Mobile:NEWS 2003年6月19日 09:43 PM 更新

書籍が抱える問題を解決する電子ブック

PDAやPCだけでなく、携帯電話にも進出が始まっている電子ブック。紙の書籍が抱える問題を解決できる部分もあり、相互共存に向けた試みが始まっている。

 文芸離れ、活字離れのためか、書籍業界が不振に陥っているという。本が売れないと文芸雑誌の生き残りが厳しくなり、さらには初版の部数が少ない書籍を出版しにくい状況に陥るなど、さまざまな問題が派生する。

 そんな紙の書籍が抱える問題を解決するきっかけが電子ブック──そう話すのは、NTTドコモが運営するM-stage bookで店長を務める安藤哲也氏。書店「往来堂書店」、オンライン書店「bk1」の店長を経て現職に就いた経験から電子ブックの可能性を語った。

 M-stage bookは、ドコモが運営するISP「モペラ」経由で利用可能な電子ブック販売サイト。PCやPDA向けに40出版社17ジャンルの作品約1700タイトルを配信、2003年4月のアクティブユーザーは約4400人ぐらいだ。定額制プラン「@FreeD」(3月6日の記事参照)の開始以降、時間を気にせず本を探せることからアクティブユーザーが倍近く伸びたという。

絶版本を救い、休刊雑誌を吸収する電子ブック

 紙の本に比べればまだ生まれたての電子ブックだが、その可能性はいろいろあると安藤氏。例えば絶版本や休刊雑誌の受け皿になれるのは大きいという。

 最近では書籍出版のサイクルが早まり、それほど古い本でなくても絶版になっていることがある。こうした書籍を電子ブックでアーカイブしておけば、増刷の印刷代などを考える必要なしに、いつでも読める状態にしておけるというわけだ。また最近は大きな書店にしか置かれなくなってきた文学全集なども、電子ブックなら棚を占有することなしにアーカイブしておける。

 休刊になった文芸誌の連載吸収先としても有効で、実際休刊になった「KADOKAWAミステリ」の連載は、「カドカワeマガ」として電子ブックに吸収された。作家ごとに選んで購入できる上、バックナンバーも読めるなど、電子ブックならではの部分を生かせた例だろう。

出版社側の意識に変化も

 電子ブックの初期には、著作権切れの古いものがラインアップされていたが、最近では紙の書籍と同時発売のものも増えていると安藤氏。M-stage bookでは、最近注目を集めている「新書」シリーズに注力しており、8社の「新書」を紙の発売と同時にリリースしているという。「時事問題に敏感なビジネスマンが何かを知りたいと思った時、電子ブックなら24時間どこからでも購入できる。おまけに電子ブックだと、ものによっては紙の書籍の7掛けぐらいで買えるのでお得」。

 最近では出版社側の意識も共存に向いてきているといい、出版社から提案を受けることも増えたそうだ。ここで例に挙がったのは日本放送出版協会(NHK出版)の「プロジェクトX」シリーズ。紙の書籍だと6編収録されて1700円のところを電子ブックでは1編100円で切り売りしている。「メーカー勤務の人などは、自分にかかわりのあるプロジェクトだけを読みたいという人も多い」ことから出版社側がこの方法を提案、それがユーザーメリットに合致して部数を伸ばしているという。

 また印刷の手間がないことから、リアルタイムな時事ネタを素早く出版できるのもメリット。最近では「SARS」に関する記事や記述をまとめたものを紙より速く電子ブックオリジナルでリリース、「紙のSARS本についても発売と同時に電子ブックで販売した」。

新マーケット開拓のためのメディアに

 文芸書や文芸雑誌のメインとなる読者層は50−60代が多く、若い人に伝わりにくくなっているのではと分析する安藤氏は、電子ブックのような新しいメディアを新マーケット開拓のためのメディアに位置づけてほしいと考えている

 今後は電子ブックならではの音声や動画などを取り入れたコンテンツの充実や、魅力的な切り口の棚作りを図りながら、2003年3月までに3000タイトルのラインアップを目指す。



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[後藤祥子, ITmedia]

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