PHSの知られざる活用法(上)「PHSを家庭内のコードレス子機にする」

最近では携帯電話に押されて契約者数が伸び悩んでいるPHSだが,携帯電話には真似のできない機能があることを知っているだろうか。PHSの忘れ去られた魅力にスポットライトを当てる。

【国内記事】 2001年3月13日更新

 PHSは,日本が生み出した移動通信技術だ。その規格には優れた部分も多い。しかし1995年の登場直後から「簡易携帯電話」として認知されたため,携帯電話の土俵でエリアや使い勝手を比較されることになってしまった。結果として携帯電話との競争に破れ,現在のような状況に至っている。

 しかしその優れた機能をほとんど活用せず,このまま埋もれさせていくのは惜しい。ここでPHSの規格を利用したちょっとした活用法をご紹介したい。

PHSの忘れ去られた魅力

 PHSの特徴とは何だろうか。まず多くの人が挙げるのが「高速データ通信」であることは間違いない。cdmaOneに144Kbpsパケット通信のPacektOneが登場したり,今年はIMT-2000が控えているとはいっても,64Kbpsが安定して伝送でき,料金も比較的安いPHSは実用面を考えると大きな強みをもつ。

 高速データ通信以外ではどうだろう。こうなるととたんに印象が薄い。音質の良さが挙げられるかもしれない。たしかに32Kbpsで常に伝送できるPHSは音質はきわめていい。では,それ以外には?

 ここであえて挙げたいのは,一般的には忘れられている特徴だ。実はPHSが屋外だけでなく,家庭内の電話のコードレス子機として利用できる機能をもっているということだ。

 そんな機能は使ったことがない,という読者も多いだろう。しかしもともとがPHSは家庭内や事業所内のコードレスを屋外にも持ち出して利用できるというコンセプトで開発されたものだ。

PHSの通信のしくみ

 ここでPHSの通信の仕組みを復習がてら説明したい。PHSはISDNを中継回線として通信を行う移動通信技術である。

 PHSの基地局は電柱や公衆電話ボックスなどに取り付けられていて,電波の届く範囲は最大数100メートル程度だ。1つの基地局にはISDN2回線が引き込まれる。ISDN2回線で回線交換用のBチャネルが4本取れるが,そのうちの1本は制御用に使うため,1基地局で提供できるPHS回線は3回線になる。いわばPHSは,有線のISDNの先に取り付けられたコードレスフォンとでもいうべきものだ。

 携帯電話と同じ土俵で比べると見えない魅力がここにある。

 しかしなぜ,この屋内ではコードレス子機,屋外では公衆PHSとして使えるという利用法が普及していないのだろう。それはなんといっても家庭内で親機となれる対応電話機が限られていることだ。

 現在,PHSを子機として利用できるのは,パナソニックのVE-PVシリーズや,NTT東日本/NTT西日本のi・トレンビーなど,ごく一部のデジタルコードレス電話機のみ。実装機種が限られているのが実に惜しい。また,企業向けでは,ビジネスホンやPBX向けにオプションとしてパッケージやCS(基地局)が提供されている。なお,登録するPHSのほうも,事業所コードレスの子機として利用する時の規格である“自営標準”に対応している必要がある。

ワイヤレスTAを使う

 PHSを家庭内でも内線の子機として利用できるのは思った以上に快適だ。何といっても普段PHSで登録してある電話帳がそのまま使えるのがいい。

 対応電話機を購入する以外に,このワイヤレス環境を手に入れる方法がある。ISDN TAでPHSのワイヤレス通信に対応した製品を使うことだ。といってもこれもそれほど数は多くなく,NTT東日本/NTT西日本の「INSメイトFT50」や,NECの「Aterm IWX70」がある。一般的に店頭で製品を見かけるのはNECのAtermだろう。今回はこの製品を使ってみた。

NECのAterm IWX70。PHSの子機を登録できるISDNのTA

 実際にどうやったらPHSを登録できるのだろうか。実はメーカーとしては個人での登録については保証しておらず,必ず販売店で登録を行うことが建前になっている。実際には販売店向けの登録マニュアルが製品に添付してあり,それを見て個人で行うことはできる。ただしあくまで自己責任で行うことになるので,その点だけは留意してほしい。不安な方は販売店に持ち込むか,NECのサービスステーションに持ち込んで作業したほうが無難だ。

 実際に登録作業を行ってみる。使ってみたのはPHSの公衆契約を解約した,いわゆる白ロム状態の「パルディオ622S」。マニュアルによれば,PC経由での設定もできる。しかし,今回はもう1つの方法,TAのアナログポートにつないだ電話機からのボタン操作により設定を行なった。なお,登録されるモードは事業所コードレスなどと同様にOSモードでの登録となる。

 指定された方法により,PHSを登録モードで起動する。この後,TAを電話機のボタン操作により登録モードで起動し,内線番号などを指定して実際の登録を行う。登録にかかる時間は数秒。前後のボタン操作などの時間を含めても,2,3分程度で登録作業はできてしまう。ある程度,PCなどのセットアップに慣れた人ならそれほど難しくない作業だ。

 この内線登録されたPHSとデータ通信カードを使えば,電話のほかに,ノートPCからTAを介しダイヤルアップでインターネットに接続することもできる。

ドッチーモは最強のケータイに

 まずは白ロムのパルディオ622Sを登録してみたが,筆者が現在使っているPHSは,iモード対応携帯電話の機能も備えた,スーパードッチーモ「SH821i」。これをワイヤレスTAの子機として登録することはできるのだろうか。

PHSと携帯電話の機能を兼ね備えた,SH821i

 答えをいうと,もちろんできる。登録方法は通常のPHSとまったく変わらない。これにより,スーパードッチーモは“三面待ち”,つまり携帯電話,PHS,そして固定電話として使え,iモードも利用できる,まさしく無敵のケータイになる。ただ全て1つの電話番号で受けられるのではなく,携帯,PHS,固定で3つの番号になってしまうのはいささかイケていないが,現在のサービスの制約上はしかたがないだろう。

 家でも外出先でもシームレスに使え,メールも受け取れるこのスーパードッチーモを,筆者はかなり愛用している。SH821iでは,電話帳登録の番号をかける際にも,携帯,PHS,固定電話と回線を選んでかけられるため,かなり便利である。

 次回はデータ通信専用PHSの「P-in Comp@ct」とザウルスなどのPDAを組み合わせての活用を紹介したい。

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[大水祐一,ITmedia]

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