携帯“デザイン”の役割(2/2 ページ)

» 2004年08月18日 22時37分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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ピンクは「おじさん的思いこみ」

 「この携帯電話のターゲットは?」と質問したときに、よく返ってくるのが、「20台女性です」といった年齢と性別でカテゴライズしたマーケティング的回答だ。井戸氏はこれを“おじさん的思いこみ”と切り捨てる。

 「ピンクを塗っておけば、女性に売れると思っている人が多い」

 そもそも同社が携帯電話に参入したころは、いわゆる女性向け端末ブームの真っ最中だった。ピンク色でファンシー、きゃしゃなイメージ……。大人っぽさのあるデザインは敬遠され、右も左も可愛らしい端末であふれていた。このとき「日本の携帯のデザインを変えたい」、という思いが井戸氏の出発点だったという。

 A5406CAではターゲット層をどのように分類したのか。第四デザイン室の奈良勝弘氏は「ファッションレーベルのような考え方で、嗜好を洗い出した」と話す。候補として挙がったのは、以下の7つだ。
  • ネオトラッドコレクション(ノーチラスホワイトに)……ジャケットスタイルではあるが、オフホワイトのシャツに黒いジャケット、赤いネクタイをチョイスする、今時のトラッド
  • テーラードコレクション(テイラードブラックに)……黒い革製品。もう少し定番のトラディショナル
  • スイートシックコレクション(クラウディパープルに)……ネオトラッドの女性に寄ったもの。カジュアルなんだけどストリートではない
  • オリエント……「作ってみたかったけど、まだ早いかな」
  • オーガニック
  • トランス
  • ミッドセンチュリー

携帯のデザインは“ヒトあってこそ”

 井戸氏は、「携帯のデザインが目的になってはいけない。作品作りではない」と話す。“デザインに凝りました”という携帯の中には、単体で見た時にはかっこよくても、それを人が持っている姿は“あれ?”というものが少なくない。

 人が持って使うシーンの中で最も美しくなるデザイン──というのが同社デザインのコンセプトだ。「人が持って使う、たたずまいを重要にしたい」(奈良氏)

 これを明確に表すのが、デザインセンターに張ってあるという下の図だろう。

「2カ月ではなく2年間」「5メートルではなく50センチ」

 「つきあっていくうちに味が出る」(井戸氏)。これがこれまでのカシオ製端末に共通するコンセプトだ。2カ月で飽きられるデザインではなく2年間使い続けられるもの。そのために、新端末の投入時期によってデザインの基本方針も決まるという。

 同社製端末は、ほぼ半年に1回投入されるが、デザイン面での大きなモデルチェンジは1年おきだ。こうして端末を買ったユーザーに、すぐ飽きがこないよう工夫している。

 端末のデザインを評価するときの距離も重要な点だ。販売店の店頭でずらっと並ぶ各社の携帯。どうしても、そこで目に付くことが販売サイドからは求められるが、同社のデザインはそれを重視していない。ユーザーが毎日使っていく中で、愛着のわくデザインにできるか。その距離感を大事にする。

 「5メートルではなく、50センチで納得いく質感に」(井戸氏)。


 携帯電話のデザインは、今や性能よりも重要なポイントかもしれない。「基本スペックはガイドラインがあるので差がつかない」と井戸氏は話す。あとは価格と大きさだが、現在最も重要なのはデザインだ。「デザインの比率は非常に高い」。

 これまで端末メーカーのデザインについて各社から話を聞く中で、「ターゲットはマスではない。欲しい人に評価してもらえればいい」と言い切ったのは、カシオとソニー・エリクソンだ。マスを狙わざるを得ない端末メーカーがあるのは確かだが、デザインが端末評価の中で重要さを増していく中で、“マスは狙わない”と言い切れることは強みになっていくのではないか。

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