さまざまなサービスが乗り入れる駅としてさらなる充実を TFM担当者に聞くエニーミュージックへの希望
エニーミュージックへ「FMオンエア情報」を提供するのがTOKYO FM。同社は見えるラジオやデジタル放送など、新たな音楽の楽しみ方を積極的にユーザーへ提供している。同社執行役員の林屋章氏にエニーミュージックへの希望を聞いた。

「FM放送をより楽しくする」放送以外の情報発信にも積極的に取り組むTFM

 TOKYO FMの開局は1970年。ラジオ局として30年余の歴史を持つが、同社は1992年に衛星放送、1995年には見えるラジオ、2003年にはデジタル放送など、FM放送以外での情報発信についても積極的に取り組んでいる。

 「10数年前からWebページを立ち上げてインターネットを利用した情報提供を行っていますし、見えるラジオという形での情報提供も行っています。より音声放送を楽しんでもらおうという取り組みは以前から行っているのです」

 TOKYO FM執行役員の林屋章氏は、エニーミュージックへの参加も、これまでに同社が「FM放送をより楽しくする」という考えのもと、多種多彩な取り組みを積極的に行ってきたということの流れだと述べる。また、これまでの取り組みは、様々な形のノウハウとして、エニーミュージックへの参加にも活用されている。

 「見えるラジオで情報を発信してきたことは、限られたトラフィックの中で、どの時間にどのような形で情報を流せばいいのかというノウハウを蓄積する意味で、貴重な経験となっています。エニーミュージックから要望のあった楽曲情報の配信については、JFN(ジャパンFMネットワーク)38局の発信する情報を電子キューシートの情報をまとめていますが、そうした対応も、これまでの蓄積があったからこそ対応できたのです」

 「見えるラジオが既にあるのだから、機器を外付けすれば楽曲情報だって見られるじゃないかとも言われましたが、インターネットが普及し、通信でデータを取りに行くという方法のメリットが多く存在することも分かっていました。私たちもインターネットを通じて情報を配信するというシステムの準備を進めていたので、エニーミュージックのような新しいサービスへの対応もスムーズに進んだのです」

 同社が「FM放送をより楽しくする」という考えにもとづき、多方面へ積極的な展開を行っていたことと、時代の流れがマッチした結果の1つがエニーミュージックで利用できるオンエア情報というわけだ。

「音楽に触れる楽しさ」を今風に具現化したものがエニーミュージック

 放送が聴ける・楽曲情報を見ることができるだけでなく、「リッピング」という機能でCD販売やダウンロード購入とも密接に関係するエニーミュージックの「FMオンエア情報」。

 これは複数のサービスを連携させるというエニーミュージックならではの利用法だが、「話を聞いた当初はサービスを体験できる実機があるわけでもなく、どういったものか、掴み切れていませんでした」と林屋氏は当時を振り返る。

 「ユーザーからのニーズがあるのかな、というのが率直な感想でした。最初に話を聞いた時にはCD販売やダウンロード購入との連係機能がどのようなものかも知りませんでしたので。ただ、その後に各種サービスとの連動や、国内を代表するオーディオメーカーも力を入れていると知り、音楽を届ける道具としてイケるんじゃないかなと思いを改めました」

 エニーミュージックが現在のサービス構想を立ち上げたのは約2年前。関係者の尽力もあって現在の形ができあがったが、やはり構想の立ち上げ当初は、“体験してみないと理解しにくい”という点が、同社にも一抹の不安を与えていたようだ。

 しかし、各種サービスを有機的に連動させたサービスが提供できるようになった現在、林屋氏としてもエニーミュージックの提案する“音楽の楽しみ方”に共感を覚え、期待している。

 「音楽というものは、触ったりオモチャにする感覚から親しみが深まると思うんです。FM放送では以前から、ユーザーが番組を録音・編集してテープを作ったり、そうして作ったテープを聞いて気に入った曲を買いに行ったりと、音楽を触ることで感じることのできる喜びを提供できていたと思いまです。エニーミュージックは、こうした“音楽に触れる楽しさ”を今風に具現化したものでしょう」

 「CDを注文したり、音楽をダウンロードすることはPCでもできることですし、放送中の曲情報も、Tokyo FM各局ともWebページで発信しています。それをリモコン一つで集中して操作できる形にまとめ上げたところが素晴らしいですね」

 林屋氏は、これまでも音楽好きが親しんできた“音楽に触れる楽しさ”に、インターネットという要素をプラスして具現化したことにエニーミュージックの新しさがある、と評価する。

さまざまなサービスが相互乗り入れしてこそ魅力が高まるだろう

 現在のところ、放送局からエニーミュージックへ配信されているのは番組名と流れている楽曲名の情報のみだが、「ゆくゆくはそのアーティストの公演情報や次回のゲストなど、放送局からの関連インフォメーションも配信できることを期待しています」と林屋氏は期待を述べる。

 「それに、コンサートの特別電話予約受付や次に放送される番組の紹介ですね。もう少し配信できる文字情報の量が多くできるならば、番組ディレクターのおススメするアーティスト・楽曲の情報なども伝えられます」

 林屋氏は、「情報を追加するとなると、コスト面での問題があるのでどこかで合理的な方法を考えなくてはいけないでしょう」としながらも、将来的には、映像配信も含めてそうしたFM放送に対しての“さらなるプラス”をエニーミュージックで提供することができればという。

 映像での情報配信が実現すれば、アーティストや楽曲をデータベースと連動させて、Aというアーティストがラジオに出演した場合には、エニーミュージックの画面上に最近リリースしたアルバムやビデオクリップ、関連する他のミュージシャンの情報を表示するといったことが想定される。

 「エニーミュージックの良いところは、流れている曲を聴いたり、その曲情報を見ることによって、これまで触れる機会のなかった音楽に触れることができる点ではないでしょうか。音楽に関しての頭の中のネットワークが、エニーミュージックを利用したネットワークに触れているうちに、漫然としたものではなくて、整理されたものになると思うんです」

 「エニーミュージックは一つの駅みたいなもので、私たちは情報を載せて運ぶ列車みたいなものです。今後、いろいろな情報を乗せた列車がエニーミュージックという駅を利用すれば、乗降客も増えるでしょう。一つの列車、サービスだけが独占してしまうと利用者から見れば面白く感じなくなってしまうので、その点では要注意ですね」

 さまざまなサービスの相互乗り入れこそが、エニーミュージックの最大の魅力。たくさんの情報が行き来することで、よりサービス全体が魅力的なものになる。林屋氏の発言は、「音楽ダウンロード」+「CDショップ」+「FMオンエア情報」の3つが複合しているエニーミュージックの魅力と今後の方向性を示唆しているとも言える。

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渡邊宏,ITmedia]