攻めの経営によって一頃の低迷から脱しつつあるシャープ。この12月から発売するのが、 100万円の70型8K対応液晶テレビ「LC-70X500」だ。2018年12月開始予定の8K実用放送に向けて、いちはやく製品化した。
「いまこの時点で8K対応テレビを買う意義があるのか?」という問いに対して、明確にイエス、ノーを断じることは難しいが、実際に本機をチェックして個人的に感じたことをここでは記しておきたい。
現状このテレビを入手して何を観るかといえば(8K試験放送が見られないわけではないが)、地デジやBS、Blu-ray Disc、Ultra HD Blu-ray、ネット系配信コンテンツということになるだろう。すなわちHD、フルHD、4K解像度のコンテンツを本機側で8Kアップコンバートして見ることになる。地デジなどかなり高次のアップコンが必要になるわけだが、実際にその画質をチェックして8Kディスプレイで見る利点は確かにあると実感した。
フルHDの16倍、約3300万画素(7680 ×4320ピクセル)という細かさによって表示されることでノイズの粒子が微細化し、一層見通しの良い映像が得られるのである。UHD Blu-rayの「ラ・ラ・ランド」など、フィルムグレインがシーンにおいては目立ちすぎて違和感を抱くことがあったが、本機で見るとノイズが微細化されることで、非常にスムーズな画調に感じられる。そう、サンプリング周波数を上げていくと、音調がどんどんナチュラルに感じられるハイレゾ音楽ファイルに共通する魅力を実感させるのである。
加えて、試験放送などで用いられるNHKが撮りためた8Kアーカイブ映像の魅力は圧倒的だ。ルーブル美術館の名画を多角的に撮った映像など、肉眼を超える視覚の驚きに満ちていて、今すぐこのまま自分の部屋にもって帰りたいと興奮する自分を発見したりもする。
また8K相当の高解像度デジタルカメラ・ユーザーにとっても、本機はそのモニターとして実に有用だ。8K静止画を4Kにダウンコンバートして映し出した4K有機ELテレビと比較してみたが、ディティールがふっと浮かび上がってくるナチュラルな質感の良さで本機の圧勝。8K静止画モニターとして、本機に勝る家庭用テレビが存在しないのは間違いない事実だろう。
ただし、本機の弱点として指摘しなければならないのは、やはり視野角の狭さと動画応答性の不安定さだ。この2点に関しては、現状の4K液晶テレビから改善されているわけではない。とくに8K高精細映像の魅力に捕らわれて画面ににじり寄っていけばいくほど、少し頭を振っただけで色合いがシフトしたりコントラスト感が損なわれる視野角の狭さはいかんともし難いとの印象を持った。
今年1月の「CES 2017」で8K/60pと4K/120pをサポートするHDMI2.1規格が発表されたが、本機はこの規格に準拠していない。そのため8Kコンテンツを見る場合は現状のHDMI2.0規格のケーブルを4本用いることになる。来年後半にシャープから登場する予定の8Kチューナーには、当然ながらHDMI2.0の出力端子が4つ用意されるという。
LC-70X500 、今買い時のテレビかと問われれば一瞬躊躇(ちゅうちょ)してしまうけれど、8K&HDR(ハイブリッドログガンマ)で収録されたルーブル美術館のアーカイブ映像の超絶画質が、今なお瞼の裏にちらついているのも事実。こんなすごい画質が毎日自室で楽しめるのなら……という思いも捨てきれないのだった。
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