Mobile:NEWS 2002年7月3日 00:09 AM 更新

FOMA「デュアルネットワーク」の落とし穴

FOMAと従来のiモード端末を、同一番号で利用できる「デュアルネットワークサービス」が始まった。安くて便利そうなこのサービスだが、使い勝手の面では疑問符が付く部分が少なくない

 1つの電話番号で、FOMAと現行のiモード端末(以下ムーバ)を切り替えて利用できる、ドコモの「デュアルネットワークサービス」が7月1日に始まった(6月18日の記事参照)。FOMAの登場以前から行うことをドコモが明言していたもので、FOMAのエリアの狭さを補うための施策だ。

 ほぼ1台分の料金で、2台の端末を切り替えて利用できる──。こういうと、なかなか魅力的に思える。しかし、実際に使ってみると、いろいろと問題があることが浮き彫りになってきた。

ムーバではメールの自動受信なし。iショットも不可

 電話機能については切り替えさえしてしまえばFOMAとムーバを意識することはないが、データ通信系のサービスは洗練というにはほど遠い。メール送信はムーバ、FOMA共に可能なものの、受信はFOMAでしかできない。ムーバでは、専用のWebサイトから確認する形になる。自動着信しないため、着メロやバイブレータで知らせてもらえず、メールが届いたかどうかは自分から確認しなくては分からない。


ムーバでは、受信メールをWebページ上で閲覧する形になる。基本的には本文を読めるだけだ。返信を行うと、通常のメールソフトが立ち上がり「新規メール」を出す形になる

 受信文字数が増えているFOMAに合わせて、ムーバでも最大全角2000文字までのメールを確認できる。ただし、操作可能なのは「返信」のみで、迷惑メールを見つけても削除はできない。

 また、本文中にメールアドレスやURL、電話番号が記載されていても、mail to/web to/phone toは利用できない。これもやっかいな点だ。ドコモのカメラ内蔵端末はiショットというサービスを使い、URLが書かれたメールを送ることで画像送信を行うからだ(5月28日の記事参照)。デュアルネットワークサービス利用中のムーバからは、iショットの画像を閲覧できない。

 ムーバでメールを確認した後、FOMAに切り替えてメールを受信すると、一度見たメールもすべて新規メールとして受信してしまう。同じメールを2度見る必要があるだけでなく、メールを見るためのパケット料金も2回かかるわけだ。「FOMAが主で、ムーバは従」という理屈は分かるが、ならばムーバ側で閲覧したメールの削除を行えるようにしてほしかったところだ。

有料コンテンツが使えない?──マイメニュー操作はFOMAのみ

 もう1つ、FOMAとムーバで大きく違うのはiモードだ。下の画面を見比べると、FOMAにだけ「マイメニュー」があり、ムーバには見慣れない「メール確認サイト」と表示されているのが分かる。


左のFOMAには「マイメニュー」や「オプション設定」が表示されている。右のムーバには、代わりに「メール確認サイト」「iエリア」などが用意されている

 ムーバのiモードでは、マイメニュー登録/削除が行えないほか、「オプション設定」もできない。そのため、例えばムーバに着信メロディをダウンロードしようとすると、けっこう面倒なことになる。

 まずFOMAで着メロサイトにアクセスし、マイメニュー登録する。その後ムーバに回線を切り替えて、メニューリストの中から先の着メロサイトにアクセス、ダウンロードを行うことになる。デュアルネットワークサービスの説明書によると、「FOMAでマイメニュー登録したサイトでもムーバでは閲覧できない場合があります」となっており、ムーバ側でiモードを活用するのは困難そうだ。

 ちなみに、デュアルネットワークを申し込んだ当日は、ムーバではiモードやメールが一時的に利用できなくなるのも注意してほしい。翌日9時からのサービス開始となっている。

デュアルネットワークサービスのメリットは?

 では、デュアルネットワークサービスのメリットはなんだろうか? 1つはサービスエリアの向上だ。FOMAを日常的に利用しているユーザーにとっては、まだエリアが不十分なため、多少の手間が伴うとはいえPDCエリアでも電話を受けられるのはありがたい。

 しかし、どうしてFOMAがサービスエリア外の場合に自動的にPDCに転送されるような仕組みにできなかったのだろうか。手動で「1540+暗証番号」を入力して切り替えを行うのはかなり面倒だ。

 現在でも、FOMAとムーバを両方契約すれば、「転送電話」サービスをうまく使って“FOMAがつながらない場合にはムーバに電話を転送する”といったことが可能。また「アクセスナンバー」サービスを使えば、1つの電話番号に受けた電話を、複数の端末に順に着信させることもできる。FOMAを電話として真剣に活用しようと思ったら、デュアルネットワークサービスは少々中途半端だ。

 では料金的なメリットはどうか。2回線契約するのに比べ、1回線契約+月々300円で2つの端末を利用できるデュアルネットワークサービスは確かに安い。しかし、2回線契約すると、1人でも「ファミリー割引」が適用できることも忘れてはいけない(10月18日の記事参照)。

 料金プランとして、「FOMAプラン49」でデュアルネットワークサービスを組んだ場合と、「FOMAプラン49」と「おはなしプラスM」で2回線契約した場合の料金を比べると、以下のようになる。

プランFOMAプラン49+デュアルネットワークFOMAプラン49+おはなしプラスM(ファミリー割引適用)
月額料金計5200円6220円(9月以降は7200円)
無料通話分計2000円3300円
もちろん2回線契約の場合、無料通話分はそれぞれの番号で独立しているため、実際はデュアルネットワーク利用時のようには使い切れないだろう

 月額料金から無料通話分を除いた実質月額料金で比べると、デュアルネットワーク利用時が3200円、2回線契約時が2920円(9月以降は3900円)。それほど大きな差がないことが分かる。

 こうしてみるとデュアルネットワークサービスには、iモードやメールの活用にさまざまな制限があり、切り替えも完全に手動。料金的なメリットも小さい。PDCとFOMAのデュアル端末ではなく、ネットワークの切り替えという手法を取ったがドコモだが、果たしてその意味はどこにあったのだろうか。

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関連リンク
▼ NTTドコモ

[九条誠二, ITmedia]

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