PDA市場の衰退が言われて久しい。小型化するノートPCと、高機能化する携帯電話に挟まれて、どうすればPDAは存在感を示せるのか。
8月31日に開催された「PDA・モバイルソリューションフェア2004」のセミナーでは、マイクロソフト、富士通、NTTドコモ、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、クレオなどPDA/携帯のソリューションのメジャープレイヤーが顔をそろえ、PDA/携帯の今後を“本音で”議論した。
PDA/携帯の将来性について、辛口で懸念を示したのはKCCSのIPサービス本部長 黒瀬善仁氏だ。ビジネスツールとして各モバイル機器を見た場合、黒瀬氏は、本来の役割よりも、「インターネットでのコミュニケーションツールとしての役割」が重要になってきていると説く。
例えば現在のPDAでは、PIM機能はメインではなくなっている。その主目的はインターネットへのアクセスだ。携帯の通話、PDAのPIM機能、PCの文書作成といった、それぞれが違った役割を持っていた時代は過ぎ去り、インターネットデバイスとしてどれが優れているかを争う時代になりつつある。
ところがPDA、携帯ともインターネットデバイスとしては中途半端だ。「PDAの問題は通信および入出力。通信機能が付いていないPDAがごまんとある。コミュニケーションの基本が未成熟だ」(黒瀬氏)。
その結果、「PDA好きが作って、PDAを愛する人が使うマニアックな世界になっている。ネイティブなインターネットデバイスにならないと(PDAは)消滅してしまう」。そう黒瀬氏は警鐘を鳴らす。
インターネットデバイスとして見た場合、携帯電話もあまり状況は良くない。「入出力機能はPDAよりもさらにプア。定型入力はともかく、多くのビジネスマンには入力に無理がある。また携帯のインターネットは、インターネットのようでいてそうでない。iモードやEZwebでは、インターネットネイティブなサービスがない」(同)。
その結果、モバイルビジネス環境での勝者は今のところノートPCだ。「ビジネスマンは重さに耐えてノートPCを持ち歩く」(黒瀬氏)のが現状だ。
これに答え、ドコモの法人営業部プロダクトビジネスの杉山良仁氏は、進化の速さによって携帯は弱点を克服できると話す。「今の携帯の進化のスピードでいけば、希望する形になるのは時間の問題」(杉山氏)。
来春には、インターネットフルブラウザを搭載し、C++言語でアプリケーションが開発できる「ビジネスFOMA」を投入する予定だと杉山氏。投入サイクルの速さと進化のスピードによって、モバイルの最適なツールに近づくとした。
対して、PDAは旗色が悪い。富士通のGLOVIA事業本部CRMビジネス部プロダクト課長の嶋田英幸氏は、ノートPCと携帯に挟まれたPDAの位置の悪さを指摘する。「PDAはどっちつかず。中途半端な位置にある。高機能になってPCに代わるものになるか、シンプルになって高機能な携帯になるかだ」。
進化の速い携帯がPDAの領域を浸食しているのは事実だ。KCCSの黒瀬氏も「携帯のスマートフォン化は進んでいるPDAもうかうかしているとスマートフォンに飲み込まれる。猶予は1〜2年」と話す。
会場に集まった聴講者へ司会者が挙手を求めたところ、「PDAが高機能化する余地はまだある」とした人は10%程度。80%以上が「携帯に吸収される」と答えた。
PDAには生き残るすべはないのだろうか? 少なくとも、今のPDAは大きく姿を変える必要がありそうだ。
ドコモの杉山氏は、携帯とBluetoothなどで連携する端末を考えていると話す。「それはPCかもしれないしPDAかもしれない。ただし今のPDAとはちょっと違うだろう」。
マイクロソフトのWindows Mobileビジネス本部プロダクトマネージャの石川大路氏は、「携帯を機能拡張していっても、画面を大きくしてほしい、タッチパッドにしてほしい」というニーズは必ず出てくる。それは携帯電話なのか?」と、新しいPDAのあるべき姿の一例を挙げる。
PDAは大画面にタッチスクリーンという特徴を武器に、形を変えて生き残るかもしれない。ただし、そのときに“PDA”という名称であるかどうかは定かではない。
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