おサイフケータイ第1弾として登場する「P506iC」には(7月7日の記事参照)、暗い場所での撮影に威力を発揮する本格ストロボ付きの195万画素カメラが搭載されている(6月16日の記事参照)。実はカメラ機能の向上はこれだけはない。レンズ部分に「メカシャッター」が装備されたのだ。
これは「高照度の被写体を撮影した際のスミア現象を改称するなど、デジカメに近い高画質な撮影を可能にするための機能」だとパナソニック モバイルコミュニケーションズのプロジェクトマネジメント室でプロジェクトマネジャーを務める、佐伯年宏氏。
「銀塩のカメラは通常、メカシャッターを開閉することで露光時間を決める。CCDにも画像を露光する電子的な機能を備えているが、メカシャッターを付ければ、より正確な露光条件で映像を取り込む処理ができる。シャープな絵が撮れる構造になっている」(佐伯氏)
これまでは電子シャッターが下りたタイミングで電子的に絵を取り込んでいたが、メカシャッターを付加することで、いったん絵を止めてから取り込めるようになる。「ある時点で機械的にシャッターを下ろしてしまえば、そこから新しい光が入ってこない。それぞれが同じタイミングの光を反映できる」(販売助成チームの浅川亮主事)。
メカシャッターは「先日発売された『P900iV』にも搭載しているが、パナソニック モバイルのPDC端末では初」(浅川氏)だという。
「P505iS」(2003年12月の記事参照)と同等のボディサイズの中に、高画素化したメカシャッター付きのカメラと本格ストロボを実装するのは苦労が多かった。
「今回は、絞りとメカシャッターの2つの駆動部があることと、ストロボのコンデンサが場所を取ることから、P505iSと同じ大きさに収めるのは難しかった」(佐伯氏)。レンズのサイズや高さ方向をどうやって抑え込むかは、かなりの時間をかけて検討したという。
パーツのサイズだけではなく、基板のレイアウトもP505iSとはかなり異なるものになった。「バッテリー部分を見てもらうと分かりやすい。バッテリーを小さくして、小さくなった分の場所まで基板が来ている」(佐伯氏)。
P506iCは、カメラやストロボだけではなく、FeliCaも搭載されるなど(6月17日の記事参照)、これまでの端末に比べてさらに機能が増えている。耐衝撃性を確保するためのアプローチは「ガチガチに詰めると落下の衝撃がそのまま伝わってしまう。中をある程度フリーにすることで落下に強くするという手もある」(佐伯氏)というものだ。
P505iS(2003年11月の記事参照)とP506iCのカメラ機能を比べると、次のような違いがある。
端末名 | P506iC | P505iS |
---|---|---|
画素数 | 195万画素CCD | 128万画素CCD |
撮影補助用ライト | キセノンフラッシュ | LED |
付加機能 | メカシャッター | オートフォーカス |
なぜ新モデルでオートフォーカス機構の搭載を見送ったのかは気になるところだ。
これは商品のコンセプトが異なるからだと浅川氏。P505iSは、どちらかといえば男性を意識して作った商品で、一方のP506iCは女性も含め、より幅広い層に受け入れられることをコンセプトにしている。P506iCで想定するユーザーは、かばんからさっと取り出して撮るようなシーンが多いと考え、パンフォーカスのカメラを搭載したと話す。「一概にオートフォーカスが携帯電話向きとは思っていない」(浅川氏)。
携帯電話で撮影する被写体は、バーコードから普通の風景まで(距離が)幅広い。被写体までの距離を頻繁に切り替えるような使い方では、オートフォーカス付きで自動的に焦点を合わせられるほうが便利だ。ただし焦点が合うまでには若干時間がかかり、異なる場所に焦点が合っていたらピンボケした写真が撮れてしまう。
一方のパンフォーカスは、1メートルから無限大までの写真を撮ることが多い場合に向いている。「近い場所を撮るときだけツマミを切り替えればいい。気軽に静止画を撮る場合にはこのほうが便利なユーザーもいる」(浅川氏)。
P506iCは、レンズ付きフィルムのような気軽な撮影を意識したカメラ機能を取り入れたということになるだろう。
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