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シャープ復活の「IFA 2017」 強いリーダーシップが市場を牽引する(3/4 ページ)

» 2017年10月10日 06時00分 公開
[天野透ITmedia]

麻倉氏:シャープは以前からIFAの大手サポートメーカーでしたが、経営危機が表面化して2013〜2014年は撤退していました。2015年にはスロバキアのUMCがブランド使用権を獲得し、この年は再びIFAに戻ってきています。

 ですが2015年はUMC製品にペタペタとバッジを貼り付けただけのような、「なんだかなぁ」という“なんちゃってシャープ”なブースでした。これが2016年は一転、ブース登録上はUMCでありながらあらゆる場所にシャープロゴがあふれていて、“まるでシャープ”なブースになっていました。前年との大きな違いは単にブランドを出すだけではなく、IGZOをはじめとした技術展示もあった点です。

 ヨーロッパでのブランド使用権はUMCにありましたが、単なるブランディングにとどまらず、シャープが協力して製品や技術を供給するという方向になっていました。これが大きな流れとなり、世界的に縮小傾向だったシャープが息を吹き返しました。ヨーロッパにおいては、シャープがUMCを逆買収するに至っています。

――ブランドを単なるバッジと勘違いしているうちは出てこない、大きな転換ですね。展示を見ても名前が背負う精神性が出ていたように思います

麻倉氏:これは親会社となったホンハイによる前向き効果が非常に大きく影響しています。ホンハイとしてはシャープを液晶の会社として、再びブランドを輝かせたいという思いが非常に強いのです。資金が無かった従来のシャーププロパーでは縮小の一途を辿っていましたが、ホンハイによって逆に拡大へ転じ、元気になってきました。日本ブランドが新しい次元に入ってきた、その象徴がシャープなのです。今年は特に“シャープとしてのプレスカンファレンス”がとても印象的でした。

プレスカンファレンスの開演を待つ登壇者。奥からUMC社マーケティング&セールス担当ヴァイスプレジデントのサッシャー・ランゲ氏、シャープ社長の戴正呉(たい・せいご)氏、シャープ副社長・AIoT戦略推進室長・欧州代表の石田佳久氏

――泰社長が冒頭に登壇して「Sharp is back.」と述べた後、さらに力強く「Sharp is back!」と重ねて宣言し、会場から大きな拍手が沸きましたね。僕にはメディアだけでなく、社員に向けても復活を印象付けようと激励したように見えました。「我々はここまで戻ってこられたんだぞ!」と

戴社長の登壇時間はわずか1分。ただ一言「Sharp is back!」という鮮烈極まるメッセージを内外に宣言し、カンファレンスの仔細を石田氏に託した

麻倉氏:シャープは早川電機以前からシャーペンを作り(これがブランド名の発端になった)、テレビの国産化や電子レンジ、液晶など、数々の技術提案をしてきたクリエイティブな会社です。そんなシャープですが、今年は“他と違う方向”を鮮明に打ち出してきたのがとても面白いですね。

 近年のテレビはコモディティ化の一途を辿っています。デバイスはOLED、解像度は4K、そしてHDR。どこかがやれば各メーカーが一斉に追随し、結果としてだいたい同じような性能のモデルが並びます。ところがシャープは「将来は分からないが、当面は液晶!」「よそが4Kならばウチは8Kだ!!」と、思い切った舵取りをしてきました。昔から「創意のシャープ」と言われていますが、独自路線でもさらに“シャープに尖った方向”へ向いています。

 その中核技術は8Kです。ヨーロッパでは市場がほぼ未開拓状態の今「8Kエコシステム」と称して、コンテンツクリエイションからディストリビューション、そしてデバイスという、エンドトゥーエンドのトータルなビジネスモデルを提案してきました。これは8Kをやっていない他社ではできない提案です。他社はテレビ単体を良くすることはできます。が、最上流のコンテンツから最下流のテレビまでトータルで8Kをやるというのはシャープだけ。これは同社の新しい方向です。

 なぜ、このような方針を取ったのでしょうか?

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