麻倉氏:家庭向けディスプレイの民生品としては、シャープの70インチ8Kがありました。まだまだ高価ながら、従来の85インチと比べれば随分とマシな価格になってきました。
――とはいってもまだ高級車くらいの価格ですから、おいそれと買えるものではないですか。まあ従来の1000万円オーバーと比べると一桁落ちたのは確かに大きな前進です
麻倉氏:シャープの意見としては、アレをきっかけに開発を進め、2018年12月の本放送前にはアフォーダブルなものを作りたいとのことです。もちろんチューナー内蔵モデルで。そういう意味では送りから上映までの大きな流れが出てきていたといえます。家電量販店に8Kの文字が踊る日もそう遠くはない、でしょうか。画質も上がっています。以前の85インチは、暗部階調にくせがありましたが、新しい70型はかなり素直な特性になりました。
麻倉氏:ここからはカメラの話をしましょう。制作セクションには日立国際電気のフルスペックRGB 3板カメラと、アストロデザインのコンパクト単板カメラがありました。この中でアストロデザインの新製品が“インターライン方式”という面白い撮像方式をとっていました。
――インターライン? インターレース方式とは別物なんでしょうか
麻倉氏:走査線をひとつおきに走らせることで、帯域が狭い中で情報を伝えるという方式です。大きな特徴は映像信号を加算せずに出力段の信号処理で補間するということで、A画面とB画面を加算して画を出すインターレースとはちょっと異なります。フレームを間引くことでデータ量を減らしており、フルスペックではないながらもコンパクトなデュアルグリーン8Kの映像が撮れるのが利点です。
展示スペースを眺めてみると、フルスペックの大型カメラからインターラインの小型カメラまで、ラインアップが随分と豊かになったと感じます。どのカメラも8KとHDRという高色域を備えていて、放送に耐えうる映像クオリティーを出すのが良いですね。各家庭に届けるのは来年からの高度BS実用放送で、展示はそれをB2Bの視点から見たものでした。
麻倉氏:これらのカメラは撮影と録画が別筐体(きょうたい)の業務モデル、いわゆるカメラヘッドですが、今回の技研公開には一体化した8Kカムコーダーに関する展示もありました。
――民生機は一般的にこちらですね。カメラにSDスロットなどの記録媒体が内蔵されているものというと、一般の方も分かりやすいと思います。
麻倉氏:南極のバクテリアをテーマにNHKが「アンタルクティカ」を作った時に、米REDの小型8Kカメラ「HELIUM」を使いました。日本は小型カメラで遅れを取っていた格好ですが、今回8Kカムコーダーのプロトタイプが提案されていました。内容はJVCの4Kカムコーダーのレコーダー部をそのまま使って4連結させるという力技です。現状はSDカードレコーダー部とカメラヘッド部が分離していて、各々の技術を確立している途中です。
性能的には各パート100分撮影可能で、現状はAVC圧縮ですが、コーデックをHEVCにすると倍は撮影できるでしょう。すぐ出てくるわけではないですが、近い将来に一体型に進化する見込みです。8Kはまだまだ特別な存在でカメラも大柄ですが、今の4Kと同じような手軽さでできれば「同じ撮るなら8K撮影で、後から4Kにダウンコンバートしよう」という流れになることが想像できますね。
今回は展示されませんでしたが、技研と日本メーカーとのコラボで、次世代の8Kカメラが現在開発中ということです。それも楽しみですね。
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