ドコモがauに勝てない理由(2/2 ページ)

» 2004年10月18日 19時08分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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携帯市場の飽和により、既存ユーザーの囲い込みが重要に

 もちろん、ドコモが解約率の問題を挙げるようになったのには背景がある。

 これまでのように急速に市場が拡大していた頃は、解約率はそれほど問題にならなかった。現契約者が少ない上、急ペースで新規契約者が増えていたからだ。

 しかし現在の携帯市場は「対前年の純増数の伸びは75%。市場の伸びは、年々飽和に近づいている」(中村氏)状況(9月16日の記事参照)。残された新規需要は数少なく、加入者はキャリア間の奪い合いによって生じるようになってきた。

 「大きいと思っているのは解約のところ。0.7〜0.8%くらいが事業者間を移動する人たち。本当はここの戦い」(中村氏)

 解約者をいかに減らすか。これが、iモードFeliCa導入の際に言われた「囲い込み」の意味でもある(8月26日の記事参照)

 実際、iモードFeliCaサービスは本格的に利用を始めたら解約が難しいサービスだ。電話としての携帯だけなら、電話番号やメールアドレスの変更だけで済む。しかし、iモードFeliCaサービスの1つ1つを移行しようと思ったら、大変な手間がかかる。

 これは解約率上昇の1つの理由でもある、「新規-解約」の問題の解決にもなるだろう。

 新規-解約とは、新しい端末に機種変更する際に通常の手続きを取らず、新規に電話番号ごと契約して端末を購入し、即座に解約。番号の入っていない“白ロム”端末とし、以前の電話番号を移し替える手法を差す。新規契約時は手厚いインセンティブが載せられているため(2003年2月5日の記事参照)、通常の機種変更よりも安価に最新端末に変更できることから、一種の抜け道的に利用されるケースも多い。インセンティブモデルの歪みを突く手法であり、約款上も禁止は難しいが、解約の一部を確実に占めていると推定されている。

 解約率の減少、そして囲い込みに注力するのは、2006年に控えた番号ポータビリティ(MNP)を見据えてでもある(3月30日の記事参照)ソフトバンクイーアクセスなど、携帯事業に新規参入を目指す事業者が出てくる一方で、電話番号を変えずにキャリアを移れる番号ポータビリティの導入が迫っている。現状のまま2006年を迎えれば、これまで以上に解約率が上昇するのは必至だ。

 このところ、各社が法人向けサービスに力を入れているのも、囲い込み目的ともといえるだろう。気まぐれな個人ユーザーと違い、業務システム込みで携帯を契約する法人ユーザーの解約率は非常に低いことが想像されるからだ。

 携帯市場の成熟に従い、新規ユーザーの増加のみを追求する戦略からの転換が重要になってきたのは間違いない。

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