3G通信カードをマルチロケーションでチェック(3/3 ページ)

» 2004年12月07日 07時12分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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時間帯による通信速度の違いをチェック

 次に時間帯による変化、正確には音声端末を中心にしたトラフィックの影響を確認してみた。相当数の音声端末のトラフィックが見込まれる夜間の新宿南口、さらに相対的な比較対象として神奈川県川崎駅近辺では日中と夜間に計測を行った。

 新宿南口での計測は夜9時前後。交差点の角にあるファーストフードの3階で計測を行ったのだが、交差点を見下ろして目視できる範囲を数えるだけでも、10人以上が音声通話を行っている状況だ。1基地局あたりの収容者は相当な数になるだろう。

1回目2回目3回目平均
受信FOMA53.11Kbps56.42Kbps55.24Kbps54.92Kbps
WIN358.40Kbps553.60Kbps626.50Kbps512.83Kbps
V3G372.80Kbps331.70Kbps375.50Kbps360.00Kbps
送信FOMA29.78Kbps30.42Kbps28.71Kbps29.64Kbps
WIN117.40Kbps120.80Kbps127.20Kbps121.80Kbps
V3G61.30Kbps61.07Kbps71.43Kbps64.60Kbps
夜9時:新宿区西新宿1-18-3(ファーストキッチン 新宿南口店)
1回目2回目3回目平均
受信FOMA217.40Kbps237.70Kbps223.90Kbps226.33Kbps
WIN504.40Kbps447.30Kbps305.80Kbps419.17Kbps
V3G380.60Kbps373.50Kbps374.70Kbps376.27Kbps
送信FOMA56.27Kbps53.68Kbps53.56Kbps54.50Kbps
WIN76.25Kbps126.00Kbps115.40Kbps105.88Kbps
V3G61.30Kbps60.84Kbps61.54Kbps61.23Kbps
日中2時:神奈川県川崎市川崎区駅前本町5(ミスタードーナツ 川崎駅前ショップ)
1回目2回目3回目平均
受信FOMA193.10Kbps225.30Kbps207.90Kbps208.77Kbps
WIN351.90Kbps237.90Kbps279.10Kbps289.63Kbps
V3G356.00Kbps358.20Kbps358.50Kbps357.57Kbps
送信FOMA54.55Kbps52.47Kbps55.63Kbps54.22Kbps
WIN94.95Kbps127.30Kbps67.90Kbps96.72Kbps
V3G61.30Kbps61.54Kbps61.30Kbps61.38Kbps
夜9時:神奈川県川崎市川崎区駅前本町5(ミスタードーナツ 川崎駅前ショップ)

 受信ではauが500Kbps台、Vodafone 3Gが理論限界値に近いのに対し、FOMAが受信で50Kbps台まで落ち込んだ。FOMAも音声端末で確認する限り電波状態は良好なので、既に700万契約を超えた(11月8日の記事参照)端末のトラフィックの影響を大きく受け、送受信速度が大幅に低下していると考えられる。

 3Gという視点だけで見た契約者数はauの方が多いが、WINは音声とデータ通信の帯域が独立している上、帯域を共有する契約者数──WINユーザーはまだ200万に届かない(9月末で119万契約)。WINの方がまだ、基地局当たりのデータ通信のトラフィックに余裕があるということだろう。Vodafone 3Gはまだまだ3Gの契約者数が少ないことが好結果につながっている。

 川崎駅近辺では日中が午後2時、夜間が9時前後の計測になった。送信にはさほど変化は見られないが、受信はすべてで顕著な低下傾向が見られる。平均ではなくすべての計測値で見ても、夜間が日中を上回っているのは、日中のFOMAの1回目に対する夜間のFOMAの2回目だけだ。計測場所がほぼ同じということまで考慮すれば、この変化がトラフィックの影響であることは明らかだ。

異なる傾向を見せる3キャリアの3G通信カード

 今回は複数の場所、時間帯で通信速度の計測を行った。もちろんこれだけで3キャリアの傾向を完全に見定めるというわけにはいかない。ただし検証結果から、カタログスペックからは見えてこない、それぞれの実情がある程度判断できるだろう。

 まずFOMAに関しては、契約数も700万を超え、音声端末での定額データ通信サービス「パケ・ホーダイ」が既に開始されており(3月24日の記事参照)、そのトラフィックがデータ通信にも確実に影響を及ぼし始めている。通信速度という面では全体で最も振るわなかったが、利用可能なエリアという意味では、今回の検証で最も安心感をおぼえた。

 WINは高速化では先行しており、900Kbpsを超える受信スループットの記録をはじめ、送信速度でも確実にアドバンテージを発揮した。その反面で、利用可能エリアという点では一抹の不安を感じる。基本的にはcdmaOne/CDMA 1Xのネットワークもシームレスに利用可能で(2003年10月22日の記事参照)、さらに800MHz帯を利用していることから、2GHz帯のFOMAやVodafone 3Gよりも利用可能エリアの面では有利なはずだが、今回の検証ではそうはならなかった。筆者は稀にこの不安感を音声端末でも感じる時がある。アンテナバーが3本からピクリとも動かない場所で、なぜかEメールやEZWebが使えない(接続できない)場合が発生することがあるからだ。

 今回の検証で、WINは茅ヶ崎市中海岸では接続すらできなかった。しかし、この場所でauの音声端末が圏外だったわけではなく、音声通話は可能で、Eメールの送受信も可能であった。音声端末と通信カードの送受信性能の違いかもしれないが、WINに関してはCDMA 1X/cdmaoneとのシームレス・ネットワークにより、3Gでは最も利用可能エリアが広いという期待が強かっただけに、検証結果との間にギャップを感じた。

 Vodafone 3Gは時間帯を問わず高いスループットを発揮したが、これは現状の3Gの契約者数を考慮すればある意味当然なことである。音声端末の3Gへの移行は2005年から本格化すると思われるが、しばらくの間はトラフィックに十分な余裕があり、高いスループットを得られる可能性が高いと思われる。無論ピーク通信速度はWINのほうが高いわけだが、速度を求める場合の選択肢としては少なくともFOMAより優位にあるといえる。

 一方、利用可能エリアという点で、Vodafone 3Gでは都市部でも若干の不満を感じる。あくまで筆者の行動圏内だが、東京都大田区の大森駅アーケード内では、アーケード側に面した席でも圏外になることがあるなど、首を捻りたくなることもある。まだまだエリア拡大の過渡期なので改善にそれほど時間はかからないと思うが、利用可能エリアという点に関しては、同じ2GHz帯のW-CDMAでも、先行したFOMAにまだ及ばない面が存在する。

 今回の検証だけで、ベストチョイスを導き出すのは正直難しい。料金面の問題も大きいし、例えば都市部で受信速度が200Kbps前後のFOMA、300Kbpsを超えることの多いVodafone 3G、ピークでは900Kbpsにも及ぶWINをそれぞれ利用した時に、Webアクセスなどで体感速度がハッキリと変わるかといわれるとそれほどでもない。200Kbpsも出ていればWebは十分ブロードバンド感覚で利用できるし、パケット課金では実通信速度の速さが料金面の優位性につながるわけでもないからだ。

 特に料金面は個人ユーザーには非常に重要だと思われるので、前回の料金面の検証と共に今回の検証結果を3Gデータ通信カードの選択の参考として役立てていただきたい。

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