Mobile:NEWS 2003年11月26日 03:16 PM 更新

携帯ショッピングの現状と可能性(1)
携帯で買い物するのはどんな人?

市場規模は1000億円以上と急成長を遂げる携帯ショッピング市場。「ちびギャザ」では既にPCサイトの売り上げを抜いた。楽天では商品が携帯サイトにも自動登録される仕組みを用意している。サイト運営者は「利用者はPCサイトより5−10歳若い」と話す。

 市場規模が1000億円を超えたといわれる携帯ショッピング市場。およそ2兆円の市場規模というPCのWebショッピングには及ばないものの、急速に市場は拡大、ニーズも高まっている。携帯ショッピングに力を入れているサイトの中には、月商約3億円を売り上げるショップも現れている。

 PCに慣れ親しんだユーザーから見れば、商品の表現力や検索性に乏しく、入力もしづらい携帯電話が、なぜこれほどの人気を博しているのかが疑問にも思える。携帯ショッピングの現場では何が起こっているのだろうか。

利用者の年齢層は、PCサイトより10歳若い

 「ケータイ版楽天市場」や「ちびギャザ」など携帯ショッピング運営者が特徴として挙げるのは、利用者の年代層の山がPC版ショッピングサイトのユーザーよりも5−10歳ほど若いことだ。

 「携帯電話が普及している層とショッピング意欲の高い層とがうまく重なった20歳代後半から30代前半の女性層が、携帯電話ショッピング市場をけん引している」というのが「ちびギャザ」を運営するネットプライスの伊藤直氏社長室長の見方だ。

 携帯ショッピング利用者の年齢層のピークは、大体25歳から30歳前半、そして女性の利用者が大半だという。携帯メールを多用する年代であり、身近なネット接続手段が“PCより携帯”という世代だ。こうした世代は携帯電話の狭い画面上で商取引することに抵抗感がそれほどないようで、毎月5割強のユーザーがリピーター客で占められるという。

 携帯ショッピングサイトの利用が集中する時間帯は、お昼休み時間や18時以降。18時から深夜1時にかけてアクセス数は伸び続ける。この利用傾向を踏まえ、楽天の楽天事業カンパニー 開発本部プロデューサーの牛山典子氏は、「ユーザーにメール配信などのプロモーションをかけるなら、お昼や夜が効果的。コンビニに行くような時間帯を狙うのがコツ」と話す。

リラックスした姿勢で“ながら購入”

 もうひとつ、携帯ショッピングサイトのユーザーに見られる特徴的な購入スタイルに、“ながら購入”があげられる。商品の豊富さと、検索のしやすさが特徴の「ケータイ版楽天市場」では、テレビで今見た気になる商品を手元にある携帯電話を使って検索し、“テレビを見ながら”購入するようなシチュエーションも見られるという。

 一方、雑誌媒体と連動して展開される「ちびギャザ」では、就寝前にベッドの上で雑誌を読んでいる中で、欲しいと思った商品を“雑誌を読みながら”“寝ころびながら”購入するシチュエーションも多い。

 携帯ショッピングの優位性は、リラックスした状態で購入できる点にあるともいえそうだ。PCのように電源を入れてから起動するまでに時間がかからず、思いついた時に思いついた場所で即購入手続きを行える。携帯ショッピングサイト運営側にとっては、販売機会を逃さないというメリットがある。

 携帯電話ユーザーは、思い立ったらいつどこでもすぐにアクセスできる状態にある。つまり運営者が購買に結びつくプロモーションなどのアプローチをうまく行えば、PCより断然素早いレスポンスを期待できる環境が整っているということだ。

 携帯電話は、インターネットに対して“スタンバイツール”であるとともに、“アクションツール”でもある。この中で、どのようにショッピングサイトへ誘導し、購買までのアクションを起こさせるか、ここが携帯ショッピング運営者の腕の見せどころである。

ケータイショッピングが好調な「楽天市場」と「ちびギャザ」

 ケータイショッピング市場で注目なのが「楽天市場」と「ちびギャザ」。いずれもPC向けと携帯電話向けのショッピングサイトを展開している。どのような工夫で成功をおさめたのかを聞いた。

「楽天市場」の全商品がケータイでも買えるように

 楽天が携帯電話版のショッピングモールを立ち上げたのは、2000年9月。同社によれば、2001年度第1四半期には約7000万円であったモバイル流通総額が、2002年度の第1四半期には約2億8000万円、2年後の2003年度第1四半期は約5億5000万円と、急成長を遂げる。

 携帯電話のネット接続環境も整い、端末の普及も十分と見た楽天は今年3月、「ケータイ版楽天市場」を大幅にリニューアルした。

 リニューアルでは、出店する店舗が携帯版のショップサイトを容易に構築できるツールを提供。従来はオプションとして提供されていた「ケータイ版楽天市場」の構築ツールが、リニューアル後は、1個の商品を登録するとPC版サイト、携帯版サイトの両方で自動的に生成されるようになった。そのため「PC版楽天市場」に出店するすべての店舗が、「ケータイ版楽天市場」にも出店することになり、「ケータイ版楽天市場」の店舗数、商品点数はPCサイトと同等になった。「ケータイ版楽天市場」にポイントプログラム制度も取り入れるなど、本格的な携帯ショッピング市場開拓に乗り出したかっこうだ。

 楽天の楽天事業カンパニー 開発本部プロデューサーの牛山典子氏は、「今後早いうちに、月商10億円の規模へ引き上げたい」と強気だ。

 「ケータイ版楽天市場」の特徴は商品点数の多さにある。品揃えもバラエティに富み、このモールを覗けばほとんどの商品が見つけられるという百貨店的な要素が強い。検索機能が充実しており、キーワードやカテゴリー検索によって各店舗の商品が一覧表示されるため、店舗をまたがって、お目当ての商品について価格などの条件で比較検討することも可能。ウィンドウを複数開いたりすることができないケータイ画面の中でも、テキスト情報で商品を並べて見られるのは便利だ。

 PC版とケータイ版ショッピングモールは連携され、会員登録をどちらか一方で済ませておけばIDを使ってログインできる。ポイントが貯まるシステムなども共通で利用可能だ。

PC版ショッピングサイトをしのぐ「ちびギャザ」

 一方、楽天同様にPC版と携帯対応版の両ショッピングサイトを運営するネットプライスでは、購入者が多く集まるほど商品の販売価格がどんどん安くなるという、独自の買い物方式「ギャザリング」が特徴。2000年の1月にPC版サイトを立ち上げ、iモード利用者が500万人程度の規模であった同年9月に携帯対応版サイト「ちびギャザ」を開設した。携帯版サイトは当初苦戦し、スタート時期の月商はたった6万円ほどだったという。ネットプライスは苦肉の策として、雑誌広告などでプロモーションを行い、認知度を高めながら、利用者を集めることに尽力した。2年後の2002年初め頃には月商1億円となり、現在は月商2億8000万円、四半期では約8億円規模までに成長。PC版をしのぐサイトとなった。

 最近では角川書店らと提携し、「東京ウォーカー」や「シュシュ」といった若者向けの雑誌媒体とのメディアミックスを展開。ネットプライスに所属するバイヤーが各媒体にふさわしい商品をピックアップし、雑誌で商品を紹介する。雑誌読者は、気に入った商品が見つかれば、携帯電話で専用サイトにアクセスし、ネット上で申し込みを行える。



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[中村実里, ITmedia]

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