迷走する日本の番号ポータビリティ(2/2)
もう一つの論点は、番号ポータビリティ導入のコストだ。試算によると、設備投資が915億〜1487億円、ランニングコストが年間13億〜47億円と見積もられている。このコストを誰が負担するのかが、問題のひとつだ。 番号ポータビリティ利用者だけが費用を負担した場合、「導入コストを賄うことは困難。番号ポータビリティを利用しないユーザーにも影響が出る」としたのはKDDI。
こうした運用コストをキャリアが負担することになる結果、「値上げにならなくとも、料金値下げができなくなるなど、最終的には全ユーザーに(コストを)負担してもらうことになる。必ず影響が出る」とドコモも言う。 ボーダフォンはMNP導入を前提として、費用負担については別途詳細な議論の場が必要だというスタンスだ。「MNPは携帯キャリアを変更したユーザーへの着信通話を容易にするため、すべての発信者にメリットがある。この点を考えると、固定や携帯、PHSを含めたすべての発信者から広く薄く(コストを)回収することも考えられる」
こうした携帯キャリアの意見に対して、たとえ事業者に一時的にコストがかかっても、最終的には利用者のメリットが生かされる、という意見も各有識者から出された。
「(キャリアの)大方の意見は番号ポータビリティ導入をやりたくない。理由はお金がかかること。そんな矮小な議論でまとめるのはまずいのではないか」 ポイントは番号ポータビリティ導入によるキャリアの競争促進。それによる利用者全体のメリットにありそうだ。 導入の仕方にもよるが、番号ポータビリティを導入した国では、香港のように導入4年強で全体の90.3%が利用したというところもある。番号ポータビリティの導入によってキャリアを移りやすくなり、その結果各社が料金値下げや付加サービスに力を入れやすい環境が整う。やり方は少々違うが、マイライン導入時のような状況を作り出して競争を激化させることでユーザーメリットを生み出そうという考えだ。 「日本の場合、既に相当競争が機能している。番号ポータビリティなしでも、年間1000万規模のユーザーがキャリアを変更している」という意見もKDDIから出された もう一つ、利用者全体のメリットも考えなくてはいけない。キャリアの設備投資単体では確かにコスト増になるが、総便益はそのコストを上回る可能性もある。 総務省の参考資料によると、番号ポータビリティを導入した世界各国の場合、総便益からコストを引いた純便益は数百億円に上る。「人口が2倍から4倍ある日本で番号ポータビリティを導入すれば、総便益はこれらをはるかに凌ぐのではないか」という想定も成り立つ。
日本で番号ポータビリティを導入した場合の総便益については試算がなく、次回の研究会に持ち越されることになった。この試算結果が出てくれば、コスト面から見ても“番号ポータビリティを導入すべき”という結論に近づく可能性もある。
総務省や有識者たちが「番号ポータビリティ導入」を前提にしているのに対し、携帯キャリアは「番号ポータビリティが必要かどうか」を中心に意見を述べている──。そんな印象を持った研究会だ。議論がすれ違うのも無理はない。 インボイスの木村育生社長の発言も面白い。「ボーダフォンだけが(番号ポータビリティを)導入して、他キャリアからボーダフォンへは番号を変えずに移行できるとなったら、どんどんボーダフォン契約者が増える。それが現実」。 実際には、設備の都合もあって1社だけの導入は難しい。しかし規模の大きいキャリアほど、番号ポータビリティによってユーザーのキャリア変更が促進されるとダメージが大きい。「番号ポータビリティはコストの問題ではない。ユーザーが本当に事業者を選べるようになるということ。今は一度番号をもらうとキャリアに隷属──ロックインされることになる」という発言もあった。 ともあれ、番号ポータビリティは「やろうと決まってから3年はかかる」(KDDI)というのが一致した見解。この研究会で議論が早期に決着したとしても、実現は2006年頃になる。
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