アイドルとアイドルファンというと、「ヒット曲をステージで歌う女の子」と「熱心にコールする親衛隊」というイメージを持つ人が多いかもしれない。しかし、現在のアイドル事情はちょっと違っている。セクシー系は小池栄子、癒し系は井川遥、U-15は石田未来、また声優のアイドル化やホームページを持つ女の子がネットアイドル呼ばれるなど、「かわいい」「歌がうまい」だけでは収まりきらないファンのニーズにこたえるさまざまなアイドルが生まれているのだ。モーニング娘。がその象徴で、正統派には石川梨華、U-15には辻希美や加護亜依など、メンバーそれぞれの個性でそれぞれのファンがつき、モーヲタと呼ばれるファン達はネットの掲示板でも熱心に語り合う。「どの娘。が好きか?」といったことで論争がおこったり、仲間意識が生まれるのも自然な流れだ。
多様化によって細分化されたアイドルは、さらにメジャーとマイナーとに分かれる。マイナーアイドルの一つの完成形が「地下アイドル」の中西未来といえるだろう。彼女の所属するアルテミスプロモーションの野間社長の言葉を借りると、「テレビや雑誌などで見て“あのコかわいい”と思う」「コンサートに足を運ぶ」「サイン会やCD即売会に参加する」というファンまでがメジャー、「小さなライブイベントにも行く」「バスツアーや撮影会に参加する」というのがマイナーというふうに分けられる。マイナーになるほどアイドルとファンの接する距離も縮まり、アイドルに「顔と名前を覚えてもらう」といったこともおこる。メジャーなアイドルよりも身近、しかし単なるかわいい女の子ではなくプロのアイドル…。その微妙な距離感がマイナーアイドルの魅力だ。
マイナーアイドルになると、雑誌やテレビなどに出ることが少なく、情報を入手するのが困難になる。ネット検索をしたり、事務所に直接問い合わせたり、イベントでアイドル本人に接触したりと地道な努力が必要になるが、たいていの場合入手した情報はファンサイトの掲示板などで公開される。聞き慣れない用語が飛び交うこともあるが、それもファン同士持ちつ持たれつ情報交換をしている証なのだ。
「地下アイドル」として活躍中の中西未来チャンは、18歳の現役女子高生。ファンから「みくぽん」と呼ばれている。ファンが付けてくれたというこの愛称について「たぶんお腹とかぽんぽんしてるからだと思います」と、ほわほわした口調で答えてくれた。
「地下アイドル」とは、ライブなどを中心に活動していて、あまりテレビなどのメディアには顔を見せないアイドルのことをいう。みくぽんは地下アイドルの第一人者といえる存在で、CDデビューに続き6月には1st写真集の発売が予定されているなど、その人気のほどがうかがえる。とはいっても、メディアに頻繁に出るわけではないので、ファンはホームページをチェックして撮影会やライブなどのイベントに熱心に足を運ぶ。彼女のライブの動員数は平均で20〜30名だという。
地下アイドルと呼ばれることについては「普通にアイドルっていうより『地下』が付いた方が潜ってるんだって感じでいいかなぁー。地下アイドルってなんか新種って感じで気に入ってます」と意外に本人もお気に入りの様子。「地上に出たい?」という質問にも「地下のままがいい」というこだわりも見せてくれた。
ライブに来てくれるファンの顔と名前を覚えているというみくぽん。「みんなお菓子をくれるからか顔と名前もすぐ覚えられる」と、誘拐されそうな小学生のような理由に驚かされるが、それだけで名前を覚えてもらえるならお安いご用だ。みんなの反応が楽しいというファンとのチャットは「漢字がいっぱい出てきてどれだかわからないのが困る。パソコンって品種改良とかしないんですか?」と天然ぶりも発揮。最近は中森明菜の曲にはまっているというみくぽんのライブは70's、80'sに流行ったアイドルの曲が中心になるので、歌詞を忘れてファンの人達が一緒に歌ってくれるということもあるとか。地上アイドルとは一味違う地下アイドルみくぽんのイベントに、お菓子を持って一度足を運んでみてはいかがだろう。その不思議な魅力に案外ハマってしまうかもしれない。