「モバイルコンテンツもまだまだこれから」──。KDDIのコンテンツ・メディア本部長の高橋誠氏は、携帯向けデジタルコンテンツ市場の伸びが止まったとささやかれることに強く反論した。
6月28日にコンテンツ・メディア本部の移転に伴って開かれた勉強会で話した。
ドコモは「携帯のマルチメディア化もいきつくところまで来た。これ以上はニッチ」と話す。今後は非接触ICチップFeliCaを搭載した“iCシリーズ”を普及させ、携帯コンテンツの代名詞であったiモードをリアルとの連携に結びつけていく考えだ(6月17日の記事参照)。
対するKDDIは、「5年目になったのでビジネスモデルを変えていかなくてはいけないのは分かっている。しかしコンテンツがおしまいなんじゃないの、というのは大間違い」だと、今年もデジタルコンテンツに注力していく方針だ。
ドコモとKDDIの携帯ビジネスに独自の“色”が出てきた背景には、パケット定額制への取り組みに対する温度差がある。ドコモが定額制向けコンテンツを全く用意しなかったのに対し、KDDIはEZチャンネルなど定額制を前提としてコンテンツ展開を図ってきた。
「今年、定額制ならではのコンテンツに力を入れていく。まだ成長期にあるのでどんどんやっていく」と高橋氏。
定額制導入以降、auユーザーのコンテンツ利用は着実に増えている(3月18日の記事参照)。1X WINユーザーの月間有料コンテンツ料金は平均で750円程度と「ドコモと違って、上がり続けている」(高橋氏)。
調子がいいのは着うた、着ムービーだ。定額向けのリッチコンテンツは、“音楽”をキーワードに、着うたのさらなる強化を予定している。「着うたのロングバージョン、フル楽曲も視野に入れて検討している。着うたの延長線でできることがあるんじゃないか」(高橋氏)。今年7月には、着うたの累計ダウンロード数が1億を超えそうだという。
もう1つの方向としては、KDDIがこのところアピールしている携帯の“メディア化”だ(5月28日の記事参照)。
1つは、テレビ的な番組配信サービスEZチャンネルを使い、自社で携帯をメディア化していく方向。「我々のインフラ自体がメディアにならないか。携帯がメディア価値を持つ可能性は十分にある」(高橋氏)。
EZチャンネルの番組をトリガーとして、コンテンツをダウンロードさせたり、Eコマースにつなげる。また7月1日からスタートする「ポケット(C)ネル」(ポケットチャンネル)では(6月24日の記事参照)、実験的に15秒のスポット動画CMを配信するほか、土曜日の番組配信は販売枠として利用する。
目指すのは、いわば携帯上のテレビ局となるだろう。「収入はKDDIに落ちる。メディア化というのはそこの収入を拡大していくということ」(高橋氏)。
2つ目は、既存のマスメディアとの連携を深めていくことだ。KDDIはFMラジオ付き携帯電話を発売する際に、ラジオで流れている楽曲の着うたをダウンロードできる仕組みを作り上げた(2003年9月24日の記事参照)。この仕組みが月間コンテンツ利用料金700円程度をもたらすなど好調だ。
この成功体験を元に、2005年度といわれる地上デジタル放送対応の携帯電話にも積極的(5月12日の記事参照)。「FMケータイと同様のビジネスモデルを想定しながら検討中。他社に先駆けてやっていきたい」(高橋氏)。
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