富士通、Push-to-Talk対応の携帯電話を試作

» 2004年07月07日 22時36分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 携帯電話をトランシーバーのように使う──。こんな使い方を可能にするのがPush-to-Talkと呼ばれる技術だ。大手携帯電話メーカーのEricsson、Motorola、Siemensが相互運用テストを開始するなど、欧米やアジアを中心に普及の兆しが見える(3月17日の記事参照)。

 Push-to-Talkは、IPネットワーク上で通話を可能にするVoice over IP(VoIP)をベースにしたサービス。電話回線ではなくデータ通信網を使った通話になるため、通話料金を低減できる可能性を秘めている。

 そうした中、富士通は携帯電話上でもPush-to-Talkを利用可能なサービス基盤を開発、「富士通ソリューションフォーラム2004」でデモを行った(6月29日の記事参照)。

会場では、同社のPocket PC「Pocket LOOX」を使ったデモを実施。「(パケット網を使うため)通信事業者を問わず、CF型通信カードを挿せば(トランシーバー機能を)使える」(富士通モバイル・ソリューション事業推進室長の塚原哲矢氏)。富士通のPush-to-Talkは、同社のプレゼンスサービス基盤「FLAIRINC」(フレアリンク)をコアに使う(4月16日の記事参照)。セッションの管理をFLAIRINCに集中させることで、競合他社のPush-to-Talkシステムに比べてよりリアルタイムな通話が可能になるという

Push-to-Talkが使える携帯電話の試作機を既に開発

 Push-to-Talkのメリットは、通信コスト以外にもある。通常の1対1の通話だけでなく「1対多人数」の通話が行える点だ。ただしパケット網上では遅延などから、リアルタイムでの会話に支障があるため、同時に2人が話すことはできない。誰かが話し終わるのを待って、「私が話しますよ」という意思表示を行ってから(話者権を取る)、話すことになる。

 遅延は大きな技術的課題の1つだが、富士通は「遅延を少なく見せかける技術」(同社モバイルソリューション事業推進室長の塚原哲矢氏)を使って対応している。

 携帯電話事業者ごとに異なる遅延特性が、通話品質に影響しないのも特徴の1つだ。「FLAIRINCが、その時々のクライアントの振る舞いを動的に検知して対応する。例えば(ドコモ、au、ボーダフォンなど)異なる携帯電話事業者のユーザーが混在する状態で使っても、(レスポンスの遅れなどの)影響は出ない」(塚原氏)。

 2.5G、3Gといった世代の違いにかかわらず導入でき、いずれの通信事業者でも導入が可能だという。異なるキャリア間のローミングも技術的には可能で、対応は「キャリアのサービス次第」としている。

 携帯電話網での利用にあたっては、端末側に対応したソフトを入れる用意する必要がある。「インターネットに出ていく手段がHTTPベースとなる現行のiモードJavaでは対応できない」(説明員)ため、ドコモ端末に機能を付加するためには、組み込みで対応することになる。「(自由な通信プロトコルを利用できる)au端末のBREWなら、BREWアプリでPush-to-Talk機能を付加できる」(説明員)。

 キャリア名は明かされなかったものの「今後、携帯に載せる予定がある」と説明員。既に携帯電話型端末の試作機も開発済みだという。

 Push-to-Talkは、ドコモの中村維夫社長が「方向としてはやりたいと思う」と期待を寄せるなど(6月21日の記事参照)、日本の通信事業者も注目している。

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