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自発光ならではのコントラスト、LGエレの有機ELテレビ「65EG9600」を試す山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

パナソニックのプラズマテレビ事業撤退で家庭用自発光ディスプレイの灯は消えた。そこに一石を投じたのが、韓国LGエレクトロニクスのOLED(有機EL)テレビ。液晶タイプに比べて値段こそ高いが、自発光タイプならではのコントラストのしっかりとした高精細映像で筆者を魅了した。

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 2014年3月末でパナソニックがプラズマテレビ事業から完全撤退、家庭用自発光ディスプレイの灯は消え、それから1年半あまり大画面テレビは液晶タイプ一色となっていった。

 そこに一石を投じたのが、韓国LGエレクトロニクスのOLED(有機EL)テレビ、「EG9600」シリーズだ。今年の春に4Kタイプの55V型が、そして夏に65V型が登場したが、この65V型4Kモデル「65EG9600」の出来がとてもよく、液晶タイプに比べて値段こそ高いが、自発光タイプならではのコントラストのしっかりとした高精細映像で筆者を魅了した。


今年7月に発売された65V型4Kモデル「65EG9600」。価格はオープンプライスで、実売予想価格は100万円前後

 次世代ディスプレイの本命と10年ほど前から期待された有機ELだが、大画面化・量産化の壁を乗り越えることができず、日本を中心とする多くのメーカーがパネル製造から撤退していった。そんな状況下、WRGB方式という独自路線を採ったLGディスプレイの有機ELが着実に大画面化・量産化を果たし、2015年に日本市場で4Kタイプのローンチに成功したわけだ。

 WRGB方式というのは、ホワイト系単色有機ELパネルにRGBに白を加えたフィルター(カラーリファイナー)をピクセルごとにかぶせてフルカラーを得る手法。製造がきわめて難しいRGB3原色発光方式ではなく、単色パネルのWRGB方式を採ったことでLGディスプレイは大画面化・量産化にメドをつけたわけだ。65V型は現在のところ世界最大サイズの有機ELパネルとなる。


WRGB方式は、ホワイト系単色有機ELパネルにRGBに白を加えたフィルター(カラーリファイナー)をピクセルごとにかぶせてフルカラーを得る手法(写真は3月の新製品発表会で撮影したもの)

 ちなみにLGディスプレイの幹部によると、55V型フルHDタイプの良品率(歩留り)はすでに80%を超え、4Kタイプも徐々にその数字に近づいているという。歩留り数%が常識だった有機ELの世界において、これは驚くべき数字だと業界関係者は声をそろえる。

 量産化への道筋をつけて供給態勢が整ったLGディスプレイは、日本や中国のテレビメーカーに盛んに有機ELパネルの採用を訴えており、既報の通り、パナソニックは欧州向けにWRGB方式のLGディスプレイ製パネルを用いた自社開発の有機ELテレビの発売を開始している。

 今のところ、日本市場向けの展開は考えていないと同社関係者は言うが、2008年暮れに発売されたパイオニア最後の「KURO」を使い続けている筆者のようなプラズマ・ファンの期待に応えて、パナソニックならではの高画質有機ELテレビをいち早く国内市場に投入すべきだろう。「日本市場ではパナソニック製液晶テレビがきちんと支持されているので、有機ELテレビを展開するつもりなし」などと寝言を言っている場合ではないのだ、まったく(などと書いていたら、2017年度をメドに日本市場に有機ELテレビ投入か? との予測報道が。果たして?)。

 さて、65EG9600に話を戻そう。先述の通り、本機は現在のところ世界最大サイズの4K有機ELテレビ。バックライトを必要としない有機ELは造形の自由度が高く、超薄化が可能。、本機は曲率5000R (半径5メートルの円弧)の緩やかなアールがつけられており、最薄部はわずか6ミリ 。あらゆる角度からためつすがめつ本機を眺めてみると、やはり液晶タイプとは違うスタイリッシュなかっこよさに心奪われてしまうのだった。


フレームも極細

 機能面の主な特徴は以下の通り。ダブルデジタルチューナー搭載(4K用スカパー!チューナーは非内蔵)、外付けHDDでの録画対応、4K/60p/HDCP2.2対応のHDMI端子3系統の装備、「NETFLIX 」「ひかりTV」などのインターネット経由の4Kコンテンツ対応など。

 ちなみに最新の情報によると、ファームウェアのアップデートによって11月30日以降、USBやLAN経由の信号に関してHDR(ハイダイナミックレンジ)信号に対応できるようになるという。残念ながらHDMI入力に関しては非対応とのことなので、来年発売予定のUltra HD Blu-ray DiscのHDR信号には対応できないが、NETFLIXやひかりTVなどインターネット経由のHDR信号には対応する仕様となる。

輝度や色域の拡大は難しいが漆黒の表現はケタ違い

 本機の有機ELパネルは、先述の通りピクセルごとにカラーフィルターを被せるタイプなので、輝度ロスが生じて明るさの確保が難しい。液晶タイプのようにバックライトの光量を増やして明るさを稼ぐことができないからだ。RGBに白を加えたフィルターを採用したのは、少しでも明るくしたいという理由があるのだろう。

 そんなわけで65EG9600の最大輝度は、HDRの理想表示の最低基準と目される1000Nitsには達していない。また、フィルター方式ゆえにRGB3原色発光方式に比べて色域を広げるのも難しい。65EG9600の色再現能力は、デジタルシネマ規格DCIをカバーする高級液晶テレビ並だと考えられる。

 とはいいながら、実際に65EG9600の画質をじっくりチェックしてみると、画素1つ1つの明るさを制御できる自発光タイプならではの魅力が横溢していることをリアルに実感することになる。

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