しかし、キャリアが3Gへのシフトを推し進めることが、テレビ内蔵にとっても追い風となる。映像コンテンツなどを用意して、3Gサービスの利用促進を図る携帯キャリアだが、なかなかユーザーには訴求しきれていない。「今のところ、『FOMAでこんな動画が見られますよ』とやっても見てもらえない。紙のパンフレットを配って、メニューからクリックしてもらえなければ見られないからだ」(佐野氏)。
そこにテレビが果たせる役割がある。「テレビをつけてみませんか? テレビからコンテンツに誘導します」。
テレビと携帯通信をうまく連携させるため、民放各社とNHKは1セグ放送の「携帯プロファイル」を策定した。大きな特徴は3つある。
1つは、画面上部にテレビ放送を流し、下部にデータ放送(BML)を流すこと。データ放送では、アンケートなど視聴者参加型のコンテンツが提供できる。
2つ目は、テレビがCMなどに切り替わった時に、データ放送も自動的にCMに合ったものに切り替わることだ。
3つ目は、CMの前に行ったアンケートの結果などが端末に記録されるということ。この仕組みをうまく使えばマイレージサービスも可能になる。「この番組を10分見たら1ポイント、30分見たら5ポイント。200ポイント貯まったらハワイ旅行への抽選権を獲得……といったことができる」(佐野氏)。
こうした仕組みは、“1セグならでは”の広告作りにも役立つ。例えば、ファーストフードのCMの最中、データ通信でもCMを流し、クリックすると通信を行って携帯向けクーポン券を発行する。屋内のテレビとは違い、目の前にそのファーストフード店があるかもしれない。携帯内蔵テレビは屋外で見るため、「購買直前の背中の一押し効果がある」(佐野氏)のだ。
テレビ局にとっては、「単に外でテレビに触れてもらう機会が増えるだけじゃない」(佐野氏)メリットがここにある。
テレビと携帯の融合に期待する佐野氏だが、もちろん課題もある。最も配慮しなくてはいけないのは、「テレビとネットの混在表示」だ。
テレビ局は、災害時などに基幹放送として緊急放送を流す。このときのコンテンツの正確性は、放送事業者の根幹に関わる重要なものだ。ところが、データ放送からクリックして表示されるサイトが一般サイトだったらどうなるか。いたずらに混乱を煽る掲示板サイトなどが、テレビ放送と同画面に表示されることもあり得る。
「災害放送と、無責任なネット画面を混在させるのはマズイのではないか」(佐野氏)
具体的にどのような対策を取るかは、明らかにしなかったが、どのレベルまでネット画面の混在表示を許すかは、今後の課題になる。
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