Mobile:NEWS 2002年5月10日 00:05 AM 更新

効果を発揮した新迷惑メール対策。しかし新たな火種も……

最近、iモードに迷惑メールがほとんど届かなくなっている。強化された「ドメイン指定受信」が、有効に作用しているためだ。副次的に、ドメインを詐称した迷惑メールも防げるようになったが、最近EZwebドメインからの迷惑メールが届くという話も……

 4月中旬に開始されたiモードの新迷惑メール対策は、より着実に迷惑メールの遮断を実現し、その効果も確実に上がっている。現時点ではベターといえるiモードの迷惑メール対策だが、新たな不安の声も上がっているようだ。

根本的な対策が施されたiモードの新迷惑メール対策

 最もユーザー数が多く、それゆえに迷惑メールのターゲットになりやすいiモード。オリジナルメールアドレスへの対応やドメイン単位での受信許可/拒否といった対策を追加していたが(3月4日の記事参照)、焼け石に水となっていたのが実情だった。

 4月中旬に開始された新しい迷惑メール対策は、これまでの中で最も抜本的なものだ(3月29日の記事参照)。ドメイン指定受信を設定すると、携帯電話/PHSからのEメールだけは自動的に受信可能となり、その上で、指定したドメインからのEメールだけを受信可能にする。

 この新しいドメイン指定受信が有効なのは、iモードなどのケータイEメールのドメインを騙った偽装メールを拒否できる点だ。

 実際、新しいドメイン指定受信の効果は大きい。筆者は2台のiモード端末を所持している。ドメイン指定受信でezweb.ne.jp(EZweb@mail)のみを受信許可していたこともあったが、送信元のドメインをezweb.ne.jpに偽装した迷惑メールが1日数通は届いていた。

 しかし4月16日以降、少なくともこの原稿を書いている段階では2台のiモード端末には1通の迷惑メールも届いていない。

 内部的な処理は公開されていないが、ケータイキャリア各社のEメールサーバとピアリング(一般にISP間、この場合ケータイキャリア各社間の直接接続)の上で、直接届いたEメールだけを受信しているか、送信元になるメールサーバを特定してしまっているのだろう。この方法を使うことで、単に送信元(From:)を各社ケータイのドメインに偽装したメールを拒否できる。

選択肢内容
メール指定拒否指定するアドレスからのメールを拒否する
メール指定受信指定するアドレスからのメールを受信する
ドメイン指定受信iモード、他携帯電話、PHSからのメールと指定するドメインからのメールを受信する

現在、iモード(FOMAを除く)で設定可能な、指定受信/拒否設定

 しばらくドメイン指定受信をしたあとで、実験的に1台の端末では丸1日間(5月6日〜5月7日)、すべてのメールを受信するように変更してみたが、1通の迷惑メールも届かなかった。4月16日以降は、ドメイン指定受信を設定した場合、ケータイキャリア間以外のメールをすべて拒否してしまうので、名簿を使って迷惑メールを送信していた業者が名簿から外してしまったのだろう。もちろん筆者の場合、姓名共に割と珍しいので、偶然なのかもしれないが。

 ただし注意が必要な点もある。新しいドメイン指定受信機能を利用すると、一部のメール転送サービスがうまく利用できなくなる。例えばJ-フォンの写メール端末からiモードへ画像付きメールを送信するようなサービスがそうだ。これらのサービスでは送信元アドレスを変えることなく、メールサーバで中継する形を取ることが多いからだ。こういった点も理解した上で、新しいドメイン指定受信機能は利用する必要があるだろう。

新迷惑メール対策でも対応できない迷惑メール

 絶大な効果を発揮した迷惑メール対策だが、新たな問題も生じている。インターネット上の掲示板などで話題になっているのは、ezweb.ne.jpのドメインから迷惑メールが届くということだ。しかし、実はこれはドメインの偽装ではない可能性が高い。

 auのEメールサービスでは、PCからの(正確にはPOP3、SMTP、IMAP4プロトコルなどを利用して)Eメールの送受信を可能にしている。ISPとしてau.netを利用するという制限はあるが、cc:、bcc:を利用して比較的容易に大量の同報メールを送信できる。

 これらの方法で送信されたメールは、ケータイから送信された場合と原則的には見分けがつかない(メールのヘッダを厳密に解析すれば不可能ではないが)。少なくとも送信元となるメールサーバは同じだから、ピアリングを利用した送信元の限定や送信元メールサーバの制限では、PCからのメールだけを拒否することは難しい。

 つまり送信元がezweb.ne.jpの迷惑メールは、実際にauのメールサーバから発信されている可能性が高く、ドコモの新しいドメイン指定受信機能でも拒否できないのだ。

 さらに困ったことに、auではパケットパックというデータ通信向けの大型割引サービスがあり、Eメールの送信だけなら極めて低コストでPCからメールの送受信ができてしまう。

 auのEメールサービスがPCからのメール送受信をサポートしているのは、高機能なEメール機能をより便利にユーザーに利用してもらうためだ。しかし迷惑メールの温床となるようでは、PCからアクセスできるEメールサービスの機能を制限するか、サービス自体の提供を止めざるを得ない可能性もある。

 なおDDIポケットもau同様、ISPにPRINを利用することでPCでのEメール送受信をサポートしている。しかしこちらは端末からのEメール送信とは異なる扱いとなるようで、ドメイン受信機能を設定したiモード端末にはメールを拒否されてしまった。

 ユーザーの利便性を考慮したはずのサービスが迷惑メール発信の温床になってしまう。もちろん憎むべきは迷惑メール業者、ということになるのだが……。

そしてケータイキャリア各社に望むこと

 ドコモの新しいドメイン指定受信のような迷惑メール対策はauのEZwebmultiでも開始されているし(2月26日の記事参照)、今後主流になるであろう。問題はその運用だ。簡単で確実に迷惑メール対策が可能になるつつあるとはいえ、現在ではあらゆる層の人がケータイでEメールを利用する。我々が“簡単だ”という迷惑メール対策の設定も、容易にはできないケータイ利用者もますます増えていくはずだ。

 やはり端末の初期設定でEメール受信はケータイキャリア間に限定しておき、ユーザーの責任でより広範囲にEメール受信を可能にする、といった運用が必要ではないだろうか。これは販売店レベルの対応で可能であり、今すぐにでも実現可能なはずだ。機能的には有効な迷惑メール対策が本当に有効に利用されるかどうかは、キャリアの姿勢次第だ。

 特に圧倒的なブランド力でシェアを維持、拡大し続けるドコモ。「迷惑メールがなくなるその日まで、ドコモは全力を注いでいきます」というスローガンを守るためにも、その運用に期待したい。なにせ迷惑メールでコスト的な実害をもっとも大きく受けてしまうのはiモードユーザーなのだから……。



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[坪山博貴, ITmedia]

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