eggyには満足,M-stage visualは期待はずれ

IMT-2000「FOMA」に向けた映像配信サービスの試金石として,鳴り物入りで開始されたM-stage visualだが,その中身のほうは今ひとつだ。

【国内記事】 2001年3月6日更新

 NTTドコモのPHSを利用した映像配信サービス「M-stage visual」と,受信用の専用端末「eggy」。5月より開始される第3世代携帯電話「FOMA」に向けた起爆剤としてドコモでは期待しているそうだが,ユーザーにとっては期待はずれもいいところだ。いきなりきつい言い方だが,正確には,「M-stage visualは期待はずれ,eggyは素晴らしい端末だ」と表現したほうがいいだろう。

使い勝手は良好なeggyだが,肝心の映像配信サービスは寂しい内容

 M-stage visualは,eggyとセットで利用するサービスだが,ここでは,M-stage visualとeggyについて個別に評価したいと思う。というのも,eggyは単体で使った場合,非常に興味深い製品であり,M-stage visualとは別に評価するにふさわしいからだ。

試金石になるのか,これ?

 なぜ,ここまでM-stage visualに厳しいかというと,それは「大きな期待」の裏返しだと考えてほしい。FOMAではW-CDMA方式により実現される384Kbpsの通信機能を使って,映像を受信する(2月16日の記事参照)。同じMPEG-4でも,ブロードキャストである地上波デジタル放送とは異なり,オンデマンドでニュースにアクセスできるのがFOMAの大きな特徴だ。ドコモの言うように,電車の待ち時間などのニッチな時間帯に“最新ニュース”にアクセスできれば,テキストと静止画だけしか見られない現在のiモードよりも,ずっと楽しみは増えるはずだ。

 だが,M-stage visualには大きな落とし穴がある。試験サービス中だからか,はたまたコンテンツプロバイダーにやる気がないのか分からないが,オンデマンドで見たいコンテンツが全くないのだ。オンデマンドで最も需要があると思われるニュースチャンネルについて紹介してみると,例えば,「時事Visual News」の芸能ニュースコーナーでは,米倉涼子主演の新作映画について記者会見のもようを動画で配信しているが,これは3月1日のニュース。3月6日分はまだ掲載されていない。というよりも,バックナンバーを見る限り,毎日は更新されていないようだ。米倉涼子の前は,2月25日の田中麗奈の握手会だ……。はっきりいって,日刊スポーツのサイトの映像ニュースの方がよっぽど充実している。

 だが,時事通信社の名誉のために付け加えておくと,もちろんデイリーのコンテンツも用意されている。これは,「時事ショットコム」というチャンネルなのだが,その名の通り,テキストと写真ベースのニュース……。ここで気がついたのは,映像ニュースよりも,テキストベースのニュースの方が内容が深く端的にまとまっていて,さらには接続時間も短くて済むということ。敢えて映像で見たいニュースってなんだろうなどと考えてしまう。

 FOMAにおいては,ニュースコンテンツはオンデマンド配信の大きな柱となるはず。本当に試金石として考えているのであれば,海外ニュースサイトのように,ヘッドラインを1時間おきに更新するなどのサービスを提供するべきだろう。eggyのような小型端末でどこにいてもニュースにアクセスできるのに,肝心のコンテンツのほうがスカスカでは,わざわざ1分15円という高い通信料を払う意味などないのだ。

 また,民放各社もコンテンツを提供しているが,こうしたサービスを行っているところはない。あるのは,連続ドラマの予告編などの垂れ流しだけ。テレビで放映しているものと同じなのに,M-stage visualで見ると通信料がかかる。現在は試験サービス中なので情報料はかからないが,有料化されたらきっと誰も見なくなるだろう。既存コンテンツの使い回しというのがみえみえで,残念ながらM-stage visualには“新しさ”や“未来”というものを感じなかった。

 それと,64Kbpsという通信速度について。閲覧に支障はないものの,やはり映像がモザイクのようになってしまうことも少なくない。ただ,こういう状況だと,映像品質よりもコンテンツの内容の方がはるかに重要だということがよく分かる。

操作感が素晴らしいeggy

 一方,シャープ製のeggyは使っていて非常に気持ちのいい端末だ。2型TFTの低音ポリシリコンカラー液晶(557×234ピクセル表示)は,コントラストがはっきりしていて,鮮明で見やすい。タッチパネルでも操作できるし,eggy本体をゲームコントローラのように握りしめて,十字キーと「OK」「Cancel」ボタンを使っての操作も申し分ない。ぜひとも携帯電話でも,このような素晴らしい操作性を実現してほしいものだ。

 また,「動画を撮って,すぐに送信する」という遊び方は,なかなか楽しめると思う。シャープのカメラ付き携帯電話「SH04」を手にしたときのように,動画を撮ると,せっかくなら誰かに送りたくなってしまうのだ。もちろん,eggyのカメラは35万画素CCDなので,「細部まで鮮明な映像」とはいかないのだが,「ビジュアルコミュニケーション」の一環としてメールに添付して送るだけと割り切れば不満はない。

 eggyで撮影した動画は,MPEG-4 で圧縮され,PC(Windows Media Player 7が必要)またはeggyで閲覧することができる。ただ,撮ったその場で送るならば,相手にもすぐに見てもらいたいというのが人情というもの。そのためには,やはりMPEG-4のエンコード/デコードが可能な携帯電話(要するにFOMA)が一刻も早く普及することを望むが,サービス開始から3年で加入者500万人という見通しでは,本格的にビジュアルコミュニケーションが立ち上がるのは,まだまだ先になりそうだ。

9800円はお買い得?

 非常に完成度の高いeggyだが,映像のリアルタイム配信ができないのはちょっと残念だ。eggyでは,M-stage visualの映像コンテンツをダウンロードすることはできるが,カメラで撮影している映像をリアルタイムに発信することはできない。そのため,必ずメールに添付するという形をとることになる。最近,監視カメラなどでWebカメラが注目を集めているが,リアルタイム発信のような機能があれば,例えば,浮気性の彼女の部屋にしかけておくなど(盗撮じゃなくて監視なので,あくまで同意のうえで行うように),遊びの幅が大きく広がることは請け合いだろう。

 当初は,2万5000円前後で販売されていたeggy。売れ行きが鈍いのか,現在都内では9800円で購入することが可能だ。M-stage visualに物足りない部分はたくさんあるが,FOMAの“ごく一部の機能”を人より先に体験できると思えば,この値段はお買い得。お客さん,いかがですか?

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[中村琢磨,ITmedia]

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