Mobile:NEWS 2003年2月25日 09:13 PM 更新

思い通りの言葉を最小限の操作で――「Advanced Wnn」発表

オムロンソフトウェアが、携帯電話など組み込み機器向けの日本語入力システム「Advanced Wnn」を発表。変換機能と予測機能が一体となったシステムで、少ない操作で思い通りの言葉を入力できる

 オムロンソフトウェアは2月25日、変換/予測機能を統合した組み込み向け日本語入力システム「Advanced Wnn」を開発したと発表した。「変換機能と予測機能が一体となったシステムは、組み込み向け日本語入力エンジンでは国内初」(同社)。携帯電話、PDA、情報家電などへの組み込み向けシステムとして、セットメーカーにアピールしていく。

 キーボードでの入力を前提としたPCと違い、組み込み機器での入力環境は物理的制限が厳しい。PDAのようにタッチパネルを持った機器では、手書き文字認識やソフトウェアキーボードなどで入力支援を行えるが、携帯電話ではそれもできない。端末の性能は日進月歩で進化しているのに、入力に関してはいまだにテンキー+α程度というのが、携帯電話での日本語入力の現状だ。

 「これまでの組み込み向け日本語入力エンジンでは、PCのそれと同じく、“単語をすべてかなで入力”し、“変換”ボタンを押して、“多くの候補から選択し確定”という操作を行ってきた。この方法は、テンキーデバイスのような貧弱な入力環境では非常に使いづらい」(同社)。

 そのため最近の携帯電話では、少ない文字入力から語彙を予測する「予測入力方式」が採用され始めている。「文字が入力しにくいなら、入力に必要な文字数を減らせばいい」という発想だ。なかでもソニーエリクソン端末に採用されている「POBox」(用語参照)の予測変換機能は、評価が高い。今回発表されたAdvanced Wnnのコンセプトも、基本的にはこのPOBoxと同じ発想だ。

“変換”と“予測”の両機能を統合して、思い通りの言葉を抽出

 実は、POBoxで使われている変換用辞書は、オムロンソフトウェアの組み込み向け日本語入力システム「モバイルWnn」の辞書エンジンを使用している。つまりPOBoxでは、予測のエンジンと変換エンジンを別々に持っているのだ。これに対してAdvanced Wnnでは、“変換”と“予測”の両機能を統合した新エンジンを採用した。「これによって、文字を入力すると、変換候補と予測候補が一緒に表示される」(同社)。


Advanced Wnnでは変換候補と予測候補が一緒に表示される

 ただし、これだけでは単に候補が多くなるだけだ。Advanced Wnnでは無作為に予測候補を列挙するのではなく、日本語文法上もっともふさわしい言葉から優先的に抽出して提示する。

 「自然言語処理技術と履歴をベースにした関係学習機能によって、文法的に正しい候補を優先的に列挙。あわせて、文法や用例的にありえない候補の優先順位を下げていく。これによってテンキーのみでスムーズに文章を作成できる」(同社)。


Advanced Wnnの入力イメージ

 付属語の候補選択にもこの機能は効果を発揮する。例えば“今日”と入力した場合、PoBoxでは決まったカタチで付属語の候補が出てくるが、Advanced Wnnでは自然言語処理によって“今日”に続く助詞や接続助詞しか表示しない。

 「予測候補(前方一致候補)は、1文字目の入力時は多いが2文字以降はぐっと減ってくる。逆に変換候補(全候補)は3文字の語彙が多いため、候補数は3文字をピークにヤマナリのグラフを描く。この“予測”と“変換”をバランスよく使えるのがAdvanced Wnn」(同社)。

用途にあった辞書をピンポイントで使うことで省入力化に貢献

 またAdvanced Wnnでは、用途や入力エリア別に複数の辞書を選択できる。例えばアドレス帳を入力する際に、名前の入力エリアでは人名辞書、住所の入力では地名辞書しか使わないといったシステムの作り方も行えるのだ。発表会では、電車の乗り換え案内の入力時に、駅名辞書を使って駅名だけを表示する例が紹介された。


変換に駅名辞書しか使わないことで、選択肢が少なくなる

 「さらに学習エリアも辞書ごとに別々に記憶される。例えば、人名の変換では人名の履歴データしか使われないため、候補をさらに絞り込むことができる」(同社)。

 発表会のデモンストレーションで使われたAdvanced Wnnのエミュレータでは、携帯電話の画面に9個の語彙候補が表示されるGUIの例が紹介されていた。「このような9候補以内に目当ての語彙候補が現れる確率、当社ではこれを“抽出精度”と呼んでいるが、それがAdvanced Wnnでは90%以上になっている。つまり、ほとんどの候補選択は、1画面内で完結する」(同社)。


発表会のデモンストレーションで使われたAdvanced Wnnのエミュレータ

高機能でもサイズは従来製品とほぼ変わらず

 Advanced Wnnは、従来のモバイルWnnから大幅な機能アップが図られたにもかかわらず、そのソフトウェアサイズはほとんど変わらないのも特徴。また、モバイルWnn同様に組み込み機器のプラットフォームに左右されず、さまざなOS上で動作させることができる。

 モバイルWnnとのソフトウェアサイズの比較は以下の通り。

モバイルWnnAdvanced Wnn
ROM(エンジン)69Kバイト(Ver.1)/100Kバイト(Ver.2)61Kバイト
ROM(基本辞書)650Kバイト767Kバイト
RAM(エンジン)35Kバイト30Kバイト
RAM(スタック)5.5Kバイト4Kバイト
学習エリア可変(約1000語学習時32Kバイト)
単語登録エリア可変(約100語登録時7Kバイト)

 Advanced Wnnが組み込まれる端末の予定については、「具体的なメーカー名や出荷スケジュールはNDA(機密保持契約)なので答えられないが、現在、数社と商談を進めている」(同社)とのこと。

 Advanced Wnnでは「変換」「予測」といったボタンが必要なく、少ない操作で最適な候補が表示される。従来のモバイルWnnは携帯電話中心だったが、Advanced Wnnはそれ以外にも応用範囲が広がりそうだ。「モバイルWnnは、たくさんの文字入力をいかに正確に効率よく変換するかに重点を置いていた。Advanced Wnnは、カーナビやデジタルカメラなど、ハードの制約上たくさんの文字が入力ができない機器にも有効なソリューション」(同社)。



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[西坂真人, ITmedia]

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