“迷惑メール対策”に見直しの声──メールビジネスへの影響も迷惑メールに対してキャリアが講じたさまざまな対策。その結果,メールマガジン配信などのビジネスが大打撃を受けている。
メールの遅延にも苦慮昨今のメール遅延も,メールマガジンには深刻な影響を及ぼした。ポケマガでは,野球の試合結果をメールでリアルタイムに流すサービスを行っていたが,遅延の影響で「少なくとも野球“速報”にはならない」(平山氏)。さらにはニュースの配信も「おはようニュースが,こんにちはニュースになってしまう」(同)状況が続いた。 遅延はユーザーが不便を感じるだけでなく,メールを使った情報配信ビジネスモデルを直撃している。各事業者は「リアルタイムにいつどこにいても情報を提供できる」ことを,売り物にしているからだ。 「追加公演のお知らせが,締め切りを過ぎてから届いてしまう」と嘆くのは,携帯などでチケット販売を行っている公式コンテンツプロバイダ。ぎりぎりのタイミングでも集客できるのが携帯を使ったチケット販売のメリットだったが,遅延によって問題が起きた。 ドコモでもメール遅延が,携帯ビジネスの市場を停滞させてしまうことを怖れてか,専用の入り口を設けて優先的にメールを処理する「特定接続サービス」の受付を3月から開始している(2月22日の記事参照)。 しかしこれも「リアルタイムにメールを送信するには役立たない」と平山氏。特定接続サービスは,標準では2セッションまでの接続しか許していない。セッションとはTCP/IPプロトコルによるデータ処理の単位。セッション数が少なければ,例えば40万人にメールを送ろうと思った場合,ドコモのサーバに送りきるのに何時間もかかることになる。 平山氏は「リアルタイムにメールを送信するには,少なくとも200セッションは必要」だと話す。特定接続サービスでは,セッション数を追加することも可能だが,1セッション当たり月額7500円の料金が必要だ。 「(通信キャリアには)速報性が携帯の武器だ,という原点にかえってほしい」(平山氏)
一般のコンテンツプロバイダにもダメージアドレス変更や遅延が影響を与えたのは,メールマガジン配信業者だけではない。一般のコンテンツプロバイダの中には,会員登録時にメールアドレスを登録してもらい,後々のマーケティングに役立てているところも多い。 顧客名簿(この場合メールアドレス)はマーケティングのための大事な資産だが,それらの成果も,一連の迷惑メール騒動の中,使い物にならなくなってしまった。
そもそも,メールアドレス変更の効果は?そもそも,メールアドレス変更は迷惑メールを遮断できたのだろうか。 確かに,ユーザーはメールアドレスを変更することで一時的に迷惑メールを減らすことができる。しかし,電話番号アドレスから,英数字のアドレスに変更したからといって迷惑メールがずっと来ないかというと,そんなことはない。 NTTドコモも発表しているように,既にほとんどのユーザーがメールアドレスを英数字に変更しているが,迷惑メールは相変わらず届き続けている。
平山氏によると,「件数を数えてみたところ,現在,電話番号アドレスには1日140件,英数字アドレスにも78件の迷惑メールが来た」という。 根本的な解決法ではないにも関わらず,キャリアは2度3度に渡るメールアドレスの変更をユーザーに勧めている。これは,携帯メールという重要なマーケティング上の武器の効果を半減させると共に,同じメールアドレスを使い続けられないという意味でユーザー側にも不便をもたらしている。
携帯ビジネスをつぶさない施策を迷惑メールは現在でも大きな問題となっており,キャリアはその対策を求められているのは確か。しかし「(対策が)ユーザーのほうばかりを向いている。どうしたら迷惑メールを防げるのか? ばかりで,ビジネス面への配慮が欠けている」(中原氏)という批判もある。 確かに迷惑メールは根絶やしにされた。しかし,携帯メールを使ったビジネスもなくなってしまった──対応を誤れば,こんな事態になってもおかしくはない。「ダイヤルQ2のような暗いイメージになってしまっては(ビジネスが)成り立たない」と中原氏も先行きに懸念を示す。 1つの解決策は,公式的なサービスとしてメール配信サービスを位置づけることだ。許可をもらった(オプトイン)ユーザーに対してのみ,ドメイン指定やアドレス変更に関係なくメールを配信できる仕組みをキャリアが作れば,現在の問題点のいくつかは解決する。例えそれが有料であっても,キャリアの迷惑メール対策に一喜一憂し,対策に追われる現状からみれば,ビジネスを行いやすい環境なのではないか。 迷惑メールを防ぎつつ,どうやって携帯メールビジネスが成り立つ環境を作るか。携帯がビジネスのプラットフォームになれるのかどうか,キャリアの対応が試される。
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