5Gが本格スタートする2020年、携帯キャリアのトップが語る戦略
2020年を迎え、携帯キャリア各社のトップが年頭所感を発表した。2020年の一大トピックは、いよいよ日本で5Gの商用サービスがスタートすること。各社は5G時代にどのようなアプローチで差別化を図っていくのだろうか。
2020年を迎え、携帯キャリア各社のトップが年頭所感を発表した。
2020年の一大トピックは、いよいよ日本で5Gの商用サービスがスタートすること。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは2019年にエリアや利用シーンを限定する形で5Gのプレサービスを実施しており、着々と準備を進めている。2020年春の商用サービス開始に先駆けて、5Gに対応した端末、料金プラン、サービスが発表されるだろう。
もう1つが、MNO(携帯キャリア)に新規参入した楽天モバイルが、本格サービスを始めること。同社は2019年10月に商用サービスを開始したが、ユーザーを5000人に絞った「無料サポータープログラム」と限定的な内容で展開している。同プログラムは遅くとも2020年3月31日の終了を予定しており、2020年4月には本格サービスを開始する。そこで発表される料金プランの内容によって、他キャリアがどう動くかも注目ポイントといえる。
NTTドコモ:ギガホとギガライトを磨き上げる
ドコモの吉澤和弘社長は、2019年は外部環境の大きな変化に対応すべく、さまざまな取り組みを実行したと振り返る。6月には新料金プランの「ギガホ」「ギガライト」と、残債免除プログラム「スマホおかえしプログラム」を開始。9月にはラグビーワールドカップに合わせて5Gプレサービスを開始し、商用サービス開始を前にして「実質的なスタートを切った」と評価する。2019年度の業績は、年間業績予想に対して「順調に進捗(しんちょく)している」とのこと。
5G商用サービスを開始する2020年は、ドコモにとって「新時代の成長に向けたスタートの年」と位置付ける。それに際して「(1)お客さまにさらなる価値をお届けする」「(2)5Gなどを起点に社会の成長を加速する」という2つを重要視する。
(1)については、ギガホとギガライトをさらに磨き上げるとともに、デジタルマーケティングを活用したユーザー接点を強化していく。ギガホとギガライトでは、「ディズニーデラックス」や「Amazonプライム」を期間限定でセットにする特典を提供している他、2020年1月からはギガホのデータ容量を30GBから60GBに増量するキャンペーンも実施。2020年も、コンテンツやサービスのセット割や、容量増、あるいは使い放題につながる進化が期待できそうだ。
3Gケータイの利用者に対しては、スマホ教室や端末設定サービスなどを通じて、5G・4Gスマートフォンへの移行をスムーズに進めるようサポートする。決済面では、dポイント、dカード、d払いなどを組み合わせて、お得や便利さを訴求していく。
(2)については、3000を超えるパートナーとの協創により、社会の成長を加速させていくと意気込む。個人向けには映像系を中心としたサービスを拡充し、法人向けには事業や社会の課題解決につながるソリューションを提供する。東京2020オリンピックに向けて、「安心・安全で快適な通信サービスを提供する」という通信事業者の使命をしっかり果たし、大会運営に貢献していくと表明している。
KDDI:5Gの技術が本質ではなく、ビジネスをどう変えるかが重要
KDDIは、2019年5月に中期経営計画(2019年~2021年度)を発表し、新たな3カ年計画を始動させた。ブランドスローガンはKDDIが「Tomorrow, Together」に、auが「おもしろいほうの未来へ。」という5G時代を見据えた内容に変更した。また、同社の目指す姿として「お客さまに一番身近に感じてもらえる会社」「ワクワクを提案し続ける会社」
「社会の持続的成長に貢献する会社」を掲げ、高橋誠社長は「まだまだ課題はあるものの、皆さんの理解のもと順調に進んでいる」と評価する。
一方、2019年10月には電気通信事業法が改正され、新規事業者(楽天モバイル)の参入もあり、「それぞれの対応に奔走した」と高橋氏は振り返る。
5Gサービスが始まる2020年には、「次世代のネットワークを始動させる」と意気込む。高橋氏は5Gについて「技術の特徴が本質ではなく、ビジネスモデル自体が大きく変化すると理解することが重要」と訴える。新たなビジネスモデルによってユーザーに持続的な体験価値を提供することで、事業が維持、成長する――と同氏は説く。
KDDIが中期経営計画で目指している「通信とライフデザインの融合」によって「グループID×エンゲージメント×総合ARPA(1人あたりの月間売り上げ)」を最大化させ、5G時代のテクノロジーやビジネスモデルを活用したイノベーションを起こすことで、優位に競争することを目指す。
高橋氏は2020年度の会社方針として「5G時代始動!!」「通信を核としたイノベーション創出と人財ファースト企業への変革」「大いなる変化の時代をリードしうる持続的成長の追求」を発表した。
ソフトバンク:新本社の地区でスマートシティー構築に取り組む
ソフトバンクの宮内謙社長兼CEOは2019年について、「Beyond Carrier」戦略の実行に取り組み、今後10年に布石を打ってきたと振り返る。
通信事業については「ソフトバンク」「Y!mobile」「LINEモバイル」の3ブランドでポジションを確立し、顧客基盤を堅調に拡大できたと評価する。一方で「1億総スマホ」の時代に向けてまだ成長の余地は大きいとみる。その際にカギを握るのが、「さまざまなネットサービスが集約されたスーパーアプリ」だという。また、ヤフー(現Zホールディングス)の子会社化やZホールディングスとLINEの経営統合に向けた合意など、グループ全体でBeyond Carrier戦略を推進してきたと振り返る。
5Gについては、2020年3月末ごろから商用サービスを始めると予告。これまでの、人と人がつながる世界から、人とモノ、モノとモノがつながるIoTの世界になり、そこから得られるビッグデータの活用が企業の発展において重要なカギになると同氏はみる。ソフトバンクは5G、IoT、AIの3つを軸に新たなビジネスモデルを創出するとともに、社会課題の解決を目指す。
2020年秋に本社を移転する竹芝地区では、新本社をAIやIoTを活用したスマートビルにしながら、街全体で5Gやモビリティー、ドローン、ロボティクスなどを活用するスマートシティーの構築にも取り組んでいく。
楽天:これまでにないようなモバイルサービスを届ける
楽天は通信事業を行う「楽天モバイル」としての年頭所感はなく、グループを代表して楽天の会長兼社長の三木谷浩史氏が年頭所感を発表した。
三木谷氏は携帯事業について「完全仮想化クラウドネットワークによる携帯キャリアサービスを本格的に拡大していく。大きなチャレンジとなるが、楽天グループの総力を結集して、これまでにないようなモバイルサービスを消費者に届けたいと思う」とコメントした。ネットワークの仮想化だけでなく、「料金」や「サービス」などのユーザー目線においても、「これまでにない」を体現することに期待したい。
UQコミュニケーションズ:オリンピックに備えて屋内外で快適な通信サービスを提供する
UQコミュニケーションズは、2019年6月に菅隆志氏が社長に就任。「つなぐで、感動を。安心、快適、高品質なサービスをみんなのものに」をスローガンに掲げ、WiMAXとUQ mobileの発展に取り組んできたと振り返る。
UQ mobileでは、高機能かつ手頃なスマートフォンを取りそろえ、新料金「スマホプラン」やライフデザインサービス「UQでんき」等を導入するなど、「お客さま一人一人のライフプランに寄り添ったサービスを拡充してきた」と評価する。
WiMAXサービスでは、下り最大1Gbps超に対応するルーターを発売し、混雑エリアで速度低下を防ぐ新技術「Massive MIMO」を横浜スタジアムなどの大型施設向けに導入した。
東京オリンピックとパラリンピックが開催される2020年には、訪日外国人が増えることが予想されるため、多くのユーザーに屋内外で快適な通信サービスを利用してもらえるよう、準備を進めていく、と意気込んだ。
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