Mobile:NEWS 2003年6月19日 10:29 PM 更新

フラッシュメモリからOUMへ〜Intel Stefan Lai氏に聞く

年々倍増する携帯向けフラッシュメモリ市場を狙うメーカーは多い。現在NOR型フラッシュメモリで最大手のIntelは、今後のフラッシュメモリ動向をどう見ているのか。また次世代の不揮発性メモリ「OUM」の進み具合はどうなのか。

 携帯電話向けフラッシュメモリの最大手、Intelは今後のフラッシュメモリの動向をどう見ているのか。現在0.13μメートルで作られているフラッシュメモリの今後の進化、そして将来の不揮発性メモリとして研究を進めているOUM(Ovonics Unified Memory)の動向を、米Intelの技術・製造本部副社長兼カリフォルニア技術・製造部門ディレクタのStefan K.Lai博士に聞いた。

ZDNet:90ナノメートルのフラッシュメモリ製品の進み具合は?

 「技術的にはうまく進捗してます。今年ペーパーをIDFに提供する予定です。もう1つ取り組んでいるのが90ナノメートルのStrataFlashの開発です」

ZDNet:IntelのNOR型に対して、NAND型の勢力が増していること、AMDの4ビット多値などの新技術についてどのように考えているのか。

 「メモリでもロジックでも当てはまる話ですが、微細化するのがだんだん難しくなってきています。NORフラッシュに関しては、既に65ナノメートルの開発を始めているし、研究室段階においては45ナノメートルも検討しています。確かに技術的な課題はありますが、問題を解決していけるという自信を持っています」

 「NAND技術についても、微細化の面については課題は類似している部分が多い。NANDやNORについて、これからもムーアの法則が少なくとも2世代は続いていくと感じています」

 「同時に新しい技術が開発されています。AMDや富士通、Infenionなどがさまざまな取り組みをしているわけです。ただし私は困難なチャレンジであると見ています。Intelの研究によると、彼らの取り組みは、セル構造の関係で微細化にはさらに難しい課題が存在すると考えています」

ZDNet:NANDとNORを比較した場合、NOR型のメリットを今どのように見ているのか。

 「NANDとNORのコストの差について質問がよくありますが、Intelの研究によると、StrataFlashでは同等のセルサイズならばコストもほぼ同等という結果が出ています。従って、StrataFlashのNOR技術はNANDと比較してもほぼ同等のコストといえるわけです。製品という観点でもStrataFlashはフィーチャーが豊富で、ファーストモードやシンクロナスモードなどを備えている。一方NANDのほうは非常にシンプルでシリアルリード的なものです」

 「従ってStrataFlashは競争力のあるメモリシステムになります。一種類でコード向けにもデータ向けにも競争力があります」

ZDNet:NOR型でもStrataFlashならばNANDに対してコスト競争力があると?

 「確かに、NANDのほうがビットあたりのコストとしては現在少し低い。ただし同じ密度でより小さなチップを作ることができるという点でStrataFlashに競争力があります」

ZDNet:フラッシュメモリの大きな市場である携帯電話で、大容量化が進んでいます。NANDに対する技術的な脅威はありませんか?

 「NORのほうがリードタイムが非常に短く、80ナノ秒で読める。NANDのほうはまだ単位がマイクロ秒です。そのためNORはプログラムを実行するメモリとしても使えるが、NANDはまだ使えません。内部メモリとして、NORのほうがコードに関するパフォーマンスの点で有利です。一方、リムーバブルメモリについてはリードが高速でなければいけないといった条件はないため、NANDのほうが向いていると言えるかもしれません」

 「確かにNANDのサプライヤーが携帯分野に参入しようとしていることに対する脅威はあります。しかしそこで彼らが提供しようとしているのはNAND+DRAMの製品です。原則として2つのチップを作るほうが、1つのチップを作るよりもコストがかかります。Intel製品のほうが、コストとしては同等でありながら、パフォーマンスおよび消費電力の点でより優れています」

OUMはスケーリングの制約がない。コスト削減が課題

ZDNet:StrataFlashが今後も優勢であるならば、研究を進めているOUMの出番がないようにも感じるが。

 「今後の微細化については、フラッシュ技術でもいろいろな課題があります。65ナノメートルについては自信を持っていますが、現在の焦点である45ナノメートルについては達成できていない。そこで、コスト効果の高い製品を提供するために2つの道筋を考えています」

 「1つがStrataFlashに対して継続的に技術開発を進めていくこと。2つ目が新しい技術、例えばOUMに取り組むということです。OUMは微細化を進める上での制約が少ないことが研究の結果分かっています。将来32ナノメートルとか22ナノメートルになったときも、よいソリューションを提供できます」

ZDNet:OUMの技術的取り組みで進展は。

 「今の取り組みはいかにコストを下げるかです。セルあたりのコストは少ないが、StrataFlashと比べるとまだ高い。今、仮にOUMの製品を投入すると、コストの点でまだ優位性が出せない」

ZDNet:OUMは熱によって相転移を起こして情報を記録するメモリです。“熱”の問題について教えてほしい。

 「OUMはメモリとしては本質的に非常に簡単なものです。構造を作るとそれがメモリとして機能する。ただしスイッチングのためにどれだけパワーを必要とするかが課題です」

 「例えば第1世代のOUMのスイッチングは、フラッシュメモリと比較して3倍から5倍のパワーが必要となる。これを少なくとも同等くらいにしたい。スイッチング電流を下げるには方法としては2つあります。1つはコンテンツの面積を小さくするということ。もう1つはインシュレータによる絶縁です」

ZDNet:5年後、10年後、OUMがフラッシュに置き替えられそうな技術だという手応えはありますか

 「まだまだ調査段階で、OUMの実際の製品計画はありません。まずはコストという点に取り組まなくてはなりません。現時点ではまだ十分なことが分かっていないと考えています」



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[斎藤健二, ITmedia]

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