Mobile:NEWS 2003年9月16日 08:57 PM 更新

“周波数はビジネス”〜電波を巡る各国の思惑

携帯や無線LANに利用する電波は有限。しかしこれまで割り当ては事務的に決まることが多かった。世界共通で周波数を決めることが増えると共に、周波数の割り当て自体がビジネスとして使われることも。今後は戦略的な周波数割り当てが求められる。

 携帯電話、無線LANといった無線通信にとって、技術の進歩以上に重要なのが“電波の割り当て”だ。しかし、電波資源は有限であり、国境に関係なく届いてしまうことから、電波──周波数の割り当てはなかなか難しい。

 ITUのRA-2003(Radiocommunicarions Assenbly 2003)の議長を務めたKDDIの伊藤泰彦専務が9月16日、総務省と情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)主催のシンポジウムで、無線通信のための周波数の国際分配について講演した。

一番大きな周波数ビジネスは携帯電話

 「周波数はビジネス」──これを最もよく表すのが、IMT-2000こと第3世代携帯電話(3G)を巡って各国で行われた周波数オークションだ。

 3G携帯電話は当初、世界中どこでも使えることを前提として規格が作られた。当然、利用する周波数帯域も2GHz帯に統一される予定だった。ところが、問題は米国に起こった。「(2GHz帯を)PCSに割り当てて、しかもオークションにかけて売る」(伊藤氏)。これにより、2GHz帯に世界共通の周波数はなくなってしまった。


 しかも、この米国の行動が「周波数ビジネスに火を付けた」。米国は1996年、全国をBTA(基本通商地域)と、複数のBTAからなるMTA(主要通商地域)に分け、MTAの周波数帯をA、Bバンド、BTAの周波数帯をC〜Fとし、1850MHz〜1990MHz帯を六つに分けてオークションを行った。

 Aバンド、Bバンドは77億ドル(約9200億円)という値で収まったものの、Cバンドは120億ドル(約1兆4000億円)と高騰。加入者一人あたり10万円(KDDI試算)という膨大なものとなった。当然のように免許料の支払い停滞から経営破綻する企業も現れている。

 2GHz帯をオークションでライセンスした欧州も似た状況だ。2000年4月、1900MHz〜2170MHzをオークションにかけた英国では、British Telecom(BT)やVodafoneなど5社が合計224億7740万ポンド(約3兆7800億円)で落札。3Gサービス提供のラストチャンスということで、落札総額は予想の15倍に達した。ドイツでも2000年8月、6事業者が落札総額5.8兆円で落札と高騰した。

 伊藤氏によると「BT幹部は、ここで免許を取らないとサドンデス。取るとスローデスだ」と、進むも引くも難しい現状を嘆いていたという。

 高額なライセンス料の支払いのため、3Gサービス自体への投資もままならず「免許を売ってしまったり、倒産してしまう」企業も出始めた。

 こうした状況を危惧したフランスでは、ライセンス料を1免許6000億円と決めたが事業者が決まらず、2001年9月には750億円(プラス、3Gサービス売り上げの1%)に値下げした。しかし、募集4社のうち3社しか決まっていない。

 ライセンス料は国債償還に使われるなど、国民の共有財産としての電波周波数は有効に活用されたが、事業者の疲弊は甚だしく、3Gサービスがなかなか立ち上がらない原因となってしまった。


オークションなしで決まった日本

 オークションによって膨大なライセンス料を徴収できた米国や欧州と異なり、日本では比較審査もなく3事業者に2GHz帯が割り当てられた。急速な3Gサービスの立ち上がりは、欧州とは対照的だ。

 とはいえ日本も“無料”というわけではない。電波利用料が徴収されているからだ。これは端末1台あたり1年で540円で、合計すると年間で430億円となる。「事業者の負担にもならない。非常にいい」(伊藤氏)

 とはいえ、テレビやラジオなども含めたさまざまな電波利用者が支払うはずの電波利用料が、実質的にほとんど携帯電話事業者からの支払いで占められている(2002年8月の記事参照)。「83%が携帯から支払われている。いろいろな利用対象があるが、はたして公平かという意見もある」(片山虎之助総務大臣)


各国の思惑乱れる5GHz帯

 携帯以上に各国の思惑が乱れ、混乱しているのが無線LAN向けの5GHz帯の割り当てだ。WRC-03で世界共通の無線LAN用周波数を5GHz帯に割り当てる検討が行われた。

 日本で屋内向けに使われている5150MHz〜5250MHzに加え、5250MHz〜5350MHz、5470MHz〜5725Mzが対象だ。

 ところが5250MHz〜5350MHz帯の屋外利用を認めるかどうかで、欧州と米・カナダが対立している。「米国は屋外での利用を進め、欧州は屋内に限った方がいいという意見」(伊藤氏)。気象レーダーとの共用が懸念されるためだ。反対に5470MHz〜5725Mz帯は「米国が屋外利用はまずい」というスタンスだ。


日本では、4900MHz〜5000MHz、5030MHz〜5091MHzが屋外向けに開放されている(2002年8月の記事参照

 国民の重要な資産であり、例えばオークションなどを行えば莫大な収益を産むのが“周波数”だ。そして、今や1国の都合で割り当てを決められないのも周波数。各国の思惑が入り乱れ、先を読んで割り当てを提案していかなくてはならない。

 伊藤氏は「周波数は戦略的に割り当てるべきだ」と主張する。総務省によると、周波数の扱いはこれまではかなり事務的だった。ビジネスの盛衰に合わせて柔軟に再割り当てを行うこと、ブロードバンド系は光ファイバーに任せ無線は移動体通信を中心にすること。戦略的な動きが今後求められる。

 「周波数は有限。しかし上手に使えば電波は無限」(伊藤氏)



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関連リンク
▼ 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)

[斎藤健二, ITmedia]

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