということですね

麻倉氏:その通り。1920×1080ピクセルとかいうのは平面的で、画素の1つ1つに光の階調性や情報量が増えてくるのが、現代のHDRです。

 さて、HDRのプロジェクターは何を選ぶか。昨年後半あたりからずっと考えていました。候補はソニーの「VPL-VW5000」と、JVCのDLA-Z1です。実は一昨年に見た開発中のVPL-VW5000のファーストインプレッションは「確かにすごく明るいね。でも明るいだけの半業務用で、情報的かな」というものでした。ハキハキしているものの、若干粗く感じたのです。ところが半年後のインプレッションは一転します。乱暴だった明るさに階調感とコントラストに節度が出てきて、同時に質感がぐっと良くなり、色の見え方、絵の見え方でデジタル的ではないアナログ的な匂いを感じました。

今のソニーのフラッグシップ機「VPL-VW5000」。コンテツに対して正確な絵を出すことに重点を置いて設計された。HDRに対応することが至上命令として与えられたモデル

麻倉氏:なぜだろうと思った時、はたと気づいたのが発光原理の部分です。近年は広色域をカバーするためにレーザーランプを使いますが、VPL-VW5000は青色だけがレーザーで、残り2色は蛍光体を光で叩いて出た色を合成します。要するにこれは懐かしいバルコの3管式CRTと同じ発色の理屈で、アナログ的な深みと階調感が出るんです。

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