来年には、モバイル向け地上デジタルテレビ放送(1セグ放送)も始まろうというこの時期に(3月24日の記事参照)、いまさらアナログテレビチューナーはないだろうと勝手に思っていた。しかしシャープ製の「V402SH」を見て、“テレビ付き”に対する見方がちょっと変わった。
アナログテレビ内蔵携帯は、NEC製の「V601N」、東芝製の「V401T」に続き3機種目。ではどこが変わったのか。
最初に感動したのは、予想外にテレビの画質がキレイになったことだ。3機種ともチューナーチップ自体は同じものを使っているため、違いは電波の受信感度にありそうだ。
実はV402SHのヒンジ部にあるホイップアンテナは、テレビ/FMラジオ専用のもの。「いわゆる携帯のアンテナとは違う。通話には使っていない」とシャープ商品企画部の馬場木綿子氏は話す。通話用のアンテナは別途内蔵されている。
V601NやV401Tのアンテナは、テレビ用(UHF)と通話用兼用で、VHFとFM放送についてはアンテナ内蔵イヤホンマイクがメイン。V402SHでも、もちろんアンテナ内蔵イヤホンマイクが付属するが、なしでもホイップアンテナを伸ばせばかなり感度がいい。
「“テレビだ!”という人は、ポータブルテレビを買えばいい。携帯なので気負いせずにテレビを見てほしい」と馬場氏は言うが、わざわざ専用アンテナを付けてしまったあたり、“本気度”も分かるというものだ。
テレビの受信感度は、場所によって大きく変化するが、赤坂にある編集部で試した限りでは、3機種の中でもV402SHの感度と使い勝手はピカイチだった。
もう1つのポイントは、回転2軸ヒンジ導入による視聴スタイルの変化。液晶を回転させて前面に向けて再び折りたためば、横向きの大画面でテレビを閲覧できる。
当然、折りたたんだ状態でも側面のボタンでチャンネルを変えたりボリュームを調整したりできる。閉じたままラジオを聞くことも可能だ。
さらにヒンジ部に設けられたスピーカーはアイデアもの。「絵と音が両方同じ方向を向く。裏面、表面、スピーカーの位置はどこがいいのか」という疑問に対する答えがこれだったと、デザインを担当した小山啓一主任デザイナーは話す。折りたたんでも閉じてもスピーカーは外を向いており、音をダイレクトに聞かせてくれる。口径自体はそれほど大きなものではないが、音質はなかなかだ。
ステレオスピーカーではないし、イヤホンマイクで聞いてもテレビやラジオから流れるのはモノラルだが、これはチューナーの仕様によるものだという。この点は残念だ。
実際のところ、V402SHはボーダフォン端末の中でもエントリーモデルに位置する。価格は約2万円とまだ高いが(7月29日の記事参照)、パケット通信に対応しておらず、アプリも50Kバイトと、ハイエンド端末からは一歩劣る。
コンセプトとしては、自然にテレビを見てもらうことを目指しており、いわゆるハイエンド端末のユーザーをターゲットにしているわけではない。しかし、唯一、用意してほしい機能があった。ミュージックプレーヤー機能だ。
テレビやFMラジオを本格的に使おうと思うと、感度というよりも音漏れを防ぐ意味でイヤホンマイクの利用が必須になる。ところが、地下街や地下鉄の中ではテレビやFMラジオが聴ける場所はほとんどない。せっかくのイヤホンマイクが無駄になるのだ。
どうせイヤホンマイクを持って歩くのなら、テレビやラジオが入らない場所では音楽を聴いていたい。それがテレビ付き携帯やラジオ付き携帯を持ち歩いてみた筆者の感想だったのだが、現在のところ両方を兼ね備える端末は出ていない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.