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2003年6月6日 08:55 PM 更新
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話題のモバイルビジネスのその後
共同購入をケータイで
月商1億円を超えるサイトが現れるなど、携帯電話による物販が注目されている。そこで、ひと味違ったコマースで人気を博しているのが「ちびギャザ」だ。共同購入希望者が増えれば、割安で商品購入が可能というギャザリングがユーザーを逃さない秘訣とは
「携帯電話で買い物」は、当たり前の時代に突入した。昨年末ぐらいから女性情報サイトなど中心に携帯電話による物品購入が浸透しつつある。そんな中、ネットプライスは共同購入に着目。購入希望者が多ければ多いほど商品を安価に購入できる「ちびギャザ」サービスで、一躍注目を浴びている。
会員は女性が大半、売れ筋はファッションや美容関連
ギャザリング(共同購入サービス)は、購入希望者の数によって価格を決めて商品を販売する仕組み。購入希望者が多く集まれば、仕入れ先との交渉で価格が下げられるというものだ。
もともとネットプライスは、Webでギャザリングサービスを展開していた。2000年8月、iモードユーザーが1千万人になったのを機に、同年9月にiモード上の非公式サイトで「ちびギャザ」をオープン。2001年にはEZweb、J-フォンでも同様のサービスを開始した。
設立時には携帯端末がモノクロ表示で商品の訴求力も弱かったため、スタートの週に実売できた物はアクセサリー4個のみだった。そこで有名サイトへの積極的な広告出稿や購入希望のユーザーが知り合いにも簡単に勧められるメール機能の導入、購入希望時のコメントを記入できるようなコミュニティ作りの設定などを実施。3カ月後には月商1千万円を超えるほどになった。
「ちびギャザ」設立から約2年半、今では会員も約47万人に増え、月商は2億5千万円にまで成長した。会員の7割が女性で、25〜35歳のOLや主婦が多い。商品アイテムは150種類近くあり、ファッション・アクセサリーや美容・健康・ダイエット商品が売れ筋だ。
「会員の月平均購入金額は約1万円。1度商品を購入した会員のリピート率は50%と高く、ロイヤルカスタマーにおいては年間200万円以上購入するユーザーも10数名います」と、佐藤輝英社長は話す。
ネットプライスの佐藤輝英社長
「ちびギャザ」成功の3大秘訣
「ちびギャザ」成功の秘訣は、(1)ユーザーニーズにあった商品セレクションと商品説明(2)参加者を増やす口コミ的な仕掛けのサイト(3)ユーザーの声をサイトに反映するなどが挙げられる。
商品ラインアップは、ネットプライスのマーチャンダイジング担当者10名によって決められる。会員からの商品リクエストを元に「はずれなしの欲しい物しかない商品」をモットーに商品選別をしており、それが功を奏している。商品説明も、商品のイメージを的確に表す説明と気の利いたコピーに気を配り、返品率は通常の通販商品の半分ぐらいですんでいると
いう。
口コミ的なサイトの仕掛けには、携帯電話の特徴である即時性を狙い、友達へ購入の勧誘ができるメールを簡単に送付できる仕組みを導入した。
また、ダイエット商品などユーザーの関心が高い商品では、ネットプライスの社員自らがユーザーの立場になって製品を使用。それを日記風に公開するなどエンタテインメント的なコンテンツも取り入れてユーザーニーズに答えている。
既存メディアとの連動で「メディアミックスギャザリング」
「ギャザリング」というオリジナル手法により、他社とは異なるモバイルコマースの位置を確立したネットプライス。今後はさらなるユーザー拡大に向けて、携帯電話での商品購入に慣れていないユーザーの囲い込みを図る考えだ。既に出版社と提携した雑誌連動型のモバイルコマースで市場の囲い込みに向けて動き始めている。
2001年11月から角川書店の女性向け情報誌「ChouChou」、2002年10月には「東京ウオーカー」を初めとした「Walkerシリーズ」8誌と提携。誌面で商品を閲覧後、購入を希望するユーザーが「ちびギャザ」上の企画専用サイトで商品を購入できるサービスを共同で実施している。雑誌連動による売上高は、合計で3000万円を超えているという。
4月には提携規模を拡大、同出版社の女性向け創刊情報誌「SEIRA」や「週刊ザテレビジョン」でも「ちびギャザ」を導入したサービスが始まった。同出版社の11誌との連動により、1カ月に1000万円の売上獲得を目指す。
提携先は出版社に留まらず、ラジオなどの既存メディアやモバイルの情報系大手サイトとのメディアミックスも進行中だ。
「今までの携帯電話で物販を行うノウハウを他メディアにあった連動手法によるギャザリングで拡大していきます」(前出佐藤社長)
モバイルコマースの市場が急拡大する中、「半歩先のビジネスを2倍のスピードで展開する」──佐藤社長が好んで使うこの言葉は、まさにネットプライスそのものの姿を映しているようだ。
著者プロフィール沢
里映:フジサンケイグループ日本工業新聞にて、ITベンチャー社長取材による企業の様々なITビジネスモデルを連載。他、小学館「DIME」、リクルート「アントレ」他でコンシューマ向けITサービスなどの記事も執筆
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ちびギャザ
[沢 里映, ITmedia]
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