携帯電話はPDAになれるか?そろそろ,携帯電話に本格的なPDAとしての機能を入れ込んでもいい時期かもしれない。ユーザーの意識も以前とは変化してきている。注意すべきはデータの扱いだ。
最近の携帯電話には,のきなみ予定表機能が搭載されている。NTTドコモの最新機種である503iシリーズには,全機種に予定表機能が内蔵され,一部の機種には「メモ帳」「ToDo機能」も搭載されている。もちろん,電話機であるから,アドレス帳も入っている。 携帯電話はPDAになろうとしているのだろうか? 携帯電話とPDAはいっしょになるべき?携帯電話とPDAが1つになるべき理由はいくつもある。モバイル,つまり外出している状況で,誰かに連絡するときに取る行動を考えてみよう。 「Pilot」のときからの熱心なPalmユーザーである筆者は,まずPalmを鞄から取り出して相手の電話番号を検索する。そしてPalmを落とさないように左手で持ちつつ,右手で携帯電話をポケットから出し,Palmを眺めながら携帯電話をダイヤルしている。 これはかなり面倒だ。どうしてPalmから直接電話できないのか? どうして携帯電話にPalm並みの住所録が搭載されていないのか? 予定表のアラームもそうだ。筆者はPalmのアラームが鞄の中で鳴っているのに気づかなかったことが何度もある。Palmと携帯電話と,両方とも,鳴ったら気付く場所に置いておくのはけっこう大変。実のところ,注意を払う対象は2つより1つのほうがありがたい。 フォームファクターごとに機能を分ける?もちろん,何でも2つのものを1つにすればいいというわけではない。これまでPDAと携帯電話を合体させようという試みは何度も行われ,失敗している。その理由の1つは“モノの大きさ”にある。 携帯電話に必要なサイズは,耳と口にぴったりくるだけの長さとダイヤルボタンの収まる幅。それ以外はできる限り薄く,重さは軽くする必要がある。PDAに必要なサイズは,携帯性を損なわない程度に大きめのディスプレイだ。 予定表をチェックしたり,住所録を確認するには,携帯電話よりも,大きなディスプレイとタッチパネルを備えたPDAのほうが使いやすい。それは確かだ。また,携帯電話とPDAを別個に持ち歩けば,電話をしながらメモをとったり,予定を見たりできるというメリットもある。 それぞれの機器には,目的に沿った形,大きさ,いわゆる“フォームファクター”がある。「最適な大きさを無視してまで合体させるよりも,機能ごとに別の形を持って,データだけを共有したほうがいい」という考え方はここから来ている。 そのときには,Bluetoothなどの近距離無線規格が,大きな役割を果たすだろう。それぞれの機能に合った機器を連携して使うことで,これまでにない使いやすさが実現される可能性がある。 機能性よりも携帯性重視という考えもただし,「見やすく,操作しやすい,よりも常時携帯しやすいほうがいい」というニーズもあることは確かだ。機能ごとに形を分ければ使い勝手は向上するが,常に持ち歩くには不便だ。 どちらのニーズのほうが多いにせよ,携帯電話にPDA的な機能が入って悪いことはない。筆者は仕事ではPalmを持ち歩いているが,休日に持って歩くのは携帯電話だけだ。そして休日でも,簡単にでいいから明日の予定を確認したいときがある。 持ち歩く機械はできる限り減らしたいし,軽いに越したことはない。「携帯電話で時間を見るので,腕時計をしなくなった」そんな話も聞く。携帯性を考えた場合,ある程度の機能は1つにまとめたほうが便利だ。 機能性と携帯性は微妙なバランスで成り立っている。これまでPDAと携帯電話を組み合わせてできた,文庫本のような携帯電話(PHS)が失敗してきたのは,PDAとしての機能を生かそうと思うばかりに,携帯性やデザインとのバランスを崩してしまったからではないだろうか。 2000年末に行われたガードナーグループの調査では,携帯電話ユーザーの35%が,「通話機能付きPDAを欲しい」と回答している(3月23日の記事参照)。“話せるPDA”“PDA並みの大画面の携帯電話”をイメージしたようだとガートナーグループは分析しているが,3割以上のユーザーが2つの機能の統合を求めている。 ユーザーの意識も変わったし,2〜3インチの高解像度液晶,高速低消費電力のCPUも登場した。メモリの価格も下がった。最新の携帯電話にはPalmとほとんど同等のメモリが積まれているし,処理速度も高速だ。ディスプレイも,Palmの160×160ピクセルに対し,160×120ピクセル程度の解像度を備えた携帯電話が増えている。 携帯性と機能性のバランスさえ取れれば,魅力的な製品が出てきてもおかしくない。 データの安全性が最重要課題ただし,携帯電話にPDA的機能を入れ込むには,解決しなくてはならない問題がある。それはデータの安全性への配慮だ。 たとえば,携帯電話のアドレス帳に住所を入力する欄を設けていない理由として,「携帯電話のダイヤルボタンでは入力するのが大変だし,機種変更の際に消えてしまう」とNECでは説明している。 しかし,昨今のPDAの代名詞的存在であるPalmでも,データを入力するのは大変だし,電池が切れればデータは消えてしまう。 基本的なデータに限っていえば,Palmと携帯電話で違うのは,PCとの連携ができるかどうかだけだ。PC上のPIMソフト,たとえばOutlookと,携帯電話のデータが同期できればこれらの問題は解決する。 もちろん,携帯電話のユーザーの全てがPCを持っているわけではない。携帯電話だけでデータ入力が簡単になるための工夫──たとえば郵便番号を入力すると対応する住所が入力されるなど,は必要だろう。 しかし,近い将来,携帯電話を情報機器として活用するには,メモリデータのオープン化が必要になってくる。携帯電話とPCをUSBケーブルでつないで,ボタン一発でアドレス帳と予定表,ToDoリストが最新のものに同期される──これだけのことで,PDAとしての携帯電話の使い勝手は大きく向上する。 人が持ち歩ける電子機器には限りがある。携帯電話とPDA,その両方が常に持ち運ぶべきものなら,“2つを1つにする試み”を再び考えてもいいのではないだろうか。 関連記事 [九条誠二,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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