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2017年の有機ELテレビを総括、そして初の8K対応液晶テレビの実力は?(2/3 ページ)

» 2017年11月14日 12時57分 公開
[山本浩司ITmedia]

液晶テレビの注目モデルと8K対応テレビ

 そんな目でこの秋の大画面液晶テレビの新製品をチェックしてみて、筆者の興味を引いた製品が2つある。1つがパナソニックの「EX850」シリーズ、そしてもう1つがシャープの8K対応機「LC-70X500」である。

「EX850」シリーズは49V型、55V型、60V型の3サイズ(写真は60V型)

 60V/55V/49V型の3サイズ展開となるEX850は、同社歴代最高クラスの高輝度タイプ(1000nit相当)のIPSパネルを採用し、リビングルーム・ユースにふわしい高画質はどうあるべきかを真剣に考え抜いたモデルといっていいだろう。とくに感心したのは、夜間のリビングの照度環境(100〜200lx)に最適化した「シネマ」モードの画質のよさ。エッジライト・タイプ(55/60 型は上下エッジ)ながらローカルディミングとエリアコントロールの掛け合わせがとてもうまく働いていて、(全暗環境でなければ)映画が十分楽しめるコントラスト感が得られる印象だ。

 とくに感心したのは、APL (平均輝度レベル)の低い場面で、ピーク輝度の高いオブジェクトが表示されたときに白当たりすることなく、明部の階調をうまく表現するところだ。しかも、VAパネルタイプのように視野角が極端に狭いわけではないので、ソファに横並びに家族が座るリビング・ユースでも安心してお勧めできるのである。

 それからEX850をチェックしてみてもう1つ驚かされたのが、その音の良さ。スピーカーは画面両脇にステレオ配置され、安定したファントムセンターが得られる点をまず評価したいが、音質自体もよく練り上げられている。ユニット構成は3Wayで、ドームツイーターを2基のミッドレンジドライバーで挟み込み、画面下部にL/R独立のウーファーユニットが配置される構成だ。

EX850のスピーカー構成

 この音質改善作戦は、テクニクスのエンジニアとの協業によるものだそうで、コンデンサーなどの音響部品は一緒に音を聴きながら選定していったのだという。また、最終的な音質チューニングにおいて、ベルリン・フィルのトーンマイスター兼レコーディング・プロデューサーのクリストフ・フランケ氏の協力を仰いだというのも興味深い。

 もっとも「テレビの音質改善にベルリン・フィルのフランケ? え〜意味あんの?」というのが、この話を聞いたときの筆者の正直な感想だったが、実際にフランケ氏の知見が活かされたという「ミュージック」モードの音を聞いて驚いた。もちろん“テレビの音”という枠の中での話だが、本格的なエネルギーバランスとソノリティの豊かさ、スムーズな音場の広がりを訴求し、オーケストラの実況中継を観ても違和感を抱かせないのである。おそらくこの10年間に発売された製品の中で1、2を争う音の良さを実感させるテレビといっていいだろう。

 ちなみに今年に入ってからパナソニックはベルリン・フィルと様々な協業関係を築いており、ベルリン・フィルの「デジタルコンサートホール」(映像配信サービス)の4K HDR撮影、編集、配信システムにパナソニックのプロ用機材が用いられるようになっている。その4K HDRコンサート映像サービスについては、EX850シリーズをはじめとするパナソニック製テレビ、Blu-ray Discレコーダーに対して一定期間独占配信されるという。個人的にはとても興味深い試みだ。

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