携帯市場は今後どうなる──伸びる海外,飽和に向かう国内?

今や携帯契約者数のトップは中国だ。7000万契約を数える日本では,まだ数千万の需要がある見通しだが,そのカギの1つは第3世代携帯電話が握っている。

【国内記事】 2002年4月9日更新

 国内の携帯契約者は7000万近くに達したが,通信キャリア各社は今後の需要に関して強気の構えを崩さない。しかし伸びのペースは落ちていくと見ていいだろう。急成長に入る中国などに対して,国内の携帯市場は成熟。端末の需要も買い換えが中心になっていく。

伸びる中国市場

 携帯契約者数が急速に伸びているのが中国だ。「昨年中国がトップに躍り出た」と語るのはKDDIの小野寺正社長。中国は1億5000万弱の加入者を抱えて,現在世界1位。続いて1億2000万の米国,3位に7000万強の日本が続く。

 中国をはじめ,先進国以外で携帯電話契約者数が伸びていることについて,小野寺氏は「固定の電話をひくよりも携帯電話のほうが安いという事情もある」と説明する。


KDDIがケータイ国際フォーラムで示した各国の携帯電話加入者のグラフ

 中国は加入者数トップでありながら,総人口に対する普及率は未だに10%程度。未開拓の大きな市場が眠っていると見るメーカーは多い。

 欧州向けにiモード端末「TS21i」を投入する東芝もその1社(3月14日の記事参照)。東芝のモバイルコミュニケーション社社長の溝口哲也氏は,「日本市場ではiモードをやっていないが,ヨーロッパのGPRS市場からiモードに参入する。アジアでも端末を投入する予定だ」と語る。
東芝がケータイ国際フォーラムで示した中国向けに投入予定のcdmaOne端末

 各社が海外に目を向けるのは,日本の通信方式が世界的に孤立していることとも関係がある。世界の通信方式は欧州方式と呼ばれるGSMが過半数を占めている。

 松下通信工業の倉本寶専務取締役は「米国のTDMA方式は減る,日本のPDCも増えない。GSMの市場は発展途上国などで増えていく。CDMA方式は伸びる。(今後)ほとんどが3G(CDMA)とGSMで占められていく」と,今後の通信方式の見通しを語る。

日本でもまだ普及率は上がる?

 急成長に入る海外とは逆に,日本の携帯普及率は約53%まで上がり,そろそろ飽和するという見方がある。

 しかしJ-フォン最高顧問の村上郁雄氏は,「ヨーロッパのほうへいくと,北欧が高くて70%程度。最近ではドイツ,イタリアなどでも80%程度の人口普及率になってきている。日本でもまだまだ携帯を使う人が増えていくのではないか」と楽観的な見通し。

 KDDIの小野寺氏も「80%を超える国では,プリペイドスタイルが普及している国が多い。ただし,先進国では80%が普及の目安になると思っている」と語っている。

 欧州では80%に近い高い携帯普及率の国があるが,その多くをプリペイド携帯電話が占めているのも事実。プリペイド携帯電話では,購入したまま使われない契約もカウントされるため,実態より契約数が水増しされて見えることが指摘されている。


ドコモ関西がケータイ国際フォーラムで示した各国の携帯電話普及率のグラフ。各国の数値の右端,PPで表されているのがプリペイド携帯電話

 松下通信の倉本氏は,2001年の国内携帯出荷台数4200万台に対して(3月12日の記事参照),2002年は3900万台程度に落ち込むと予測している。その後出荷台数は復調していくが,「買い換え需要が中心。ある程度の一定需要が続くだろう」(倉本氏)

 買い換え需要に伴って端末出荷台数は年間4000万台程度の数を維持するが,新規の需要はそれほどないだろうという見通しだ。

今後の需要は第3世代携帯電話次第

 ただし,2003年以降の状況は,第3世代携帯電話の動向いかんで大きく変わると思っていいだろう。ドコモ向けに第3世代携帯電話を投入する予定の東芝では,「W-CDMAが本格的に普及し始めるのは2004年から」(溝口氏)と予測しており,第3世代携帯電話への置き換えが進めば,買い換え需要も大きく喚起されると見ている。

 J-フォンも6月30日に東京地区で,10月には全国主要都市でW-CDMAサービスを開始する予定だ。国際ローミングに関しても,「最初のうちは,SIMカードを抜いて,先方(海外のVodafone)の携帯に差して利用するローミングを行う。10月以降は端末自体を持っていけるローミングサービスを行う(2001年12月の記事参照)」(J-フォンの村上氏)

 ドコモのFOMAも2002年3月の目標値を大きく下回る契約数に終わるなど(4月5日の記事参照),先行きが不透明な第3世代携帯電話だが,通信キャリアは現状の通信方式とサービスで安穏とはしていられない。

 「ブロードバンドの普及で,安閑としていては,また携帯電話からユーザーが離れていってしまうのではないか」(J-フォンの村上氏)という思いがあるからだ。

 隆盛を誇ったページャー(ポケットベル)や,低価格な端末を武器としたPHSは,今や見る影もない。今でこそ順調に見える携帯電話だが,無線LANなどを使ったホットスポットサービスが,エリアを拡大し音声通話サービスもスタートさせようとしているなど,携帯の座を虎視眈々と狙っている(4月2日の記事参照)。

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[斎藤健二,ITmedia]

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